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護衛艦

ハコダテまで飲まず食わずで丸一日かかり着いた。

二人は街の近くの川で喉を潤わせ、身体を洗い街へと入った。


二人は護衛艦の仕事の斡旋をしている中華人を探していた。

「船に乗りたい働きたい人あるか?今日の16時まで募集あるよ!」

大きな声と親しみやすい顔つきの中華人が叫んでいた。


「二人乗りたいんだが色々と確認したい」

ヒビキが近付いて声を掛ける。


「おぉ兄さんラッキーね、残り二人よ、確認なんてしないですぐに乗りなよ明日には出港よ!」


凄く胡散臭い雰囲気を出しながら中華人は声をあげる。

ヒビキはGTの方を振り返って顔を見ると、


「俺はGT、こっちはヒビキ、まずは給料は日払いで。あとは休憩時間の確認だが寝る時間ぐらいはあるんだろ?」


「日払いできるよ、食事も3食、睡眠時間は2交代ね、海洋生物との交戦中は全員で。私一号艦の護衛長のチョウね、みなチョウさん言ってる」


チョウに催促ぎみに船へと向かわせられた二人。


船に乗り込む30人程度が集まっていた。

護衛艦の船長らしき人乗組員へと注意事項を喋っている。


「明日から出港となるが、外洋にでるとイッカクと言うデカイ奴と遭遇する可能性がある。イッカクの特性は自分の狩場に違う狩人が入ると狩人を排除しようと長い角を刺そうとする。こちらの漁とかち合った場合にまずは引き揚げる網と一緒に水面にでてくる。最初の水面にでて10分かからずに攻撃性が増すのでその前に護衛艦に搭載されているチェーン付きのモリで動きを止める、電流を流して大人しくなったら護衛艦の側まで寄せるから雑用係はイッカクの角をまずはチェーンソーで切断、イッカクの角は回収してみんなで分け合うから海に捨てないでくれよ、角を切断したイッカクは解放、方向感覚がなくなり船を襲えなくなるから動きが回復する3時間程度の間に離脱する、もし回復が早い場合もう一度電流を流すがほとんどの場合一回の電流でしばらく動けないから安心してくれ、中華には14日間程度で到着する予定でその間に二回の漁を行う。危険な仕事だが何もなければ全員無事に中華へ辿り着くから安心してくれ。皆の命を預かる護衛艦艦長の黄だ、宜しく」


職人のような顔つきで歴戦の猛者を思わせる風格の艦長だ。背が高く180ぐらいあり白髪交じりの短髪で制服姿だと威圧感さえ漂う。


「チョウさん30人ぐらいしかいないんだが15人ずつだと雑用は7人ずつぐらいか?」


ヒビキが問いかける

チョウは目を泳がせながら


「実は人が集まらないのよ。ヒビキとGTで6人。本当は10人募集したあるよ、周辺の街にも宣伝してスラム街にも行ったけど日当1万だと割が合わないって言われるよ、だから2艦に正規の職員が12、日雇いが3人ずつになると思うよ

でも安心するあるよ、仕事はイッカクの角切りと洗濯と調理補助がメインね」


二人は別に日当や仕事内容は気にしてなかった。

中華へまずは行く事が目的だから。


「とりあえず18時までには船に乗るあるよ最終点呼よ、今13時だから用意あるならしてくるよワカッタかヒビキ、GT」


「チョウさん今日の夜は飯食えんのか?」

ヒビキは丸一日食事をしていないので聞いてみた。


「飯あるか?もし食いたいなら私が二人分の飯用意するから点呼終わったら声掛けてくれ」


「用意するもんなんてない、着替えのバックしか持ち物がないから。このまま船にいて良いか?」


今度はGTがチョウに聞いた。


「それは大丈夫あるよ、部屋と乗り込む艦が決まってないから、休憩室案内するよ」


二人はチョウに案内され船員の休憩室に行く。


戦争の影響で失われた技術は沢山あった、兵器というのも火薬を搭載したものは今や世界的タブーで所有するのは裏の家業専門だ。

車という文明ももう昔の遺物、500年前になくなった。

唯一船という文明は自家発電と共に今も活躍している。


自然エネルギーから作られる発電がメインで全世界の人類がそれで足りる生活をしている。自然を急速に回復させる必要があった戦後300年の間にハイテクノロジーは8割以上失われた。

今やテクノロジーを総括する世界的機関 great technologyが運用許可を出さない限り新しい何かが生まれる事はない、この機関は世界中各都市部には必ずあり今や各国の政府でも手を焼く存在でもある。失われた幾つかの技術も保有しており、優秀な研究者、科学者、医学者、工学者を1000人程度雇用している。権利発行、運用許可、運用利益の5%程度の徴収、これだけで2万の職員を雇用している。そして裏の顔は政府の暴走を防ぐアンチテーゼの思想として世界で暗躍する機関でもある。

船という技術もこの機関から許可を得て漁、護衛艦、運搬と所有する団体が利益に応じて支払うシステムだ。


「ここで休んでて、くれぐれもウロウロしないであるよ」


チョウは仕事があると言いどこかへ行った。


休憩室は質素な作りで高さ2m、広さ六畳程度で椅子が4つほどあるだけだった。


「なぁ中華にいったらどうするよ」

ヒビキが疑問をぶつける


「とりあえず船での金でiC端末を買おうぜ、今までは街の役所に行けば事足りたけど国が違うとなると買わなきゃ不便だ」


ic端末とはこの世界で生まれて少しするとicチップを耳へ埋め込む、出生地、住所、資産、貯金、個人情報の登録と更新を端末で行う、月に一回必要で病院と役所、関所にあり、普段から遠出や忙しい人などはこれを所有する。

これには連絡用の機能もありメールのみやり取りができる。あとは緊急性の高いニュースを配信している。

価格は5万~20万程度で高い端末は自分で配信する機能があり、タイトルを付け配信できる、この時に配信料金として講読料金を設定できたりする。

端末を所有すれば街にいなくても更新に困らない、本人しか使用できない作りで他の人が使用できない。

更新しないと保安機関の職員が必ず探しに来る、3ヶ月更新しないと捕まり更新しなかった期間の行動を長い時間かけて問われ罰金も発生する

行動範囲の狭いスラムの人間にはあまり馴染みはない。


「あぁそうだな、まずは端末か。あとは拠点だな、港に居着けばそれなりに食えると思うが」


「中華も広いからな、港で少し稼いだら考えるか。別に焦る旅でもないしな」


二人は小さな世界からの解放感と未知の旅路に心踊らせていた。


「しかし腹減ったな」


ヒビキがしみじみ呟いた。



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