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砂漠を越えたい

土の国、砂漠や荒野で構成された荒れ地の国、国民の殆どは遊牧民であり接触するのは難しいとヤマトは語り目標は寝ずの行進で数少ないオアシスの街を目指す事を語る。


「遊牧民か…ワイルドボアの大移動に関係してそうだが…」


「それです。問題は狙って接触できないこと…」


狙って荒野を放浪するなんて出来るはずもなく馬車も殆どは土の国の入り口で足止めを受ける。

取り敢えず入り口の街とも言えない拠点に到着した一行は馬車を降りてアキトとニーナは眼前に広がる荒野に目を見張る。


「街道らしい街道もない…なんつー国だ…」


アキトは遠くに目線を合わせて何も無いと呟き呆れ返る。

ニーナはお腹空いたといつものマイペースを発揮して取り敢えず全員で食事を取って作戦を練ろうとなるのだった。


冒険者酒場で肉料理を堪能する一行。


「ここでワイルドボアの情報を得られないのか?」


「ここも被害を受けた地な訳で…農地は無いですが…情報は得られませんでした」


「もう聞いてたのか、早いな」


ヤマトは骨付き肉の骨を指でペン回しするよう(もてあそ)び溜め息を付く。


「どうやら遊牧民の足取り調査もままならず…取り敢えずオアシスまでの足を探さないとですね」


「足…馬車は?」


ニーナは馬車と口にするが砂漠を越えるにはラクダのが必要らしくすぐには見つからないと悔しそうに答える。


「仕方ないな足止めの間はテキトウにモンスター狩りしてるわ」


「ヤマトも頑張ってね」


ニーナと二人で依頼をチラッと確認する。


「案外こういう所に答えがあったりしてな?」


「それはちょっと安直」


アキトの言葉にニーナは軽くツッコミを入れる。

依頼は近くのモンスター退治、ターゲットはサンドワームやデザートフライ、ワイルドボアであった。


「超大型の噂とかは…無いな」


「超大型?」


「ワイルドボアの群れが逃げ出さなきゃいけないくらいの危険な敵ってこと」


そんな物が出たら情報が出回るよと当然な反応をするニーナ。アキトもそうだよなと苦笑いしつつ旅費を稼ぐ為に一仕事行こうとなるのであった。


ーーーーー


荒野には虫型の敵が多くワイルドボアは大移動の影響か見掛けなかった。


「虫ばっかりだー」


「まぁ罪悪感は少なくて済むから楽な部類だ」


大暴れというほどではないがそれなりに狩りをして素材を持ち帰ることにする。

虫に対してニーナは嫌悪感が少なくてアキトは珍しいなと思っていた。


「虫に対してギャーギャー言わないのは…いや、俺が知ってる知人にそういうのが居てな?」


「へー、私は敵対してるし特に倒せばいいで気にしてないかな?仲間になったら…?仲間になるのかな?」


虫が仲間になるのかどうかと言われるとアキトも困り顔になる。確かに敵として黙々と戦うのならギャーギャー喚くのも変だなと一瞬思うが自分もと考え込んでしまう。


(いや、幽霊と戦う時にギャーギャー言ってるな俺…恥ずかしいのか…?ちゃんと(かえり)みないとダメだな)


