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それだけは!

城を出て冒険者組合酒場へ向かう事にした一行。

皇女を城に残す事にレックスは不安に思っていたがアキトは問題は無いと説明する。


「そもそも城内で暗殺するなら回りくどい手は使わない。サー、つまり騎士一人それも皇帝が気に掛ける程のを犠牲にしなくてはいけなかった計画だ。となると姫様の味方もそれなりに城の内側にいる。皇帝もあの様子なら味方だろう」


レックス達はホッとするがすぐにアキトの行った突飛な皇帝への依頼の要求を批判する。

自称救世主のアタオカムーブと言われて厄介事を請け負える立場かと散々だったが自分一人でやるさと笑って親指立てるアキトに呆れ返るのであった。


組合に到着してまだ城からの依頼は無くアキトは今日は休みと帰り支度を始めるが三人は仕事の相談をしていてアキトはちょっと耳を澄ませる。

アキトと違いそれなりの仕事を発注してもらっていてぐぬぬと嫉妬しつつそれでもそこらのモンスター討伐のものばかりで興味は惹かれず任せて大丈夫だろうと組合を出ようとする。

レックスの勲章がチラチラしててそれを見て端の方でニヤニヤしているガラの悪い男二人が目に入りアキトは小さく溜め息をついて出入り口の辺りで壁に寄りかかり暇そうに装い人間観察に(いそ)しむ。


(レックスはまぁ警戒心低いし後で注意するとして…あっちのならず者風の奴らは…タロスの部下じゃなさそうだな。お灸を据えるのは後にして…他は磨けば光りそうな冒険者はいるかなぁ…)


全身がっしりと鎧と兜で身を包んだ騎士風から身軽な装備の軽業師、採取専門そうな学者風のまでいて中々に粒揃いな帝都の組合酒場は今日も盛況だった。

レックス達は日帰りで済みそうな任務を手にアキトに軽いお辞儀してから組合を出て行く。

アキトが注視していたガラ悪の二人はゆっくり席を立ってアキトを邪魔そうに睨み舌打ちしながら組合を出て行こうとする。

口頭注意で済ませてやろうと思ったがイラッとしたので足を組み替える振りして足を引っ掛けてやることにする。

後方の筋肉質の男が引っ掛かり二人して転びアキトを睨みつける。


「おっと失礼」


「フザケてんのかテメェ!」


「謝っただろ?」


流石に態度が悪いと他の冒険者は喧嘩だと慣れた様子でサッと距離を空ける。

アキトは両手を軽く挙げて無抵抗アピールするが納得いかない二人は拳を振り上げる。

振り下ろされた拳を「おっと」とアキトは軽く身を引いて回避して壁をぶん殴って拳を痛める筋肉質な男。


「うわ、痛そう」


「舐めやがって!」


細身の男がナイフをチラつかせる。流石に流血沙汰はやめとけとアキトは止めるが頭に血が登っていて聞く耳を持たない。

そこへタロス部下達と共にが毛皮を幾つか抱えて現れて男二人を注意する。


「ペイジ、トッド、何してる」


タロスは有力な冒険者らしく名前を呼ばれた二人は大人しく引き下がりタロスを「兄貴」と呼ぶ。


「こ、コイツが俺等の邪魔を…」


「ん?アキト君じゃあないか。今日は香草取りじゃないのかい?」


タロスはクスッと笑って問題児を(なだ)めつつアキトを嘲笑する。アキトは素っ気ない態度で返す。


「昼から行くつもりはない。兎狩りと護衛から帰ってきてさっき報告終えたばかりだからな」


そんな任務あったかなと更に笑われるがどうでもいいアキトは先刻まで風呂に居たはずのタロスがなんで仕事終わりを装っているのが気になった。


(こいつやっぱり信用ならないな…)


