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君がいれば  作者: 花車
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君との糸

第三章 君との糸

詩と優の話をして一週間がたった。僕はこの一週間学校を休んだ。検査入院のためだ。僕は昔から体が弱かったが、最近新しい病気が見つかった。膵臓癌だ。ステージⅣで手術しても意味がないと言われた。このことを知ったのはつい最近で、もう死んでしまうのかと。でも生きたいとは思わなかった。僕は癌が分かったとき、もう自決してしまおう。そう考えたりもした。でも出来なかった。未遂をすると怖くなる。もう死ぬのを待つしかないと思いながら高校へ向かった。教室に入って席に座った瞬間詩が、話しかけてきた。「おはよう。この間はごめん。一週間何してたの?」そう聞かれた。僕は「ううん、大丈夫。あの日何も言わずに帰ってごめん。」そう返した。僕は続けていった。「放課後話したいことがある。ちょっと時間作ってくれない?」そういうと詩はうんいいよと言って自分の席へ帰っていった。授業中ずっと僕は、空を見ていた。今日は空の雲が奇麗だなとか、僕は空をあと何回見ることが出来るのかなとかそんなこと考えていた。そんなこと考えていたらいつの間にか、放課後になっていた。詩のところへ行こうとしたら、詩からこっちに来た。詩と二人っきりの教室で、優のことそして僕のことを話した。詩は親友の死を受け入れていたらしい。あの日僕が無意識で淡々と話した優のこと、優の死のこと。詩は薄々気づいていたらしい。聞く前から優の死に気づいていたからこそ、詩は僕に優しい言葉をかけれたのかもしれない。優の死を簡単に受け入れられた詩が凄いと、その時までは思っていた。詩は僕の話を聞いた後、詩は「私も病気でね、そろそろ死んじゃうんだ。」その言葉を聞いた途端僕はえ?と言葉が漏れた。続けて詩は言う「本当は一真くんがこの一週間何していたのか知ってるんだ。尾行とかしてたわけじゃなくてね。私の親一真くんが通っている病院の看護師でね、一真くんのこと教えてくれたの。ごめんね、勝手に聞いて。」詩の優しさが、詩自身の辛さが感じられた話だった。僕は詩に言う。「ううん。大丈夫だよ。もともと詩には言うつもりだったし。詩も辛かったね。話してくれてありがとう。ねぇ詩。」僕の胸が壊れそうなほどバクバクしている。「あの日。君のハンカチを拾ったとき、君に一目ぼれしたんだ。そのだから、未来のない僕だけど君を幸せにする自身が100%あるわけじゃないけど、これからも僕は君の傍に居たい。僕と付き合ってくれない?」やっと言えた。振られてもいい。僕の最期の恋になりそうだから伝えたかった。詩は顔を真っ赤にして僕を見て口を開いた。「私一真くんを見つけたとき運命だって感じた。でも一真くんを見つけられたのは優ちゃんのおかげで、優ちゃんが一真くんのこと話してた時、あぁ優ちゃんは一真くんが好きなんだなって思ったの。それでも今の私は一真くんが好き。優ちゃんを裏切ってしまうけど、一真くんが好き。だからよろしくお願いします。」詩は耳まで真っ赤にしてそう言った。

家に帰ってもまだ、詩と付き合った実感がない。夢じゃないのかな、と確かめるように眠りについた。朝目覚めると君からのメッセージが二件。「おはよう。まだ起きてないの?」「学校送れちゃうよ?」と。僕は「おはよう。今起きた。ちゃんと学校には行く。またあとで。」既読は速攻だった。「うん。待ってるね。」と返事が来て終わった。メールを確認した後僕は学校へ行った。教室に入って席に着く。詩がいない。詩を探してもいなくて、周りの人に聞いてもまだ来ていないと言われた。僕は詩に電話する。繋がった。『詩今どこ?』『ごめん。ちょっと体調悪くなっちゃった。行けないかも。』と言われ、僕は思わず『今どこ?』と聞いてしまった。すると彼女は『え、華岡病院に向かっているとこだけど...』と返事が来た。僕はならそっちに行く!そう言って学校を早退した。病院に着くと彼女が険しい顔をして彼女のお母さんと待合室にいた。たぶん呼ばれて話が終わった後なのだろう。僕は彼女の傍にすぐ駆け寄って、抱きしめた。「泣きたいときは、泣いていいよ。」そう優しい声で言うと彼女は号哭した。「あと半年しか、半年しかいきれないよ...どうしよう一真くん。もっと一真くんと一緒に居たいよ...」と嗚咽を混じりながら言った。「大丈夫。僕は君の傍に居る。いつまでも傍に居る。」そういうと彼女は安心した顔で泣き止んだ。詩のお母さんは「ごめんね一真くん。詩のことよろしくお願いします。」そう言って仕事へ戻っていった。詩は少し目元を腫らして笑っている。詩がこんな風に笑うのは前も見たことがある。優のことを話しているときもそうだった。病院から出ると、驟雨が降っていた。夕日に混じる雨は美しくて、何故か詩の気持ちを表しているように見えた。詩にこの雨は驟雨って言うんだよ。そういうと彼女は「今の私を示してくれているみたい。」そう言って笑っていた。そうだねと返す僕も、さっきよりも心が落ち着いたような気がした。「詩、明日僕に時間をくれない?」彼女は少し困惑していたが、頷いた。

