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汎用魔法と固有魔法

朝目が覚めると、目の前にラヴィの顔があった。


「すぅ…」


ラヴィは朝に弱い為、まだ熟睡中である。

つーか俺も弱いのだが、ラヴィが毎回添い寝を要求するので自然と俺が起こすようになった。


(やっぱ綺麗な顔してるよなぁ)


思わず頬を撫でる。ラヴィはふにゃりと表情を崩し、嬉しそうに手に頬擦りする。


(…俺の幼馴染が可愛すぎる)


おっと、思わず本音が漏れたが今日は普通に平日だ。さっさと起こさないと。


「おいラヴィ、朝だ。遅刻するぞ」


「んぅ〜…?」


そう声を掛けると、ラヴィは眠そうに目を擦りながらこちらを見て


「りあ〜…」


まだ眠そうな声で抱きついてくる。


「抱きついてる場合か、起きろ」


「まだ眠い〜…一緒に遅刻しよ?」


「ダメ」


「あぅっ」


とぼけたことを言うラヴィにデコピンをかまし、怯んだ隙にベットの外に出る。


「むぅ〜…ケチ」


「ケチじゃありません。さっさと起きろ。

朝飯食わなきゃ昼まで持たん」


「は〜い…」


不満そうに起き上がるラヴィ。


「…またそんな格好して」


「いいじゃん。見られて困る人いないし」


「俺の部屋なんだよ。男ここにいるんだよ」


「リアにならいいんもん」


「よくありません」


ラヴィは下着を付けず、少し大きめのTシャツ一枚を寝着代わりにしている。

そのせいで普通に体のラインは丸見えで、

なんならもう少しで全裸とかいうレベルである


「何さ〜?もしかして興奮してんの?」


「そりゃ俺も男だしな。性欲くらいある」


ラヴィはバリバリに美少女だ。

家族ってわけでもないのに興奮するなという方が無理である。


「へぇ〜…ふーん…」


「急に大人しくなったな」


なんか赤くなってモジモジしている。

まさか今更恥ずかしくなったのかコイツ。


「っ…!そんなことないもん!」


「待て待て待て脱ぐな脱ぐな!

急に服を脱ぎ捨てるんじゃねぇ!」


俺の発言が不味かったのか、さらに顔を赤くしたラヴィは唐突にシャツを脱ぎ捨てた。

下は何も着てない為、今ラヴィは全裸である。脱ぎ始めた時点で顔を逸らしたので、なんとか直視は避けられた。


「私照れてなんてないもん!」


「分かった分かった!それでいいから服を着ろ!その格好で寄るんじゃねぇ!」


何考えてんだコイツ!


「あぁもう!俺は先に降りてるからな!

さっさと着替えて降りて来いよ!」


たまったもんじゃないのでさっさと逃げることにして、部屋から出る。


「なんだったんだマジで」


心臓と下半身に悪いからやめて欲しい。

スキンシップくらいならともかく全裸は流石に許容範囲外である。


「俺の理性はそんなに強くないんだぞ…」


ぶっちゃけ過去の色々が無ければ手を出してる。

別に俺は鈍感じゃない。ラヴィから明確に好意を向けられてることぐらい把握してる。

その上で幼馴染としての一線を守ろうとしてるのは俺側なのである。


「大切だし好意もあるけど…まぁ俺じゃ釣り合わねぇし資格もないわな。

そもそも関わらない方がいい生物(・・)だし」


そんなことを言いながら朝食を用意する。

ちなみに親は家にいない。

父親は科学者で、母親は魔法研究家だ。

忙しい上に職場が遠い為、2人とも帰ってこないことも多い。

その為俺は1人暮らし中だ。

…まぁ実質同棲してるのは置いておこう。


「あ、あの〜」


「ん?着替えてきたか。さっさと食おうぜ」


降りてきたラヴィに朝飯を出す。

今日は目玉焼きトーストと牛乳である。

俺は基本的に朝は米派だが、時間がないので致し方なし。


「お、怒ってないの?」


「あの程度で怒るわけあるか。よく知ってるだろ?今日はなんか変だなお前」


そう、変である。

今までなら好意は感じるものの、あくまで適当なスキンシップ程度に軽く絡んでくるようなやり取りをしていた。お互い短い付き合いでもないから、その程度では動じなかった。なのに今日は妙に乙女チックなのだ。


