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55 エピローグ
式が終わるとすぐ、半ば抱えられるようにして父と兄に馬車に乗せられた。
2人は話をする必要があるのだとなぜか会場に残り、私一人が帰宅の途についた。
夜の帳がおり始める時刻。
舗装された道を行く、馬のひづめの音だけが響いている。
それを聞きながら思った。
この世界は、どこまでがゲームの設定なのだろうと。
ゲームの裏でも、法案化の駆け引きがあったのだろうか。
ゲームで、シシー様があれ程簡単にヒロインに婚約者の地位を譲ったのも、もともと不要のものだったからなのだろうか。
見上げれば、星ひとつない夜空に月だけがぽつんと浮かんでいる。
他に明りがないせいか、いつもより月が光り輝いているように見えた。
ずっと疑問に思っていた。
私が2つの加護を持っている理由。
たとえば、もう一人の前世の私が、この世界に目覚めた際に加護を受けたのだと仮定したら、どうだろう。
土の加護を受けたオールドローズのわたくしと、月の加護を受けた前世の私。
それが、混ざり合って記憶と同じように2つの加護となったのだとしたら。
「月の加護のおかげで、オールドローズは悪役令嬢としての運命を改変できた……とか?」
返ってくる答えはない。月はただ静かにそこにたたずんでいるだけだ。
けれども、ようやく長い夜が終わりを告げようとしている。
ただ、それだけは確かだった。




