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君がいれば  作者: 花車
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別天地

第四章 別天地

「あれ、どこにいるんだろ。あの白い天井は?詩は...?」僕の思考は完全停止状態。どこ何だろう。と呟く。「なんで来ちゃったの?」と声がする。どこだろう。どこからの声だろう。聞き覚えのある声だ。でも、記憶が曖昧だ。誰の声だ。誰なんだ。「馬鹿じゃないの?一真」あ、この呼び方。言葉遣いー。優だ。「優⁉優どこだ。」そう僕が叫ぶと、優はひょいと僕の前へ来た。「久しぶり笑てか、なんでここにいるの?」優が僕に聞く。僕は記憶が鮮明に残っているわけではない。少しあやふやだが、優に説明した。優は下を向いたままこっちを見ようともしない。「なぁ優。ごめん。優が苦しんでるなんて知らなかった。気づけなくて、本当に情けないよな。ごめん。」そういうと優は怒ったような顔をして言った。「ばっかじゃないの?私は私の意志で死んだの。一真のせいなんかじゃない!」そう言い放った。涙目になりつつある優の瞳に、少し見とれている僕がいた。優は僕が知っている優は、声が高くて、女の子らしい声で...そんなことばっかだ。容姿なんて一つも知らない。だから気が動転来ているのか彼女を直視できない。「ねぇ一真、詩に会えた?詩元気?」なんてこと聞かれた。元気だよ。と返すとさっきと違って、明るくキラキラした瞳を見せてきた。それから優とはいろいろな話をしたー。


一真くんが死んだ。一真くんの余命があと残りわずかなんて聞いてない。一真くんの死が私より早いなんて聞いてない。ねぇ一真くん。私は余命が来るまでどうやって生きればいいの?一真くんなしでどうやって生きればいいの?そうお葬式の時泣き叫んだ。当然返事はない。悔しい。なぜか悔しい。苦しいの間違えじゃないか。と私は思った。でも悔しいの方が、表現的にはあっていた。一真くんが余命のこと話せないほど、私は頼りなかったんだ。その悔しさなのかもしれない。そんな思いたちと葛藤しながら死神さんが迎えに来るまで待とう。なんてばかばかしい考えをしていた。でも、死神さんは案外気が利いてて一真が死んでから数日で私を迎えに来た。『お告げだ。君はもうすぐ死ぬ。一週間後君を迎えに来る。』と真っ黒いスーツを着て顔を隠した人が言ってきた。私はわかりました。と返事をした。死神さんはすぐに姿を消した。死神さんがくれた時間。七日間をどう使おう。私は考えた。一真くんのこと。優のこと。私のこと。何かに残したかった。七日間で書ける分だけで小説を書こう。そう結論を出したのだ。私はすぐに書き始めた。今まで思ったこと。やったこと。全部書き示した。

死ぬ当日、添削はまだしてないけれど、原稿用紙12枚分を書き上げた。私はこれを見返さずに原稿用紙12枚分の文のデータが入ったUSBを、封筒に入れ付箋を貼る。[これを添削して世に出してください。それが私の最期の願いです。]そう書いて机の引き出しにしまう。死んだらお母さんが見つけてくれるだろう。そう願って入れる。あとは家族に手紙を書く。[私は今までいっぱい迷惑かけてきたよね。でも一回もありがとうって言ったことも、なかったよね。ごめんなさい。何も親孝行できなかったです。親不孝でごめんなさい。幸せでした。]敬語が入り混じった変な文を書いて封筒に入れ。封を閉じた。それも一緒に引き出しに。私はこの16年間本当に幸せだった。親友が出来て、恋人が出来て。本当に幸せ者だと思う。みんなにありがとう。そんな思いを抱いて、もう覚めることのない眠りについた。

「詩!詩。起きろ!詩はまだ死んじゃだめだ。詩は僕がいなくても生きれるさ。新しい恋人を作って幸せに生きろよ!こっちにくんな!80歳になったらまたこい!」暗闇の中でそう言っている一真くんの声が聞こえた。80歳って笑。私は思わずクスッと笑てしまった。目を開けると私の部屋の天井…ではなくて白い天井...病院か。私は感づいた。まだ生きているんだ。いや、一真くんが生かしてくれたのかな。そうこう思っているうちにお母さんが駆け寄ってきた。お母さんはうれしそうな顔をして私を見つめた。私も出来る限りの笑顔を見せた。私の病気は完治する。そう先生がおっしゃった。奇跡的に腫瘍が小さくなっていて手術で切除出来たらしい。たぶんこれも一真くんのおかげだ。そう思って私は一真くんから言われた通り80歳まで生きることにした。

あの日から10年という長い月日が経った。この10年間は色々なことがあった。沢山の人からモテたり、職のスカウトだったり、色々なことがあった。ちなみに私は今は小説を書く仕事をしている。死ぬ間際に書いたあの小説を、小説サイトに添削をして出したところ、好評で本にまでなったのだ。それからはずっとバタバタで忙しかった。でもその合間には一真くんや優ちゃんのことを思い出して、何やってるのかなって考えたりしていた。たぶん私は今後もそうやって生きていくんだと思うー。

第四章 別天地

終わり


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