「だ、だって急にリアが変なこと言うし、夢が…」


「夢?」


「な、なんでもない!」


「はぁ…?まぁいいけど、飯食えよ。遅れるぞ」


「…今何時?」


「7時39分」


「ヤバいじゃん!」


ちなみに学園は8時半から、ここから学園までは徒歩30分かかる。

諸々の準備を考えると、割とギリギリである。


「「いただきます」」


全く同じタイミングで手を合わせ、さっさと朝食を食べ終わらせた後、格好を整える。


「忙しいんだから適当でいいだろ!」


「ダメ!ちゃんとセットして!」


実は俺の髪が長いのはラヴィの要望である。

ラヴィはどうしても髪型を変えたくないが、それはそれとして髪の毛を弄ったりもしたいらしく、その為に俺に髪を伸ばすよう頼んできたのだ。自分が手入れをするという条件付きで。


「やっぱ切っちまおうぜ?」


「ダメ!私の楽しみなの!」


俺の髪の毛なんだが?


結局時間はギリギリになったものの、

どうにか学園には間に合った。


…着いた時、正門前の先生に「夜遅くまでお楽しみだったのか?」と揶揄われ、

思わず顔面を掴んで壁に叩きつけたのは無かった事にしておこう。



………………



「眠ぃ…」


時間に間に合ったのはいいものの、一限は魔法構築の授業。

俺が既に知ってる範囲しかやらない為、講義を聞いてはいるが死ぬほど退屈である。


「眠そうじゃねぇの、ベリア。

愛しの彼女が寝かしてくれなかったのか?」


「うるせぇぞタケ、そういうんじゃねぇの知ってるだろ」


今話しかけてきてる奴の名はタケル・ミヅホ。

東洋出身の黒髪黒目の高身長やんちゃ野郎で、俺の数少ない友人である。


「お前こそちゃんと聞かなくていいのかよ。苦手科目だろ」


「いざとなったらお前に教えて貰うから良いんだよ」


「何がいいんだよ真面目に聞けや」


コイツは頭はいいんだが、魔法の構築が東洋独自のものの為、汎用構築の問題の点数はあまり良くない結果となっている。


「次の授業ってなんだっけ?」


「戦闘訓練だろ」


「マジか…眠いんだが」


「諦めろ。お前が強いから常に挑まれたり稽古頼まれたりしてるんだし」


…サボろうかな


「そこ!私語をし過ぎだ!」


「やっべ…」


どうやらうるさくし過ぎたらしい。教師がこちらを睨んでいる。


「タケル・ミヅホ!ここの構築はどういう意味か答えてみなさい!」


これまた随分と趣味の悪い先生だ。分からないと理解した上で恥をかかせる為に聞いたな。でもこれはタケが悪い。


「…分かりません!」


「ならばしっかりと聞きなさい!」


「はい!」


まぁこれだけで済んで良かった。たまにもっと粘着質な教師もいるからな。


「ではベリア!ここの構築h「AからB地点への魔力供給及び逆流防止措置と魔力変換。それに準ずる魔力増幅による演算処理の負荷に耐える為の過剰魔力の誘導線。変換効率は43%。ロスは魔光及び魔粒子として周辺に散布され、それをD地点にある集積式がs」そこまででいい!それ以上は次回にやる内容だ!」


