【1-2】
【1-2】転校生
その翌日の朝、校内には始業を知らせるチャイムが響いていた。
先ずは、ホームルームから始まるのが慣例
になっている。教室の前、黒板近くのドアが開いて、クラスの担任が入ってきた。
この学校に赴任して、まだ二年目の若い教師だった。彼女の後ろには、男の子が立っている。
「奏君、教室に入って」担任の中村がその子に呼びかけた。「はい」返事とともに少年は教室に入ってくる。ショウは「アッ!」と、小さく声を上げてしまった。昨日、校門にいた少年だった。
「五月女君、どうかしたの?」と、担任。
「いえ、何でもないです」
「そう、でもびっくりさせないでね」
ショウは担任にペコリと、頭を下げた。
その少年は颯介に微かに微笑んだ。
担任の先生はその転校生の出身と名前を告げると、自己紹介を少年自らにするように促した。
少年はきれいな日本語で自己紹介をした。
皆感心したのか、クラスの中から、へぇーとか、ホ~と言った驚きの声が上がった。
担任が言った、「じゃあ、奏君の席は颯介君の隣で・・・机は隣とつけてくださいね。しばらくの間、奏君は教科書が無いから見せてあげてね」
少年は颯介の隣に歩み寄った。颯介は隣の机を自分の机に引き寄せた。
「初めまして、よろしくお願いします」
少年は颯介にペコリとお辞儀をした。
少年の小4とは思えない挨拶に戸惑った颯介は「こちらこそよろしくお願いします」
少年の大人びた言い方につられて、颯介は上ずった声で返答した。
まるで申し渡しの様なやり取りが面白かったのか、クスッと笑い声が漏れた。
斜め後ろの席の、仲谷というクラス女子委員長だった。