(4)挑む仲間
窮地を脱した瞬間、目の前に彼女の姿があった。淡い紫の瞳が揺れ、不安と決意が入り混じる。その視線が私を捉え、小さな声で話し出す。
「…七不思議に一人で挑むのは、危険すぎます…。みんな…知っていることだから…」
彼女の慎重さと優しさが言葉ににじみ出ていて、胸に響いた。模擬戦で一位を取ったことで天狗になっていた自分を思い返し、悔しさが込み上げる。孤独に挑もうとした結果、危うい状況を招いたのだ。だが、彼女がいなければここまでたどり着けなかった。その思いが胸を熱くし、自然と感謝の言葉が口をつく。
「助けてくれて、本当にありがとう。」
彼女は視線を逸らし、頬を赤らめながら小さく首を横に振る。「あ、いえ…たまたま見かけただけで…」
「でも、それでも助けてくれたんですよね?」
そう続けると、彼女は少し戸惑いながらも頷いた。「…そ、そうですけど…そんな、大したことじゃ…」
その様子に思わず微笑む。彼女の控えめな態度が、張り詰めていた心を和ませた。やがて彼女は意を決したように名乗り出る。
「…アタシはミレーユ・ロッシュフォールです。西の大陸から来た留学生で…七不思議の噂を聞いて、どうしても調べたくて…」
「私はアルルマーニュ・デュフォンマル。今年の春に入学しました。七不思議に挑んでみたくて、一人で来たんです。」
ミレーユは驚いたように目を見開き、安心した表情で頷いた。「そ、そうだったんですね…。でも、一年生でここに一人で来るなんて、勇気がありますね。」
その言葉に少し照れながらも、自分の気持ちを正直に伝える。
「怖くなかったわけじゃありません。一人でも大丈夫だと思ったけど…やっぱり少し心細くて。」
ミレーユの胸元の二つ星のバッジに気づき、彼女が二年生だと分かる。頼りになりそうだと思いつつも、彼女のもじもじとした様子に戸惑いを覚える。
「…もし迷惑じゃなければ…その…一緒に七不思議を調べたり…できたら…」
彼女の顔が赤く染まり、言葉を紡ぐたびに視線が泳ぐ。それでも必死に続ける姿に思わず見入ってしまう。
「そんなことありませんよ!さっきの術式、とてもすごかったです。一緒に行けたら、とても心強いです。」
彼女は目を丸くし、しばらくの間ポカンとしていたが、やがて控えめな笑顔を浮かべた。「…そ、そうですか?…じゃあ、本当に一緒に…?」
「ただ、私はまだ十三歳で特待生として入学したばかりです。さっきみたいに足手まといになるかもしれませんが…それでも良ければ。」
その言葉にロッシュフォールさんは驚いたように目を瞬かせ、それから少し慌てたように手を振った。「え、そ、そんな!特待生なんてすごいじゃないですか!それに、さっきのあの勇気…足手まといなんて思いません!」
彼女の言葉にほっとした気持ちになりながらも、少し照れくさく微笑む。
「そう言ってもらえると安心します。これからよろしくお願いします、ロッシュフォールさん。」
彼女は頬を染めつつも力強く頷き、安堵したような笑顔を浮かべた。「…ありがとう、デュフォンマルさん。あなたとなら、安心して挑めそうです。」
その優しい笑顔に、自然と私も微笑んだ。「ロッシュフォールさん、デュフォンマルって堅苦しいし、アルルマーニュはちょっと呼びにくいですよね。ぜひ、アルマって呼んでください。」
彼女は少し照れたように微笑みながら「…じゃ、じゃあ、アタシのことは、み、ミレーユって呼んでください」と返した。その控えめな笑顔に心が温かくなり、静かに絆が生まれていくのを感じた。この瞬間、私たちは学院の七不思議に共に挑む覚悟を新たにした。
─
第一の不思議、ここに終幕。
次なる試練は“風”——
学院に嫉妬の嵐が吹き荒れる。
この物語の本編は、異世界ファンタジー『愚痴聞きのカーライル 〜女神に捧ぐ誓い〜』です。ぜひご覧いただき、お楽しみいただければ幸いです。
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