おっと、少々饒舌になり過ぎたようだ。


「やり過ぎだろ」


「例え最初に悪かったのが俺でも、売られた喧嘩は買わなきゃな」


「俺は先生が不憫でならないぜ…」


必死で授業を立て直す先生を横目に、次の授業に想いを馳せる。


「今日は何をしようかね」


「お前がそれ言うと大抵ロクなことにならないよな」


「なんて言い草だ」


「今までの実績から来る確信だからな」


…そんなことないと思うけどなぁ



………………



「これより、戦闘訓練を始める!各員実益のある時間にするように!」


「「はい!」」


というわけで二限目だ。今は教室から場所を移動して訓練場にいる。一限目?あの後はほぼ授業の体をなしてなかったよ。俺が答えを大体言っちゃったせいなんだけどね。


「ベリア!ちょっと付き合えよ!」


「あいあい、魔法は汎用魔法(オーディナル)だけでいいか?」


「当たり前だ!お前の固有魔法(パーソナル)なんざ相手に出来るか!」


この学園は魔力代替品である魔晶石、その特大のものを中心としている為、学園の敷地内なら自身の魔力を使用せずに魔法が使える。


ちなみに魔晶石は消耗品であるが、ここにあるものはあまりにも巨大な為、そもそもが莫大な魔力を持つことはもちろんのこと。巨大故に魔法式を刻み、自然の魔力を周辺から収集し蓄積する機能を付けることに成功している。その為実質無尽蔵の魔力を持っているのだ。


「お前の魔眼(・・)も、汎用魔法(オーディナル)なら関係ねぇしな!」


「そこまでしても負け越してる癖によく言うぜ」


「うっせぇ!今日こそ勝つ!」


さて、ここで汎用魔法(オーディナル)固有魔法(パーソナル)について話しておこう。


そもそも魔力とは個人そのものである。それ故に、魔力は個人によってその特性が異なる。これを魔力特性と言う。


固有魔法(パーソナル)とは、その特性に合った形の魔法式を個人が作ることによる、自分だけの魔法の事を指す。個人の特性を最大限活かす為強力で使いやすいものが多く、相性によっては格上に勝てることもある。


逆に汎用魔法(オーディナル)とは、その特性に左右されない、シンプルな魔法式のことである。誰にでも使えるが、逆に言えば誰が使っても同じ使い方になるので、練度の差が如実に現れるものとなっている。


「行くぜ!」


タケの掛け声と共に同時に駆け出す。その速度は普通の人間の速度を軽く超えている。これが汎用魔法(オーディナル)の一つ、身体強化である。


「オラァ!」


タケの放った上段回し蹴りを左腕で受け止める。訓練場に重低音が響き、体に衝撃が伝わる。


身体強化は文字通り、肉体を魔力で強化する魔法だ。魔力消費は微量で継続的。魔力を増やして出力を上げることは出来ず、練度のみが出力を左右する要素である。


「シッ!」


「うぉっ!?危ねっ!?」


お返しに右フックを放つも、寸前の所で躱され、お互いの距離が開く。


「まだまだぁっ!」


「…ッ!」


再び接近、ゼロ距離にて打ち合う。

タケの烈火の如き猛攻を、弾き、流し、受け止め、流れるように反撃に移る。

タケもその反撃を見切り、逸らし、躱すことで凌ぐ。


身体強化は筋力の他にも、肉体強度、動体視力、反応速度などあらゆる面が強化される。それにより通常とは比べものにならないスペックでの戦いとなるものの、基本的にやること自体は生身とそう変わらない。


俺の戦闘スタイルは、基本は相手の攻撃を受け止め、その後重い一撃を叩き込むカウンタースタイル。


タケは相手に手数重視の連撃を仕掛け、反撃を見切って躱すスピードスタイルである。


コレはあくまで素手での戦い方であり、武器を持つとまた別の話なのだが、今は置いておこう。


「余所見してんじゃねぇぞっ!」


「おっと…!」


流石に他事を考え過ぎたのか、タケの一撃を受け止めきれず、少し体勢が崩れる。


「貰ったぜ!」


タケはその隙を見逃さず、飛び込んでくる。

この体勢では受け止めきれず、まともに喰らうことになるだろう。


…そろそろちゃんとやるか。


「よっ!」


「はっ!?」


俺はスライディングでタケの股下を潜り、

そのまま跳躍。


「セイッ!」


「ちょ待っ…ぶぇっ!?」


空中で後ろ回し蹴りを右脚で放ち、

強烈なカウンターを叩き込む。


タケは咄嗟に振り返り、俺の踵を顔面にモロに受けて吹き飛ぶ。


「こんのっ…!」


タケは地面を転がり、立ちあがろうとするが


終わり(チェック)


