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バトルゲーム

生徒達の精霊を使う場としてグラウンドでのバトルゲー厶扱いにアキトが講師を行うよう指示されて聞いてないとアキトは憤慨する。


「まーた俺のいない所で俺を勝手に使う計画をお出ししやがって!」


ヨロズは悪びれもせずに答える。


「君程に精霊の扱いに()けている者は他に居ないだろう?」


褒めているつもりだろうが今のアキトにとっては煽りにしか聞こえなかった。


「あー、はいはい、そーですね。で?どんな事をやらせたいんだ?」


なんだかんだ言って半分受け入れ体制に入っているアキトにヨロズは感謝しつつ精霊を使った訓練に近い戦い方を教えて欲しいと伝える。


「あー、うんポケットなモンスターな話か?デジタル?あーいや、何でもない」


唐突なアキトの言葉にヨロズは多少首を捻りながら思い出したように手を叩く。アキトは何も言うなと言いたげに目線を向ける。


「兎に角どのような形でも生徒達のフラストレーションを解消するいい案を期待する」


「え!?全部俺任せかよ!」


草案だけで丸投げされたアキトは受けなきゃ良かったと後悔先に立たずなのであった。


ーーーーー


放課後、早速興味を抱いた生徒達がグラウンドへやってきてアキトに精霊の使い方を教わりにやってくる。


「というわけでね、はい。皆さんに教える事は単純。精霊を呼び出して精霊だけでバトル!という形です」


アキトのアバウトな説明にそんなの場所を縛る必要あるかと生徒達は疑問を口にする。


「馬鹿かおめーは!教室で大暴れ、廊下で大暴れしてぐっちゃぐちゃのドカーン!ってことしてーのか?そこまで丁寧な操作できねーだろ」


アキトが荒っぽく怒ると生徒達は「お、おう」と少し尻込みする。


「精霊は確か全員ミニオン…だったな?使い方を教えてやる」


生徒達はそこだよそこと知りたい情報を求める。


ミニオンについて、

基本的にミニオンとは群体で出現する小型の精霊であり多種多様な兵装を積むことが出来るが一つの種類しか出現させられない。群体型は全滅しても魔力を分け与えることで復活する特殊な精霊である。

奏者の魔力の総数に合わせてミニオンの出現数も決まる。

ミニオンの数を束ねる事でサイズや性能を向上させる事が可能。

ダンジョン限定であるがコアバーストで増長させた魔力で巨人サイズのミニオンを呼び出せる。


「とまぁ、今のところこんな感じだ。出現可能な武器や兵装は奏者の知識に依存する。…おい、まだ呼び出すなよ?いっぺんに召喚されたらグラウンドが埋まっちまう!」


生徒達もハッとして腕輪に当てていた手を引く。

取り敢えずとアキトは適当に生徒を選んで前に出させる。


「自己紹介はいらない、あっちとコッチでグラウンド挟んでバトルさせろ」


「えっと細かいルールは…?」


「奏者には攻撃禁止、奏者は攻撃や補助参加禁止。どちら一方が全滅するか降参するまで」


アキトのものすごくアバウトなルール説明になるほどと単純明快だと生徒達も納得し早速呼び出す。


片方は騎士型を六体、もう片方は侍型を八体。

アキトは魔力総量の事も考えてコスト性だの何だのと後からルール付け足せばいいやと成り行きを見守る。

チャンバラするように武器をぶつけ合う精霊達。守りの硬い騎士に対して鋭さで勝負する侍、序盤は騎士が硬さで有利を取っていたが数と技術が上回り侍が優勢になる。

最後の一体が残ったのは侍タイプを呼び出した生徒であった。精霊のコントロールに疲れたのか二人とも疲れた顔をしていた。


「まぁ初戦にしては見栄えのある戦いになったかな…あとはもう少しルールを切り詰めていけばいいな。お疲れ様だ」


アキトに激励された二人はグラウンドから出て次は自分の番だと皆が一斉に挙手しはじめる。アキトは生徒達を落ち着かせながら実力をパット見で分けて同じくらいの相手に当たるように「そことそこ」と指差し試合を組んでグラウンドを広々と使わせる。


