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End : ユーリウス

「で、殿下、なぜ部屋の鍵をおかけになったのですか……?」


「誰も入ってこられないようにするためだろう。お前は見られたいタイプなのか? 理解は及ばないが、意見としては受け取っておこう」


いや、何ひとを痴女扱いしてるのよ……。

彼に簡単に抱えあげられる。その拍子に、ヒールが片方脱げてしまった。

拾うこともなく置き去りにして、続きの部屋へと私は運ばれる。

そこは彼の寝室だ。

光沢から絹であろう、肌触りの良いシーツの、広いベッドの上に下ろされる。

動く間もなく、殿下が覆いかぶさってきた。


「ローズ、俺がお前を帰すと思ったか?」


「け、賢明で紳士にあらせられる王太子殿下でしたら、きっと……」


彼は悲しい顔をして首を横に振る。


「残念だな。まだ俺のことが分かっていないようだ。これは、しっかりと教え込む必要があるようだ」


「父が心配すると思います……!」


「大丈夫だ、先ほど使いを送っておいた。ぬかりはない」


ああ、真っ青な顔をしている侯爵が目に浮かぶ……。そして帰宅したら、何があったのか子細に説明を求められるだろう。

これから起こるであろうことを父に言えるわけがない……!

金魚のように口をはくはくとさせるしかない私を見て、彼が笑う。

緩く波打つ私の髪を掬い、そこにキスが落とされる。

指が、私の輪郭をなぞるように滑っていく。

彼の顔を見ていられなくて、視線をずらした。

目に入るのは、緩められたシャツの間から見える首に、鎖骨。くっきりと浮かび上がった、男性の骨格だ。首から肩に至るまでの筋肉によるなだらかに隆起したライン、背中も私とは厚みが全く異なる。

この世界では女性は大体結婚まで純潔を守ると聞いていたから、まさかこんなことが本当に自分の身に起こるとは思ってもいなかった。もしや、守っているフリをしながら、みんなもこういうことをしているのだろうか。

ぎゅっと目をつむり、私は身を固くする。

けれど、いつまで経っても何も起こらなかった。

恐る恐る目を開ければ、彼が真剣な顔をしてこちらを見つめている。


「ローズ、これが最後のチャンスだ。もし、お前が本当に嫌なら、部屋を出て行くことを許す。ただし、俺ももう2度とお前に会うことはないだろう」


この人は強引なくせに、最後の最後にはいつもほんの少しだけ余地を残す。

こういうところがずるい。

いっそ巻き込んでくれれば、戸惑う必要もないのに。


「――……わ、わたくしとて本当に嫌でしたら、蹴り上げてでも抵抗しております。ですから、その、嫌ではなく、ただあまりにも性急すぎて心の準備が……」


だから続きは今度にしない? とそう言いたかったのに、殿下の顔を見て言葉が途切れた。

彼はとろけそうな笑みを浮かべていた。

その笑顔を前に、私は何も言えなくなってしまう。


「蹴りか……たしかに、お前の足技は見事だったと聞いていたな……」


かつての王妃膝蹴り事件のことを言っているのだろう。


「そのことはお忘れください」


彼が声を上げて笑う。

指が私の胸元のリボンをほどいていく。その動きに、ためらいは一切ない。

初めてのことに少し震えている私の手を彼が優しく握りしめた。

先ほどとは違う、熱をはらんだ視線。

翠玉の瞳に見つめられ、胸が高鳴る。

改めて、この人のことが好きなのだと思い知った。

甘く、口づけが交わされる。


「ローズ……俺に、もう一度恋をしてくれて、ありがとう」

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