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2 プロローグ 2

『恋と魔法のKingdom』


魔力を持つ者、主に貴族が入学できる王立魔法学院を舞台にした女性向け恋愛シミュレーションゲーム。略して「恋キン」。

かつての私が遊んでいたゲームであり、今私がいる世界だ。

魔力に目覚めた平民の主人公が、この学院に編入することから物語は始まる。

出会う攻略対象は3人。

王道中の王道・金髪翠眼のユーリウス王太子殿下、将来は王国騎士筆頭という大出世を果たす平民で獣人のリィン、甘いマスクと言葉で翻弄する2つ上の先輩レオナード男爵。

そこに主人公のライバル、気位の高い悪役令嬢として登場するのがオールドローズ・フォーロマン侯爵令嬢。


「……やっぱりわたくしね、どこからどう見ても」


そう。屋敷に戻り、部屋の鏡で何度も確認した。腿の辺りまである緩くウェーブのかかった赤紫の髪に、紫色の瞳、長いまつ毛。豊かな胸にくびれた腰。目鼻立ちもはっきりしており、とびきり美人の部類には入るが色と相まってきつい印象を受ける。実際、性格もきつい。

貴族至上主義のローズ、いえ私は、「平民などこの学院には不要」と特待生として編入した主人公をあの手この手で追い出そうとする。また、同じく平民かつ獣人であるリィン、男爵という下層階級のレオナードにも辛く当たる。更に、殿下に恋をしているため、彼のルートのヒロインには容赦しない。

しかし、ラストの舞踏会で度を過ぎた数々の行為が攻略対象者によって暴かれ、学院どころか家からも追放となり、最後には消息不明と語られる。全年齢対象だから濁しているが、たぶん死んだ。蝶よ花よと育てられたお嬢様が一人で生きていけるわけがない。

ちなみにシシーという王子ルートにのみ登場する、眉目秀麗才色兼備と完璧王子に引けを取らない脇役の婚約者もいるのだが、彼女は慎ましい性格で主人公が殿下と結ばれた場合、「おめでとう」と二人を祝福して自ら婚約の破棄を願い出る。悪役どころかライバルですらない。

一方、最後までローズはヒロインはもちろんシシー様をも押しのけて、我こそが運命の相手であると猛アピールする。

画面越しにも痛々しかったのに、今やあれが自分の未来かと思うと泣けてくる。


「いいえ。泣いている場合ではないわ!」


改めて状況を整理しなくては。

今はまだ学院に入学して3か月ほど。主人公の編入は2年だからあと半年以上ある。さらに追放されるのは年明けの成人の儀。大丈夫。1年以上ある。時期的にはまだ余裕のはず。

そして次に、攻略対象者の情報。


ユーリウス・ウォーゼン王太子殿下

ウォーゼン王国の王子様。第2王妃の息子だが、正妃はすでに没しており、また正妃には娘しかいないため継承権を持っているのは彼のみ。容姿端麗で婚約者がいながらも女生徒どころか国中の女性のあこがれの頂点にいる。

性格はノーブルらしく真面目で穏やかな笑みを絶やさず、ヒロインとは、最初は平民を気遣ったシシー様を通して交流することになる。が、よくある設定のいわゆる2重人格。嘘を見抜くのが得意で、本性は常に人を役に立つかどうかで判断している俺様系。

ちなみにローズは全く気付いていないが、王子にとって私は群らがってくる羽虫の一つという認識でしかないはず。鬱陶しい、と記憶の中の目が語っていた。


獣人のリィン

ゲーム開始時点では彼はローズの怒りを買って退学に追いこまれたため、学院にはいない。しかし、たまたま暴漢から救ったのが理事長だったのをきっかけにもうひとつの学び舎、騎士養成学校・通称「狼の門」に通うことができており、ヒロインとは街でごろつきに絡まれていたところを助けたことから出会いが始まる。以降は街で会うことでイベントが進行していく。正義感にあふれ、優しく、誰に対しても公平に接する。

天涯孤独で突然学院に連れてこられたヒロインと境遇が似ており、身分という差別が存在する不条理な世界で、2人がお互いを支えあい心を通わせていくストーリーは本当に心が温まった。


レオナード・アスター男爵

この年ですでに爵位を継いでいる。飄々としており、つねに気だるげで女性との悪いうわさが絶えない、いわゆるフェロモン系。会話に垣間見えるあの厭世的な色気がやばいと一部熱狂的なファンがいた。

他の2人がたまたま出会ったという設定のイベントが多い中、このキャラだけは積極的に自分から追っていかないといけなかった。選択肢もクセがあり、好みもうるさく、なかなか攻略するのが大変だったのを覚えている。


この3人+主人公に近づかない。

関わらない。そしていじめも差別もしない。

いじめなどはもちろん人としての当たり前のことだし、非難を浴びた攻略対象の少なさも忌避すべき対象となった今では大変ありがたい。

そもそものきっかけである今日目覚めたおかげでリィンの頭は踏まなかったし、退学にもしなかった。殿下からはすでに嫌われているため、こちらが行動を起こさない限り接触は限りなくゼロに近い。なかなか良い傾向だ。

そして最後の一人、レオナードに至っては学年が二つも違うお陰か会ったこともない。ありがとう、レオ様。今後もどうか卒業するまで、ご縁がないままであってほしい。


「いける……いけるわ! 明日から気配をひそめ、息を殺し、平穏に学院生活を送りきってみせるわ!」

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