(まぁこんなもんか…もっとちゃんとしたスペースがあれば良いんだがそんな所ないし仕方あるまい)


生徒達がワイワイと競い合うのを眺めてアキトは腕組し満足するように頷く。これで先生方の悩みのタネを少しは取っ払えたかなとアキトは学び舎の方を眺めるのだが窓から沢山の生徒達が興味津々な様子で眺めているのを見てまだまだ教育には時間が掛かるのだとひしひしと感じ取るのであった。


ーーーーー


精霊バトルゲームが大流行する裏で当然起こるのは違法闘技というもの。正確には違法ではないが賭博やグラウンド外でのバトルゲーム。

そんなもの起こり得るのを想定して取り締まりを最初からやるべきだとアキトは呆れ返るがそこもアキトがやるべき事だと傲慢な先生方であった。


「そんな校舎裏で賭けバトルだのなんだのやられても俺の知ったこっちゃない!最初に管理しろと言い出した奴らが裏の事は取り締まるべきだ。俺は俺の仕事をしたぞ!」


アキトは神威やヨロズ、学長のいる管理部で愚痴をめいいっぱい叫ぶ。

三人共アキトはたしかに仕事を果たしたと言うがこの事態は予測出来なかった等と言い出してアキトは頭を抱える。


「予測出来るだろ!ゲームだぞ!?表の場て出来ないルールも作られるだろうし賭博だって広まる!それが人の(ごう)ってもんだろ!?」


確かにそうだがと意気消沈している三人に対してアキトは続ける。


「問題は裏ルールで怪我人が出るかもしれないってこと!俺はそれ危惧して奏者への攻撃禁止って言ったんだが裏じゃどうなるか…!」


学長が険しい顔をする。


「それについては看過できないな…少なくとも学び舎内でそのような事が起きないように監視する必要がある…」


「外ならいいのかよ…兎に角路地裏でも裏バトルなんか流行りだしたら終わりだ…神威今すぐにでも…」


アキトの言葉に神威は頷いて任せておけと親指立てる。


「先生方にも配るんだな?!」


「…ちげーよ!助長させてどうする!武装を取り上げてダンジョンアタック時の支給品にするんだよ」


「あー、成る程?確かに今からで間に合うか分からないが…」


間に合わせるんだよとアキトは半ギレしながら生徒達からオモチャを取り上げる方法を考える。ヨロズが軽く手を挙げる。


「放課後グラウンドで正規に使うかダンジョンアタックの申請者のみに支給というのはどうだろうか?せっかく使い方を教えたのだからルールとマナーを守って楽しく…」


「全員が言う事を聞くとは思わないな…地球での前例がある。勝手に精霊を作り出して大暴れされたら…俺が…いや、俺達全員神楽に殺されるぞ!」


一時期地球で起きた精霊の乱用の事件を思い返してアキトは青ざめる。神威もそれは困ると生徒達の管理を更に厳格にせざる終えないと学長に訴える。


「生徒達の自主性を尊重した上で決めさせてもらいたい。今はまだ若さ故の過ちと言える時期であろう?」


すぐにそう言えなくなるとアキトは危惧するが取り締まりに関してしっかりやれば問題にはならないはずだとヨロズが不敵に笑い「任せておけ」とポケットから神威がかつて未来の技術を真似て作った『箱』と呼ばれる道具を見せる。


「コード一つで強制的に精霊を全て消しされる。そうだろう?」


神威もその手があったかとポンと手を打つが生徒達の自主性をと学長が言っていたのを思い出し苦い顔をする。


「それは使いたくなかった手段だが最終手段としては仕方あるまい」


(結局学び舎の中は保護されたが外は治外法権か、まだまだこの問題は尾を引きそうだな…)


話がまとまったのを見てアキトは問題が山積みであると頬を掻くのであった。

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