拳をタケの目前で寸止めする。


「…そこは詰み(チェックメイト)じゃねぇの?」


両手を上げて降参の意思を示しつつタケが聞いてくる。


「まだ死んでないなら終わり(チェック)だ。何回だって挑み直せるだろ?」


ニヤッと笑いながら手を差し出す。


「そうかも、な!」


タケは俺の手を取り、そのまま立ち上がる。


「いや〜、負けた!」


「いつも通りな」


「次こそ勝つ!」


「先は長そうだな〜」


「んだとこの野郎!」


憤るタケ(馬鹿)を横目に、

適当に辺りを見回すと


「流石魔導士(ウィザード)のお二人!

固有魔法(パーソナル)抜きでこのレベルの高さ!」


「最後の動きおかしいでしょ!?

明らかにそれまでより数段速かったんだけど!?」


「手加減してたってことですよね…」


「なんなら最後の動きすら本気じゃない可能性すらありますよ」


「噂によると、ベリアさんは汎用魔法(オーディナル)のみでの戦いなら、〈賢者の杖〉の方々すら圧倒するのだとか」


汎用魔法(オーディナル)最強は伊達じゃないのね…」


外野がワイワイ騒いでいた。

ちなみに別に汎用魔法(オーディナル)最強は俺の魔導士(ウィザード)としての呼び名ってわけじゃない。勝手に呼んでる奴らがいるだけだ。


「今日もベリアはアイツらの面倒見てやるの?」


「いんや、今日は多分アイツが来る」


「…〈賢者の杖〉の誰かか?」


「多分な」


なんとなくの感だが、こういう時は大抵当たる。


「誰だ?」


「『無垢なる聖女』」


「第三席か…関わりは?」


「一応…友人?」


「なんだその曖昧な表現」


だってしょうがないじゃない


「ラヴィの友人だが、俺との直接の関わりは少ないんだよ」


「じゃあなんでそんな人がお前に会いに来るんだよ」


「いや来るってだけで別に俺に用事と決まったわけじゃねぇし」


「このクラスで上位陣が目をつけそうなのはお前だけだが?」


痛いところを突きやがる


「タケだって充分目をつけられるポイントあるだろ」


「お前ほどじゃねぇよ」


ぐぅの音も出ねぇ…


「…んでどうすんだよ」


「…いざとなったら固有魔法(パーソナル)を使う」


「マジか?お前それ攻撃性能が高すぎるからそんなに使わないとか言ってたろ」


「最近学園内がきな臭い。下手すりゃ内部抗争までありえるぞ」


何を大袈裟なと思うかもしれないが、

ここは魔法学園『アイリス』。

様々な国や組織の陰謀渦巻く、

世界で一番武力の集まる場所だ。

警戒するに越したことはない。


そうしてタケと話していると


「あら?お待たせしましたか?」


…来たな


俺は入り口の方を向く。


「いいや、今来たとこだよ。聖女様」


プラチナブランドの

ウェーブのかかったロングの髪

金と青のオッドアイの瞳

落ち着いた穏やかな雰囲気

可憐さと静謐さが合わさった顔つき


ウチの学園で三大美人の一角とされ(1人はラヴィ)、誰もが見惚れる少女。

学園順位2位にして、〈賢者の杖〉第三席

『無垢なる聖女』シャルロット・アルテミスがそこにいた。


「お迎えに上がりました」


「出迎えに来ていい人材じゃねぇだろアンタ」


「ヴィアが迎えに来る貴方に言われましても」


…それはそう。

ラヴィは正真正銘ダントツのトップだからな。


「んで何の用で俺を?」


「ヴィアが…」


「ラヴィが?」


シャルロットはとても言いづらそうにしながら


「ベリアさんと一緒にお茶会したいから呼んできてと…」


……ハァ?

就職活動って面倒くさい…

それはそうとなんだかんだ第二話。

まだまだ投稿していきたいですね!

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