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死の秘宝

「ワタクシがマンダリン、よろしくお願いしますわ」


(やっべぇよ、想定してなかったぁー!女主人の商家だったかぁー、となると鉱石の蒐集家としてのここまでの見せつけも相まってヤマトが説得なんて無理だ)


アキトは顔には出さないが交渉の舞台は既に相手の(てのひら)の上だと判断する。ヤマトは生唾飲み込み緊張が顔に表れてしまう。


「あの、えーっと…た、単刀直入に話をしたいと思います。砂漠の秘宝を中央の研究の為にお譲り頂きたい!」


「ほう、砂漠の秘宝『スナタイト』が欲しいと?中央の命令とは言ってもハイそうですかと受け入れる訳には…」


そうなるよなとヤマトは顔を強張らせる。


「も、もちろんご用意出来る範囲で金銭はお支払い致します」


「金額ではないのですよ。知っているでしょう?ワタクシ蒐集家でしてよ?」


正面から突っぱねられてヤマトはガックリと肩を落とす。これじゃあ話にならないとアキトがフォローを入れる。


「物々交換とはいかないか?中央が用意出来るもので…いや、俺達が取ってこれる範囲の物でもいい」


アキトは銀の冒険者証を見せる。ヤマトはハッとしてアキトを見る。


「アキトさん?!」


「そこまでして欲しいと?冒険者なのに…護衛なのに主のフォローをそのような形で…貴重な鉱石や宝石なら幾つも手に入れてきたわ。…残るは…そうね」


マンダリン婦人は微笑み一つの条件を提示する。


「中央の研究で使われたという死の秘宝…『ゼンゼマイト』を…」


「そ、それは…!」


ヤマトが過剰に反応してアキトとニーナは何か問題があるのかと首を(かし)げる。


「ヤマト、どうしたんだ…?」


「ゼンゼマイトは…ハイトマンと呼ばれる研究員が持ち出して…その後、彼は反逆者として捕まり処刑されている」


「つまり行方不明ってことか…」


マンダリン婦人は残念と首を横に振る。


「それがあれば砂漠の秘宝と交換してもいいと思っていましたが…」


「死の秘宝、今は採掘出来ないのか…?」


アキトの言葉にヤマトは言葉を濁しマンダリン婦人はケラケラと笑う。


「モンスターにより鉱山はどこもかしこも乗っ取られて下手に採掘できないのですよ」


ニーナがまた首を傾げる。


「倒せばいいんじゃない?」


「採掘するのにどれだけ苦労するか…おわかりかしら?」


「モンスターが邪魔なんでしょ?」


ニーナが簡単に言うのでヤマトもマンダリンもポカンとする。ニーナ的にはアキトと共に水の国で採掘した事を元に簡単だと考えていた。

アキトは一応ツッコミを入れておく。


「ニーナ、水の国のアレはたまたま鉱脈が見つかっただけでなければ苦労するぞ?」


「鉱脈…そっか」


二人の会話にマンダリンはまだ呆気に取られていた。


「モンスターは物の数ではない…と?」


「程度にもよるがドラゴンが徘徊してるとかじゃなきゃ…小銭にもなるしな」


流石は銀の証を持つ者と期待の眼差しを受ける。ヤマトは二人の言う仕事の程度が相当なもの何だと察して本当に行けるのかと小声で話す。


「採掘するのは大変だろうがモンスターを倒すくらいなら余裕だ」


「余裕って…」


困惑するヤマト、実力は認めているが二人だけでそんな事が出来るのかと我が耳を疑う。マンダリンも信用していないようでアキトの実力を確かめようとする。


「ワタクシの護衛のものと決闘して頂きたい。それで実力を測らせてもらいますわ」


「それで気が済むなら…」


アキトはやれやれと目を伏せる。マンダリンも目を伏せ呟く。


「では早速…」


一瞬の殺気に反応してアキトは木刀を素早く振るい天井からの刺客を返り討ちにする。

床に倒され首筋に木刀を当てられて身動きが取れない刺客にアキトはニコッと笑う。


「殺気が漏れてる、落第点だな。俺が木刀で良かったな」


「流石ですわ、思っていた以上の実力…ですが」


マンダリンが向けた目線の先、ニーナの方は首筋にナイフを当てられて捕まっていた。


