STEP:9 訪問者
姉さんとの仲が戻ってまた楽しい日々に戻った。
告白してから約一月が経った。
起きたら姉さんとスカイプを初めて、
寝る前におやすみの言葉と共にスカイプを切る。
体こそ側にはないけど、同棲してる様な気分。
春のカオス祭りも二人で聞いてレスをした。
色々なDJの様子を聞いては、他の評価が投稿されている板を見に行ったり様々な事をしてた。
食事をするのもパソコンの前で二人で一緒に摂る様になっていて、食事中は無言だが、繋がってるという事だけで満たされてる様な気分になった。
ヘッドセットから聞こえるガサガサっていうビニールの音や、洗濯機が姉さんを呼ぶ音など、その光景が目に浮かぶ様だった。
そんな今日も例外ではなく、スカイプは繋がっている。
姉さんも設定がだいぶうまくなった。
今日も何でもない話をしている。
特に変わった話や、話題が面白い必要などない。
ただ、姉さんが話していてそれを聞いている。
たまに俺が話して、姉さんが笑う。
それだけでいい。
それだけで幸せなのだから。
「ん?どうしたの?」
「いや。何でも無いよ」
「なんでも無いわけないよぉ。急に無言になったから切れちゃったかと思ったじゃん」
「ああ、ごめんね。ただ、こうしてまた話せている事が嬉しいな。って思ってたんだ」
「なにそれw」
「前に言った通り、あの時は本当に二度と話せないと思ってたんだ。だから、こうして話している事が本当に嬉しくて幸せなんだよね。」
「えへへへ。なんか照れるじゃんw わ、私はべ、別に嬉しくなんか...ないんだからね! って言っておきます...ねw」
「きっと、今の俺は凄い自己中だと思う。正直、静香さんが忙しくても不機嫌になってても俺はこうして繋がった状態を維持したい。今はそれだけが唯一の生き甲斐だから」
「不機嫌になんてなるわけないよ。うん、絶対無い。そう思う」
「ありがとう。それに何よりも自分の気持ちを伝えた後にこうしていられる事が嬉しい。本当に告白して良かったって思える」
「なんで? 伝えられたら嬉しいに決まってるよ。普通じゃないの?」
「さぁ...皆はどうかな知らないけど、俺は違ったよ」
「何かあるのかな? 多分知らない事だよね? 話してくれる?」
「話してなかったっけ? でも、つまらない話だから...」
「面白いかどうかは問題じゃないでしょ? だって、勇気の事知りたいじゃん?」
「ああ、そうなのか...うん。ありがとう。 じゃあ.... 俺もさ昔はちゃんと学校行ってたんだけど、その時に引きこもらなかったのが不思議なくらいクラスに居場所なんて無かったんだよね。 学校に行ったら下駄箱に上履きは無いし、廊下中探して見つけたら教室に行くと廊下に椅子が出されてて、それを運んでる最中に鞄を蹴られたりするわけ。 椅子を運び終わると机を倒されたりして中の物が散らかって、近くにいた女子にぶつかると『汚い!!』って言われたりしてさ。学校に行く度に人を嫌いになる感じだった」
「なんか分からない状況じゃないかも... 私のクラスにもそういう子がいた... 何もできなかったけど...」
「それでいいと思う。自分に関わる人なんていないって思ってたし、関わって欲しくなかったよ。 一度だけ同情みたいな感じだと思うけど仲良くしようとしてくれた奴が居たんだけど、俺に関わったせいで虐められたみたいでさ。 『おまえなんかに関わったせいで俺も酷い目にあった。全部、おまえのせいだ』って言われた事があった。よく考えればおかしな話だけど、きっとそういうもんだと思う。理由なんてなんでもいいんだよね。虐める事が面白いんだろうから...」
「先生とかも助けてくれないんだよね...そういうのは知ってる」
「教師なんて見えてない振りだけだよ。そういう奴らだからね。そんな中でさ、普段は全然話さないんだけど、放課後に隠された物を探したりしてると手伝ってくれる娘がいたんだよね。相手にも都合があるんだろうから最後まで付き合ってくれるわけじゃないんだけどさ。それに、そういう時じゃなくても『大丈夫?』って言ってくれた娘がいたんだよ」