朝起きて詩に連絡した。「おはよう詩。体調どう?」案の定すぐに返事が来た。「おはよう。良好だよ。それよりも一真くん今日どこに行こうとしているの?」僕は「内緒。じゃぁ10時に駅に集合ね。」そう言って身支度をし始めた。いつもよりしゃれた服を着て、髪の毛をセットした。僕はあと数日しか生きれない。そう一昨日の検査入院の日に言われた。詩はまだ知らない。いや知らなくていい。悲しませたくないから。最近体調が悪いからこれが最期の詩との長い時間だと思って、僕は大事な思い出になるように記憶に焼き付けられるように格好つけた。そんな時、詩から電話が来る。『もうすぐ着くよ。一真くんは?』と。『あ、今から出る!5分後に着くから間に合うはず。』そう言うと彼女はくすっと笑って待ってるねと言って電話を切った。駅に着くと淡いピンク色のワンピースを着ていた。いつもより大人に見える君に見とれている僕は顔が真っ赤になっているかも。彼女と目が合った。こっちに駆け寄ってくる。おはよう。という君が可愛い。尊い。「んじゃぁ江の島行こうか。」そう僕が言うと彼女は驚いた顔をして頷いた。よし、行こう。そう言って電車に乗った。ここからだとすぐそこだが、最後に行ったのは小学生の時だろうか。そんなことを考えていたらいつの間にか、着いていた。降りよう。そうつぶやく君が可愛い。降りて改札を抜ける。太陽が痛い。眩しい。「海いこう!」そう言って海へ走る。これが青春か。幸せというのか。そう感じた。詩が笑ってる。やっぱり海に詩は似合う。君は麦わら帽子を押さえて風が強いねと笑う。その姿を僕は写真に撮った。そんな時、目の前が真っ暗になったー。

目が覚めると僕は白い空間にいた。誰かが泣いている...誰だろうー。懐かしい声?聴きたい声だ。あの優しい声。「詩...?」声が出た。女性がこっちを向く。泣きながら笑っている。見たことある顔。やっぱり詩だ。「ごめん詩。楽しませてあげられなかった...」そうかすれた声で言うと「ばか。一真のばか!」そう言われた。詩の声だ。心地い声、愛おしい声。「詩。僕はもうすぐ死ぬ。だから最後の思い出にと思って、江の島に行こうと思ったんだ。でも無理だったね。幸せにさせてあげられなかった。ごめん。」僕の言葉に彼女は雫を零す。「ばか。ばか。一真のばか。私は一緒にいるだけで幸せだよ。そんなのにも気づかない一真はやっぱり馬鹿だよ。泣」あぁ苦しい。詩の泣き顔を見るのは苦しい。ごめんね詩。こんなんで。しあわせにさせてあげられなくで、ごめんね。そう思っていくうちに涙が出てくる。詩には幸せになって欲しい。僕のことを忘れて幸せになって欲しい。詩の残りの時間を幸せにするなんて、ばかばかしいこと言って改めて恥ずかしくなった。なんかもう言葉が出せなくなりそうだから、今のうちに詩に伝えよう...「詩...僕は生まれてから不幸なことばっかりだった。でも詩にあってから幸せってものを知った。詩のおかげで幸せになれた。ありがとう。僕は今もこれからも詩がー。」ここで意識が途切れてしまった...

第三章 君との糸

終わり

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