「あわわ、捕まっちゃった」


「油断するからだぞ」


「街で魔法を使うのは御法度って…」


アキトが日頃からいう暴力行為はダメという言葉を忠実に守ったからとニーナは悔しそうに呟く。

アキトはニーナの首筋にナイフを当てている護衛を指差す。


「おいアンタ、一つだけ教えてやる…」


「な、なんだ?」


アキトは目にも止まらぬ早さで木刀を振る。


「ソイツに人質の価値はねぇ!」 


護衛だけを的確に打ち抜き気絶させる。結構酷いことを言ったアキトだった。

ニーナは憤慨してアキトを指差し怒る。


「価値無いってどういう意味よー!」


「死なない奴を人質にしてもなぁ?盾にしかならないってのに…」


「ひっどーい!」


口論にポカンとするヤマトとマンダリン。護衛は打ち負かされ変な口論までされてマンダリンは笑うしか無かった。


「認めるしかないわね…ゼンゼマイト…掘ってきていただきましょうか」


「どこで()れるんだ?」


アキトは話を早く先へ進めようとする。


「この闇の国のこのレモの街からほど近い場所…」


「お膝元か…なぜ採れなかった?」


「行けば分かりますわ。指示書も書きますわ」


厄介な状況になっているとアキトは察して軽い溜め息をつく。しかし請け負った以上はやらねばならないと覚悟を決めすぐにでも出発する事とするのであった。


ーーーーー


街から出て暫くした所にある小高い山の(ふもと)に鉱山への入り口が開かれていた。

かつては採掘をしていたであろう古びたトロッコレールと朽ちたトロッコが過去の活気を想起させる。


「目的地はここのようだが…」


アキトとニーナの二人で地図を頼りに辿り着いたこの依頼の場にアキトは面倒臭そうな顔をする。


「何が待っているやら…」


「死の秘宝だってね?怖いお化けが出るのかも」


「やめてくれ、幽霊退治は専門外だ」


アキトはろくでも無い話に辟易とする。ニーナは茶化すのが面白くなったのか色々とテキトーな嘘をつく。


「手に取る人は死ぬから死の秘宝とか?」


「じゃあお前が拾えよ?死の概念が無いんだから」


「あっはっは、アキトは天才だね」


二人は鉱山の中に入り早速出てきたノームやゴブリンをぶっ倒していく。

敵の内容は大したこと無く地図と指示書通りに鉱山の中を進んでいく。


「しかし鉱石は深部でしか掘れない…っと」


「深いとこだと敵の数も増えるんだよね?」


「基本的にはそうだな」


基本的とアキトは答えてニーナは首を傾げる。


「基本的ぃ?」


「デカいのがいると逆に減る」


「へぇー!デッカイの、いるかなぁ?」


アキトは居ないで欲しいと願うばかりであった。


また暫く敵を倒しつつ地図を頼りに進む。


「ノームに穴掘られてるが地図通りならもう少ししたら採掘場だ」


「採掘場?」


「ああ、鉱脈があって周囲を掘って作られたスペースだ」


鉱脈があったならまだ入手出来るかもしれないと淡い期待をして向かう。

採掘場に入った二人の前におおよそ三メートルはありそうな巨大なカマキリ型のモンスターが複数現れて鎌を振りかざしてくる。


「でかーい」


「んな事言ってる場合か!来るぞ!」


ニーナは向かってくるギガマンティスに向けて炎の魔法を放ち、アキトはニーナの狙う別個体からの攻撃にカウンターを放って返り討ちにする。


「大したこと無いな!さっさと倒しちまおう」


「ほいほーい」


ニーナも炎で一匹焼き尽くし次の敵を狙う。採掘どころではないが暫く戦闘を行いギガマンティスの増援が止まる。

二人は手を止めてもう終わりかと息巻く。


「この程度ならそこらの冒険者でも倒せるだろう…?」


「うーん、よく分からないけど掘っちゃおう?」


「ああ、そうだな。鉱脈残ってるといいんだが…」


ニーナに急かされながらアキトはツルハシを手に採掘場を歩いて回るのだった。

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