K班の実力
K班の面々はアキトに軽い挨拶を交わして自己紹介が始まる。
一人目、明るい髪色の女子が挙手する。
「ウチは赤松雛子、よろしゅう頼んます」
他に言う事あるだろと生徒達からやじが飛んで仕方なくヒナコは追加で情報を話す。
「趣味は舞いの練習、武器は鉄扇。これでエエですか?」
アキトは頷き前衛かと配置を考え始める。
「魔法は出来るか?」
「魔法?得意では無いです」
バリバリの肉弾戦に教育はヨロズに任せてもいいかと考える。
次に短髪の低身長の男子が挙手する。
「ワイは橋下賢太です。武器は拳、魔法は強化魔法くらいです」
「また肉弾戦か…ヨロズ博士が好みそうだな」
チラッとヨロズを見るとヒナコもケンタも鍛え甲斐があるとすこし喜んでいた。
三人目、金髪に染めた女子が訛りのない喋り方で挨拶してくる。
「アーシは華山真尋でーす。鎖鎌で戦いまーす。魔法もそれなりに?出来ます」
緩い雰囲気にアキトはガクッとなるがまた癖の強い武器だなと苦笑いする。マヒロはニコニコしながらピースとギャルアピールを欠かさない。
四人目、茶髪に甘いマスクの男子がキザっぽく自己紹介する。
「僕は木ノ下渉。武器は双剣、魔法もバッチリさ」
他とは違い優秀さをアピールする姿にアキトはすこし不安を覚えるがヨロズは鼻を鳴らす。
「その割にインナーマッスルが足りてないようだ。鍛えてやろう!」
「い、インナー…マッスル?」
ワタルは少し困惑した様子でぽかんとするが筋力不足やとケンタがゲラゲラ笑う。
五人目を放置して喧嘩に発展しそうになっていてアキトは癖の強い面々を纏めるのは疲れると愚痴りながら間を取り持つ。
「喧嘩は後、ちゃんと実力チェック後でするからその後!…さて、最後の一人。悪かったな。自己紹介頼む。」
五人目の女子は苦笑いしながら会釈する。
カスミよりも目立たない地味な見た目に掻き消えそうな空気感だが口を開くと田舎臭い訛りと喋り方にインパクトを覚える。
「わ、ワタスは田野中奈緒って言います。武器は杖で魔法が得意です」
「お、おう。急に普通な魔法使いで驚いた」
マッスル関係ないなとヨロズは腕組してウンウン頷く。
合計五人の挨拶も終わりこの後グラウンドで実力チェックとアキトはF班も呼んで合同練習しようとなるのであった。
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「F班…確かトーキョーで最強なんだよな?」
ケンタは喧嘩だ喧嘩と腕を鳴らすがそんな事はさせないとアキトは注意する。
「お前らの能力チェックが先!喧嘩はなしだ」
「ちぇ、先公ホンマに強いんか?」
喧嘩売られてるアキトだが冷静に取り敢えず全員揃うまで待てと血気盛んなケンタを落ち着かせる。
K班が全員揃いF班も合流する。揃うなりバチバチに睨み合いするがキャラの濃いK班にF班は微妙な表情になる。持っている武器も癖強でエツコは本当に大丈夫なのかとアキトを気遣ってくる。
「なんか…普通じゃなくて…大丈夫なんですか?」
「問題無い。今はまだ素人だからな」
素人ということで逆に不安になるF班の面々。
実力チェック前にヨロズはF班に挨拶する。
「君達がアキトの教え子か…ふむ、ふむふむ、いい鍛え具合、仕上がりだ」
男子がマジマジと見られて困惑する。
「な、何ですかこの人は」
「俺の知り合い。ヨロズ博士。筋肉フェチ…だったっけ?」
そこまでフェチではないとヨロズは否定するが筋肉には一家言あると胸を張る。
話が逸れそうになるのでアキトはさっさと実力を測ろうとK班に話を切り出す。
「よし、やるか」
アキトは軽く手足をほぐしてニコッと笑う。ケンタがワイからと前に出ようとする。
「あ?全員だよ。ほら、かかってこい」
木刀のアキトにK班五人はキョトンとする。F班は懐かしくてどっちが勝つか、どっちを応援するかと笑い合う。