「で? その娘に告ったの?」
「うん。そうだね」
「おおおお!! そしたら??」
「『なんで?』って言われたよ。『何で物探すの手伝ったりしてあげてるのに私に迷惑かけるわけ? あんたと仲良くしたら私まで何かされるじゃん。よく考えてよ。馬鹿じゃないの』って言われたよ。」
「......」
「まぁ、それが正しいと思うよ。小学校から中学卒業するまで3人くらいに告白した事あったけど、内容は違うけど同じ様な感じだったかな。だから今回は嬉しいんだ」
「なんで...告白なんてしたの?」
「友達なんていつ裏切られるか分からないし、親にも言えない。でも彼女って存在なら信用できる気がしたんだよね。それに彼女って存在がいる事で寂しさみたいなモノも違うと思ったんだよ。そういうのを紛らわす為に父さんの工場によく行ってたのもあるんだけどね」
「そっか... やっぱり、一人じゃ淋しいよね...」
「まぁね... だから高校に行かないくなったのも、駄目押しがあったからだったんだよね。只でさえも学校に行きたくないのに息抜きの場所も消えたら...って考えたら... まぁ、行けないよね...」
「勇気、可哀想...」
「可哀想とか言わないでよ。でも、こうして家に引きこもったから、2ちゃんねるを見つけて、声キモに辿り着いて、静香さんに会えたんだよ? それでいいじゃん」
「うん... でも...」
「いいじゃん。いいじゃん。今が楽しいから...それでいいんだよ」
「う...うん」
久々に沈黙だ。
最近はあまり無かったからこそ、重い気がした
「よし!! 私、これから勇気のうちに行くね!!」
「え!?」
「よし!! 荷造りしなきゃ!!」
「ええええ!! なになに!??」
「じゃあ!! 行くから!!」
スカイプを静香さんが切った。
僕っていうか、俺は意味が分からなくなった。
取り敢えず、部屋の片付けをするべきなんだろうか...
あたふたしてると、チャイムが鳴った。
誰か来た。
静香さん?でも...意味が分からない。
混乱した。
取り敢えず、部屋から出た。
すると、パソコンからスカイプの呼び出し音。
一層パニックになる。
取り敢えず、玄関が先だと思った。
階段を降りて玄関の前に行くと、
磨りガラスの向こうには大きな鞄を持った人が立っているのが分かった。
まさか、本当に静香さん?
急いで玄関を開けると...そこにいたのは郵便屋だった。
今日は1日だった。
父を殺した男からの現金が届く日だった。
現金を受け取ってサインする。
その封筒を見る度に苛々と共に父さんの事を思い出す。
憂鬱な気分と共に...
居間のテーブルに封筒を置くと部屋に戻る為に階段を上る。
すると、部屋からまたスカイプの呼び出し音が鳴っている。
急いで部屋に戻ってパソコンの前に行くと発信源は静香さんだ。
「にゃはは♪ ビックリした??」
「はぁ....」
「どうしたの?? 何かあったの?出ないからどうしたのかと思ったよ?」
「静香さんがスカイプ切ったら郵便屋が来たんだよ。それでかなり焦った」
「あはははは。それはビックリするね」
「本当にパニクったよ」
「いや、今日は4月1日だよ。なんか釣ってみたくなったの♪」
「ああ。そっか...全然気づかなかった。でも、嘘で残念かも...」
「誰も全部嘘だなんて言ってないよ?」
「ん?」
「今は行けないけど、気持ちに整理ができたら勇気が来なくても私は会いたい。だから、会いに行くよ。いつか... 絶対に」
「そっか...ありがとう。じゃあ、その時までに部屋は綺麗にしておくよ」
「うん、お願いね♪」
「あ! 本スレにDJ来てるよ!」
「はいはい。ないない」
「いや、本当に」
「ああ、本当だ聞こう!聞こう!!」