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外伝 SIDE:フリード

「……疲れた」


どうしても言葉がもれるのをめられない。

人との距離を測るのが得意だとわかったのは、いつだったか。

どう行動すれば痛い思いをせずに済むのか、どう言葉を返せば空腹で夜を明かさずに済むのか、気が付けば、軋轢を生まないで済むその一線をはかる術が身についていた。

それは社会でも非常に役に立った。どういう言葉を投げかければ相手の反感を買わずに済むのか、押すべきか引くべきか。

それでも、見えないものにはどうしようもない。

地道にやるしかないとため息をつき、もう少し書類を見直そうとして、寝なくてはだめと叱る義妹の声が聞こえたような気がした。

苦笑しつつ、机へ向かいかけた足をベッドへと従わせる。

横になってもなかなか寝付けなかった。

ここまでやればもう十分ではないかと、もう一人の己が囁く。

フォーロマンの血が流れていないのは動かしようがない事実だ。正統な後継者を推す声は嫌でも耳に聞こえてくる。

土の祝福を受けた、まさにフォーロマンに相応しい娘。

仕方ない。純血ではないのだから。そして彼女になら悔しくはない。

仕事は万事順調だった。一つのミスも漏らしもない。

それなのに報告を受ける義父の表情は変わらなかった。失望しているのだろうか。

だが、どうしたって覆せないものはある。幼い頃から山ほど見せつけられてきた。

以前、同じように夜遅くまで仕事をしていたのを見つかって力づくでベッドに押し込まれ、彼女が枕元で歌ってくれた子守唄を思い出す。

「愛し子の眠り」という耳にしたことのないタイトルは、彼女の口から流れ出た歌詞でその理由に思い当たった。

愛しい子、愛しい子、と優しく呼びかけるその歌。安らかな夢と、穏やかな子の未来を願う、その歌。

自分には縁のないものだった。

どうしても手に入らないものはある。願っても仕方のないものが存在する。


「……ローズ……」


彼らの言うことも分かるような気がした。

正しい血というものがあるのなら、きっと妹にこのような想いを抱く自分はろくな人間にはならないだろうから。

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