ケンタは舐められてるとキレて全員が準備を整える前に一人飛び出してアキトに向けて拳を振りかぶる。
拳の溜めが長くアキトは前にサッと出て木刀でケンタを押し返す。
「チームワークだ、一人で突出して生きて帰れると思うなよ?」
「な、なんやぁ?ものごっつ速いやん…」
ケンタは首と肩を回して本気で行くと意気込み軽くステップを踏む。
「援護しろや、ワイが討つ!」
一人また突出するケンタにヒナコがキレる。
「ケンタぁ!突出はアカンて!」
注意を受けても止まらないケンタにアキトは溜め息をを付いて脚を一歩前に出し木刀を振って拳よりも先に首筋に軽い一撃を見舞い気絶させる。
「血の気の多いやつだ…ヨロズ博士、ケンタの教育お願いします」
「『教育』と言われると痛い目みせろと?」
「んな訳ないでしょう。普通の意味ですよ」
アキトは血の気の多いケンタはヨロズに任せて他の四人の実力を測る。
「もう一度言う。チームワークだ。生き残りたければ力を合わせろ」
「ちょ、ちょいまち!作戦タイム!」
「許可する」
ヒナコが挙手して仲間達と打ち合わせを始める。
癖の強い武器を使うマヒロとワタルの立ち位置が大事だとアキトは考えるが結構相談が難航しているのうだった。
「せやからウチが前で…」
「アーシも鎖鎌でブイブイ言わせたーい」
まだまだ未熟で立ち位置が思いつかない面々にアキトは声を掛ける。
「取り敢えずやってみろ。怪我しないようにな?」
「ああもう!知らんよ!?」
ヒナコか鉄扇を広げて構える。ワタルも双剣を抜いて前衛の構え、マヒロが間から鎖を投げてアキトを捕らえようとする。
錘を木刀で的確に弾いて鎖をワタル側に飛ばしワタルを封殺する。
「なにィ!」
「ウッソ!?まじぃ!」
付け焼き刃な戦術だったが代わりにヒナコがアキトとの接敵に成功する。
「もろた!」
「甘い!」
鉄扇をアキトに振り下ろすが木刀でがっちり受け止められて目を丸くする。
「んなアホな!?」
そのまま弾き飛ばされポカンとするヒナコ。
アキトは一人全然動いていないナオを呼ぶ。
「ナオ、魔法はどうした?」
ナオはおっかなびっくりした様子で言い訳する。
「あ、あの!ヒナコさんが近くて撃てなくて…」
「人のせいにすんなやぁ!撃てや!」
ヒナコは叫ぶがアキトはナオの判断を尊重する。
「慣れないコンビネーションプレイは求めてない。ヒナコ、ナオがどんな魔法を撃つか知ってるか?」
「そ、そないなこと…」
「お前が咄嗟に避けれないならナオは魔法を撃てない。ワタル、君が前に出ていても同じだったろう」
鎖鎌の鎖に邪魔されて前に出れなかったワタルは悔しそうに舌打ちする。
「取り敢えず一人一人の実力よりチームワーク、コンビネーションが大事。それをまずは知ってほしい」
戦場で簡単に死なれては困るとアキトは付け加えてこれからK班がやるべき事を伝える。
「まずは基礎体力だ」
「「はい?」」
困惑するK班、ヨロズはなるほどと頷く。
「走り込み、筋トレ、素振り!魔法なら魔法の的あて!」
基礎の基礎を共に学びそれぞれの特徴を覚えあえとアキトは語る。ヨロズは心得たとK班を集めてアキトの話した通りの事をトレーニングメニューにケンタを起こして早速トレーニングを開始するのであった。
アキトは連れてきたF班を見てK班はどうだったかと尋ねる。
男子達は恥ずかしそうに過去の自分達を見ているようだったと答えてエツコは呆れた様子で資質を疑う。
「大丈夫なのですか?跳ねっ返りの強いのも居ますが…」
「どうだろうな、焦りの裏返しであるならまだまだ伸び代はある。元からだと矯正が必要になるが…」
「あのヨロズという先生次第ですか…って一緒に走ってますね…先生みたい」
一緒にトレーニングしているヨロズを見て全員がアキトと重ねる。
「知り合いと言っていましたが奥さんではない?」
「ない!」
そこはキッパリと違うと伝えておくアキトであった。




