新学期
第一章 新学期
春になって僕は高校生になってしまった。また生きてしまった。そう感じるのは僕だけだろうか。春になったばかりなのに、僕の目の前を遮るように散る桜は何かを問いかけているようだった。僕は桜に囲まれた門を通り、高校へと向かう。この高校は公立の高校で県内では美女美男が集まる高校だった。なぜ僕はここに通うことになったのかわからない。そんなことを考えていた時、目の前の一人の女の人がハンカチを落とした。拾って「あの、落としましたよ。」と僕は言う。彼女はありがとうございます。と言って足早に僕の前から去っていった。僕はクラス表をみて1‐Aだということ確認しクラスへとむかったとき、目の前にあのハンカチを落とした彼女がいた。僕は無意識に彼女を目で追っていた。そんな毎日がずっと続いた。何日も何か月も。僕はたった一人の彼女だけを見ていた。でも、話しかけようとは思わなかった。なぜなら僕と仲良くなった人は、みんな死んでしまう。だから僕は孤独でいい。誰も傷つかなくて済むなら僕は一人でいい。そうわかったのは中学生の時だった。一人目の人は、幼馴染の彰という男の子だった。彰はいわゆる陽キャで、運動も勉強も出来る凄い人だった。そんな彼と真逆な僕だったが、隣の席になって消しゴムを貸したときから彼と仲良くなった。彼と出会って数年がたったころ、体育祭後だっただろうか。あの日は晴天でむしむしとしていた。体育祭で盛り上がっている最中僕は体が弱かったため体育祭には参加せず、救護テントの下にいた。のんびりしていると彰がリレーの選手として走っている姿が見えた。クラスの女子たちからの歓喜の声が聞こえてくる。彰はアンカーでびりだったこのブロックの救世主となった。何人も抜かしていってトップになった。みんなからの歓声とほかのチームからのブーイングが混じり合っていた。彰の逆転勝ちのおかげでチームは一位になり、見事に優勝した。その帰り、彰は打ち上げに向かっている最中に信号無視の車に追突され、即死した。僕はその知らせを次の日の朝学校で聞いた。知らせを聞いたときあの運動神経抜群の彰が何でよけれなかったんだって、無茶を言って泣いていた。みんなも泣きながら僕の話を聞いて笑っていた。本当だよと言う人もいた。クラス全員が泣いていた。それほど彰は好かれていたんだろうと僕は初めて分かった。彰は幸せ者であり、僕の最強の友達であったんだなと心の中で思った。僕は彰の分まで生きようと思ったのは、彰からの一枚の手紙からだった。その手紙は、彰のお母さんからもらった僕宛の手紙だった。「いつかお前と離れてしまう日が来るかもしれないからここに思いを書いておくな。俺がもし死んでしまっても、お前は生きろ。」という文だった。それを読んだ僕はその言葉を胸に抱いて歩き出した。
第一章終わり