「どしたの?」


「いや、何でもない。人の事言えないなと自分の中で反省をしていた」


反省と聞いてニーナはアキトが悪いことしたのかと軽くチョップして「よくないよ」と注意する。


「うん、他人の事を悪く言うのは良くないよな」


素材を剥ぎ取り終えてアキトは一息入れるのであった。


足の調達に苦労しているヤマト、戻って来たアキト達に今日はもう移動できそうにないと謝ってくる。


「環境が悪いねえ…何とか道があれば歩いて…いや砂漠は無理があるか」


水の調達の問題もあって相当厳しい環境なんだとアキトは考える。

ヤマトは国の都合であって仕方ないと中央も口出し出来ない難攻不落っぷりを語る。


「なるほど自然の要塞という訳か…確かに荒野も砂漠も下手に手出しできないな」


「また明日交渉してみます。すみません」


「別に報酬釣り上げても構わないぞ。俺達はそこそこ余裕があるからさ」


ラクダの貸出の価格に対してアキトはそういうとヤマトは申し訳ないと小さく頷く。

ニーナはラクダとは何なのかと興味津々だが今日はもう店仕舞いで見れないと言われてガッカリするのであった。


古めかしいレンガ造りの宿に一泊する一行は荒野の夜の寒さに軽く震える。

昼間との寒暖差に風邪を引きそうだとアキトは文句を言う。黒コート着てるくせによく言うとニーナにツッコまれて苦笑いしてしまうのであった。


明くる日、朝から早速ラクダの交渉を行うヤマト、今回はアキトとニーナも参加して値段交渉といく。


案内費や護衛代など色々と吹っ掛けてくるラクダの貸し出し人に護衛は自分達がやるとアキトは銀の冒険者証を見せ渋々納得させる。

案内費や貸出の価格は常識的な範囲でヤマトが交渉しそれでも渋る御者にアキトがチップをはずむと微笑みかける。


「チップ…だと?」


「お小遣いさ、金貨でどうだ?」


アキトの言葉にヤマトは目を丸くしてそんなに?!と言いたげな視線を向けて来る。


「金貨…だと?」


「ああ、勿論嘘じゃない。ほら」


実際に金貨を見せつけると御者は少しうずうずした様子を見せて交渉しようとしてくる。


「ご、5枚だ!」


「ダメだね、3枚までだ」


「乗った、3枚だ!」


アキトは金貨3枚取り出し御者の手の上に乗せようとして一瞬だけ止める。


「男に二言はないな?」


「あ、当たり前だ!」


受け渡しを終えてヤマトは更に必要な分の金額を支払う。交渉成立、ようやくラクダを借りれるとヤマトはホッとしてラクダを撫でてたニーナはこの子がいいと撫でているラクダを選ぶ。


「あーあ、勝手に触って選んじゃって…」


アキトは苦笑いしつつ御者に言われたラクダに乗っかり移動を開始するのであった。


ーーーーー


荒野を行く一同は用意された日差しよけのマントと被り物を使い直射日光を回避していた。


「なんかカッコいいね」


ニーナの子供のような感想に全員が微妙な笑顔になる。

暑い日差しから身を守りつつラクダで荒野を抜け砂漠地帯へと足を踏み入れる。


「砂漠地帯は足が取られやすいです。休む時でもラクダからは降りないで下さいよ?」


御者の言葉に一同返事して砂漠を進む。日も傾き始めてニーナがお腹空いたと言うとアキトが懐から干し肉を取り出してニーナに投げ渡す。


「やった干し肉!」


「今はそれで我慢しろ、ノンストップだからな」


ヤマトも腹の虫を鳴らすのを見てアキトは軽く溜め息をつく。御者はまだ休むには危険だと話すとヤマトは自分は大丈夫だと少し強がって見せる。

アキトはそれならいいんだがと心配しつつもノシノシと先へ進む。

日が暮れて寒くなってきて少し平らなスペースを見つけた御者が休みにしましょうとなりアキトはサバイバル出来るように準備していた道具を展開する。

焚き火用の薪と古紙に火打ち石を使う。


「夜はやはり冷えますね…」


ヤマトが御者と雑談している横で食事の用意をアキトは行う。ニーナは周囲を見渡して何も無い砂の世界を目に焼き付けていた。


「飯が炊けた、コーンミールだが食べるか?」


「も、もちろん!」


ヤマトも御者も空腹を訴えてアキトの炊いたコーンミールを食しアキトはニーナを呼ぶ。

ニーナはちょっと駆け足に戻ってきて更に乗せられた謎の物体に小首を(かし)げる。


「コーンミールだ。味気ないが腹には溜まる」


本来は栄養補給の必要のないニーナだがコレも食べ物なのかと興味を示してパクパクと食べ始めて味気ないとアキトの言う通りの言葉を口にする。


「干し肉あるから食え」


ヤマトと御者にも割いて分けた肉を渡す。ヤマトは申し訳なさそうにアキトを褒める。


「準備がいいですね…私なんて何も…」


「旅するから癖ってやつだ」


アキト達は笑って食事を楽しむのであった。

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