(3)光の実技
「ゆ、油断…しすぎです…」
助けに入った少女の震える声が、教室の静寂を切り裂いた。その言葉には確かな意志が宿り、淡い紫色の瞳が冷ややかに私を見据える。その視線に胸が熱くなると同時に、悔しさが込み上げた。自分の未熟さを突きつけられたようで、彼女の言葉が鋭い刃のように胸を刺す。
幽霊教師がゆっくりと彼女に目を向けた。満月の青白い光が教師の冷酷な表情を照らし、その目に彼女への興味がかすかに映る。
「お前も、私の授業を受けたいのか…?」
冷たく響く声に、彼女は小さく震えながらも毅然とした口調で答えた。
「…光の七不思議…も、もちろん、受けさせてもらいます…」
短い言葉に揺るぎない決意が込められていた。空気がさらに張り詰め、幽霊教師の瞳に一瞬興味深げな光が浮かんだ。
「では、実技の続きだ…!」
教師の手が動き、無数の光の球が浮かび上がる。それらは一斉に輝きを増し、彼女へと放たれた。その冷徹な殺意に満ちた攻撃に、教室全体が威圧感で包まれる。
彼女は一瞬怯んだように見えたが、すぐに冷静さを取り戻した。手元から黒いカードを取り出し、小さく呟く。
「…闇の裏、展開…」
その言葉に応じ、黒い霧のような障壁が現れる。障壁は光の弾丸を次々と飲み込み、そのたびに微かな波紋が広がって消えていく。その光景は、光と闇が交錯する幻想的な舞台を作り出した。
しかし、幽霊教師は微動だにせず、次の魔法を繰り出す。彼の手から生まれたのは渦巻く光の竜巻。迫りくる竜巻の力強さに教室が震え、壁が軋む音を立てる。その迫力に、私は思わず息を呑んだ。
彼女は目を閉じ、深呼吸して冷静さを取り戻すと、緑色のカードを取り出し毅然と告げた。
「…風の表、展開…!」
その声と共に彼女の周囲に風の力が集まり、鮮やかな旋風が生まれる。風の渦は竜巻に立ち向かい、激しくぶつかり合う。まるで信念同士が衝突しているかのような光景だった。
やがて彼女の風が竜巻を押し返し、竜巻は霧散した。残った風が光の残骸を吹き飛ばして消えた時、私はその鮮やかな勝利に感動を覚えた。
幽霊教師は表情を崩さなかったが、目に一瞬だけ興味の光が宿った。そして無数の光の刃を浮かび上がらせると、一斉に彼女に向けて放った。その速さと鋭さに、ほんの一瞬彼女の肩が震えたが、彼女は水色のカードを取り出し静かに呟いた。
「…水の裏、展開…」
その言葉と共に澄んだ水の球が現れ、光の刃を受け止める。刃が触れるたび、水球は刃の勢いを奪い、静かに消していく。その儚げな光景は夜の静けさに溶け込むようだった。
最後の光の刃が消えると、教室に静寂が戻った。幽霊教師は低く呟く。
「…素晴らしい…」
その声には長い間待ち望んでいた者への満足感が滲んでいた。彼の姿は徐々に薄れ、満月の光が彼を包むと、無数の光の粒となって夜空に消えていった。
その光景は荘厳で、思わず息を呑むほどだった。最後の光の粒が消えた時、胸の奥に静かな敬意と安らぎが広がった。
幽霊教師が消え去った教室には、満月の光だけが静かに漂っていた。
この物語の本編は、異世界ファンタジー『愚痴聞きのカーライル 〜女神に捧ぐ誓い〜』です。ぜひご覧いただき、お楽しみいただければ幸いです。
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