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20 冬の終わり

冬休みも終わり、最後の学期がやってきた。

日本のゲームだけあり、ある程度の生活水準だけでなく暦なども元の世界そのままでたいへんありがたい。

この休みの間に兄は学院寮を引き払い、屋敷で生活を共にしている。

もともとローズが寮に行けと言い放ったからと聞いて、本当に申し訳なく思った。黒歴史がまた一つ発掘されたというわけだ。

それにしても困った。

今日は美味しいムニエルのはずなのに、全然味が分からない。

そもそもいつもの通り、リィンと食堂で食べているところに兄が現れた。

相席を希望してきたので当然それを了承したところ、隣に兄が座ると同時になぜか空いているもう片方にセルジュ様が座った。本人はすました顔で空いていたからとか、公爵家の占卜でこのテーブルが吉報だったからとか言っているが、ここは相変わらず私たちしか使っていないので、他に7席ある。なのに私の隣に座った。

しかも、兄とセルジュ様は仲が良いようで、発布される法律から懸案の草案、特産品のお酒までいろいろ話をしているものの、二人を分断するように居る私の前を行きかうのは言葉だけで、視線は私で止まっている気がする。

おかしい。

右からは兄、左からはセルジュ様をひたすらに感じる。

居たたまれず、兄と席を交代しようかと申し出たら、やんわりと断られた。

せめて二人の邪魔にならないようにとすこし後ろに下がったら、行儀が悪いと笑顔で戻された。

セルジュ様の気持ちは分からなくもない。公明正大であらんと自らを律し生きてきた人物だ。

そんな人から見て今まで唾棄すべき人物だと思っていたのが、実はそうではないとわかれば(あながち間違ってはいないのだけれど)、己を恥じ、悔いて正常な関係を保とうと焦るのは理解できる。だがいかんせん、距離が近すぎる。


「フォ……オールドローズ様、ムリだと思います」


リィンが苦笑しながらいつもの通り家名で呼ぼうとして言い直す。

兄もおり、ややこしいので名前で呼んでほしいとお願いしたのだ。

ついでにいうと、セルジュ様にはいつの間にか名前を通りこして愛称で呼ばれているのだが、突っ込むタイミングを失ってしまい、もうそのままになっている。

照れながら、かみしめる様に何度も私の名前を繰り返すリィンの様子はとても可愛らしかった。

わかるわ。ローズも友達がいなかったもの。名前を呼びあえる仲間って素敵よね。


「……あっ、すみません。教授に呼ばれているのを忘れていました。お先に失礼します」


リィンが食器を下げて、バタバタと出ていく。

最近彼は特に忙しそうだ。

午前中も授業途中に教授に呼ばれて出ていった。何か問題が起こったわけではなさそうだったので、訊かずにいるが、しばらく彼には気を配っておこうと決めている。

それよりも、リィンに置いて行かれてしまった。


「――と思うのだが、ローズ嬢はどう思われるだろうか?」


「ローズはこちらの方が好みだ。一緒に買い物にも行っているのだから間違いない」


……もう、勘弁してください。



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