【1-4】
【1-4】サッカーでの決まり事
試合は、先生の吹く開始のホイッスルで始まった。ボールは吉岡のキックからだ。
このクラスの大半の男子は、吉岡の取り巻きで、彼はボス的な存在だった。
いつものことだが、吉岡は取り巻きの連中にしかボールを回さなかった。
同チームの颯介や他の男子にボールが回ってくることはほとんどなかった。
見かねた先生が吉岡のスローインの時、プレーに参加していない、颯介達の男子にもボールを回すようにと指示を与えたほどだった。
それは、試合終了間際の出来事だった。
先生は腕時計を見ながら、ホイッスルを吹く準備をしている。
このプレーがおそらく最後だろう。
スローインのボールを受けた取り巻きの一人は、すぐさま吉岡を見てパスを出した。
その時、視界の中にいなかった明文が風のように表れ、パスを奪った。ボールをキープした明文はドリブルで、守りの五人を軽くかわし、コーナーポストのギリギリにシュートを決めた。
一瞬の出来事だった。
ちょうど、試合を見ていた女子達、控えていた男子たちから歓声が上がった。
「すっげー!」
「明文カッコイイー」
颯介は、呆気に足らわれ、ポカンとしていた。
ホイッスが吹かれ、試合は終わった。