何度目かの疑いの目を向けるが時間は稼げたし忠告を受けた男二人も今から略奪する気にはならないらしく大人しくタロスにゴマすりを始める。

どうやら二人もタロスの一味だが実力不足を理由に今回の依頼には同行を許してもらえなかったらしい。

チームでもそういう事があるんだなとアキトは関心を寄せながらこれ以上厄介事を起こす訳にはいかないと組合を後にするのであった。


ーーーーー


アキトが風見鶏亭で大の字になって寝ようとする。

レックス達には問題無いと語ったが皇女の件は悶々とする。


(城にアクセスは出来ないし勲章を持つのはレックス、となるといざという時に駆け付けるってのは無理だな…それに依頼もやはりレックス達あり気になるか…)


仕事を達成するのは一人でも構わないが受ける時、報告する時は必要かと(わずら)わしい手順だと思う。


(冒険は悪くないがこうも笑い者にされるのは気分よくねぇよなぁ。まぁ実力が数字通りひ弱になってないだけマシか…)


中途半端な呪いへの愚痴と動き難さと勝手の悪さ、ゲームなんかで俗に言う勇者と違い過ぎる救世主の扱いに辟易としてくるのであった。


ーーーーー


翌日、早めに組合へ顔を出してレックス達を待つことにしてミルク1杯で時間を潰していると三人揃って眠そうにしながら現れて合流する。


「どこの宿に泊まったか知らんが疲れてるな?仕事は俺に任せて休んでもいいんだぞ?」


休みを取ったアキトは元気有り余っていると早速受付嬢に確認を取る。


「城から直々に依頼来てないか?」


アキトに出せる任務は無いがレックス達にならとやっぱり除け者にされるが依頼書は届いたようで四人で確認する。

どうせ俺が行くんだからとアキトが読み上げる。


「なになにー?帝都領内の外れの呪われた館の調査と主犯の『リッチー』の退治…リッチー?リッチーだと?!」


敵はアンデッド、つまりゾンビやゴーストの類いだと理解しアキトの手が震える。

三人はアキトの青ざめた顔を不思議そうに見つめてシシーが早速茶化す。


「何よオッサン、その歳でオバケが怖いの?ウケるー」


「ば、バカ野郎!オバケは怖いぞ!まず物理攻撃が効かない!」


「はぁ?マジだったわ…」


アキトが幽霊を苦手とする理由、それは基本的な攻撃が通用せず撃破が難しいという素頓狂(すっとんきょう)というか頓痴気(とんちき)な理由で三人に笑われる。

倒せない事は恐ろしいぞと謎に力説するアキトだったがシシーは追撃する。


「で、一人で行くんだよね?」


「っ!?…あ、いや…これはちょっと…考えていいか?」


あのオッサンが怖じ気付いているとニヤニヤするシシーをレックスは注意する。


「誰にだって怖い物はあるよ、僕だって嫌いな物は嫌いだし…苦ーい野菜とか…」


野菜とオバケを一緒にするのはどうかとアリスにツッコまれ男二人は恥ずかしさで赤面する。

アキトは一緒に行ってくれるかどうか反応を窺い三人は報酬の良さを見てチャンスだと喜びアキトを盾にすればなんとかなるとして四人ならイケるとなる。

四人は早速出発し、帝都領内の街外れの人気(ひとけ)の無い不気味な館へ向かうのであった。


帝都内とは空気感も大幅に違い何故か霧も出ている人が踏み入っていい雰囲気じゃない館を前にアキト達四人は苦笑いする。

最初は小馬鹿にしていた女子二人も足が(すく)む。

固く閉ざされた門の先、広い無秩序な庭の向こうに薄っすら見える館の影、その絵面と空気感にレックスは想像してたものと違うと呟く。


「い、行くしかない…よね?」


「ゾンビも魔法生物なら怖くないさ…うん。幽霊は頼むぞ?マジで…気絶するかもしれねぇ」


「それ本当に倒せないのが怖いってのと違いません?!大丈夫なんですか!?」


レックスの心配の声に空笑いするアキトは木刀をガッチリ掴んで臨戦態勢でゆっくりと門に手を当てる。

閉ざされているはずの門がアキト達の訪問を歓迎するようにキィーっと(きし)む音を立てて開かれる。

思わず生唾を飲み込む四人は軽く身震いして自身を奮い立たせながら警戒しながら奥へ進む。

その背後でアキト達の後を付ける人影があったが四人は気付かなかった。

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