貞子の井戸その2
時刻は、夜の19時50分
当時、私の実家は研修期間中に、母がいつの間にか買ったマンションに移り住んでおり、
友人たちとは学区が異なるような場所のため、一人自転車を漕いで目的地の公園まで急いでいた。
新しい実家と公園までの移動時間を、甘く見積もっていたため、待ち合わせの時間にギリギリとなり、
真夏の夜に汗をかきながら、公園に向かった覚えがある。
私「いやーお待たせ時間ピッタリだ」
Y 「いや!2分過ぎてるし!!毎回毎回、遅刻魔め」
私「まてまて、公園の下にはいたよ、下には、ただ、坂が凄いからね〜」
待ち合わせた公園は、城山公園として山の中腹のにあったため、ちょっとした展望台となっており、市街地が一望できるスポットでもある。
公園の中心には初代藩主の馬に跨った立派な銅像が設置されており、中学の歴史の授業中に、戦国時代の日本の馬はポニーみたいな小型のしかいなかったぞ、と先生に言われ、真っ先に(えっ、あの銅像の馬デカくて立派だけど嘘なの!)と思った銅像である。凛々しい姿の銅像を見るたびに、授業を思い出してしまい、なんとも複雑に気持ちにさせてくれる銅像である。
N「はい、虫よけスプレー、あと『私』だけだから全部使っていいいよ」
私「おお!ありがと!じゃあ遠慮なく」
『プシューーー、シュッ、シュッ・・・・』
私「ん??」
私「・・・なあ、首と左腕だけしか塗れてないんだが、空になってしまったぞ、もう一本あるのか??」
N「あっ、やっぱり、それ一本しかないよ!」
私「やっぱり???」
N「うん、さっきMがいっぱい使ってたから」
Mを見る私『じーーーーー』、M目をそらす
私「・・・何か申開きはあるかね」
M「・・いやーー、ほら、山の中行くじゃん、虫いっぱいいるじゃん、寄ってきたら・・・虫怖いじゃん」
私「ほう、だから君の腕も足も、顔もテカテカしてるのかね!お前は!そんな髪の毛染めて、B系の服着てて、建設系の兄ちゃんたちに囲まれる職場で、今更何が『虫怖いじゃん』だ!!」
私「よこせ、そのビショビショの腕についた液体をよこせ!!」
Mの腕に私の腕をくつけ、虫よけ成分を奪い取ろうとする。
M「うわ!やめろ!!というか既に『私』の腕なんか濡れてるし!!」
私「安心しろ!ただの汗だ!!無害DAZE!!」
M「余計やだわ!!」逃げるM、追う私
Y「キモい」そう言って距離をとるY
N,Oは笑ってた、その後OがMの盾に使われ、男3人イチャイチャ、一番の被害者はOとなった。
私「さて、虫よけも塗りましたし、登りますかな!」
M「虫やだなー」
O「・・・・首がヌルヌルする、男臭い」
Y「・・・・・」
N「山頂までどのくらい?」
Y「昼間、山道を普通に登れば30分かからない」
私「それでは面白くないから、脇道から入って、メインの山道に合流しよう!」
O「大丈夫??迷子にならない??」
私「安心したまえ、Yも俺も、ボーイスカウトや、陸上部時代に、嫌というほど登らされたから!」
M「なぜ、それで山頂まで行くと言った」
私「えっ・・・・・ほら、つまんないじゃん、神社行って井戸見るだけじゃ」
M「いや十分だろ」 肩にYの手がのびる
Y「・・・怖いのかなボウヤ、夜の山が・・・私は怖いよ、目隠しさせられて、夜の山をロープ片手に、手探りしながら歩く、あの恐怖の夜が!!」
M「いや!こわっ!!なにそれ!拉致でもされたのかよ!」
私、Y「・・・・何だろね?ボーイスカウトの隊長、なんであれしたんだっけ??そういう訓練???」
M「いや、軍人かよ!お前達は何を目指してたんだよ!」
私「奉仕団体??」
Y「募金団体??」
M、O、N「・・・よく分からん」
私、Y「俺達もよく分からん!!ただ、雪中手旗訓練や、40キロ行軍はもうやりたくないです!」
M「やっぱ変人集団だ」
私「とりあえず、先頭と一番後ろの人間が携帯のライトで照らしてながら歩こう」
皆「了解〜」
先頭 私、M、N、O、Yの順で登り始めた
道中、虫が飛んできてキャーキャーしたり、Nが転びそうになったり、無駄に遠回りしたりと、1時間以上かけ山頂に到着。
山頂はもともと城があった場所で、火災によって建物は消失しており、石垣が少し残っているだけの開けた場所である。
城のミニチュア版が、資料館に飾ってあったが、かっこいい城というよりは、でかい武家屋敷みたいな印象を受けた覚えがある。