プロローグ0-2 仕事をするベガとアルタイル
3話目です。風呂敷をひろげていきます。
それからの俺はリリエルから転生先の世界について教えてもらうことになった。
どうやら異世界の名前はファタル。ご想像通りの剣と魔法の世界であり、多種族が生活する惑星らしい。一部科学も発展しているが基盤となっているのは魔法ということ。
そして他の転生者、転移者も存在しており目立った問題もなく生活しているらしい。
まとめると中世欧州の様な時代にエルフ、ドワーフ、魔族、人族、獣人族等々といった多種族が生活しており、神が実在する。そして神の祝福と魔法が根付いている当にファンタジー世界である。
そこで俺は転生して生きていく。正直不安しかない。この手の話は空想だったとしても物語でよく描かれている、力が全てであり、力なきものは排他される。つまらない人生を送ってはきたが前世でも力は必要だった。それは金であり人脈、学歴といったものだ。
しかしこの世界は物理的な武力も求められる。多少の武の理は分かるとは言え所詮はおままごとだろう。小説の中には武を嗜んでいたから強いスキルが云々等あるが俺はそうは思わない。生物を殺める覚悟と技量は別物で現代社会に生きていた俺にはそれが当然の如く全く備わっていないからだ。
はたして生きていけるのか説明を受けている内に暗雲が俺の心を支配しようとしていた。
そんな俺の心の声を聞いたリリエルが「安心して。大丈夫だよ。」と一言発した。
「カー君の不安は間違いないよ。だからファタルに生きる人達には神の祝福が与えられるの。勿論カー君には私からプレゼントだよ!それ以外のスキルや魔力等のステータスは自力でつけて貰わなきゃいけないから自己鍛錬は忘れずにね?」
ふむ。どうやら祝福はリリエル本人から貰えるらしい。スキルや能力値って事か?は自力の鍛錬あるのみっと。よし理解した。
「そうしたらえっとね、魔法の世界だしやっぱり賢者とか魔導王?特殊だけど並列思考とかがいいかな?でも待って!カー君に死んで欲しくないし不老不死者もいいかも!キャー!そしたらカー君と一緒にいられる!それもいいかもね。あとはカー君は剣術習っていたから剣匠で自作した剣で剣神で無双してもらうのも必要かな。他にはスキルもいっぱいあげちゃうね♪そうだね~魔力限界突破とか全魔力支配とかとか!?ついでにカー君に剣でかっこよくキめてほしいから断空とかいいかな♪いいかな♪後は―――」
「まっ!待ってくれ!気持ちは嬉しい!リリエルがそんなに想ってくれている?のもわかる。だけど俺は罰を受ける身だ。そこまでしたら罰ではなく寧ろボーナスだろ?」
俺は止まらないリリエルの暴走?を止めるのが精一杯だった。初恋の相手とはいえなんと情けない。しかしリリエルの問題発言はこれで終わらなかった。
「むぅ。たしかに罰だもんね。与えすぎはよくないね。でもカー君は私の旦那さんだし多少融通が利いちゃうんだよ?」
ん?
「ん?」
今なんと?
「だからぁ!カー君は私の転生神リリエルの旦那さんだから融通が利くんだよ」
うん。どうやら神様と夫婦らしい。親父お袋、俺神様と結婚してたわ。テヘペロ
「何だとおおおお!?どういう事!?何時?結婚!?リーちゃんと!?混乱が混乱しているぅ!」
「あれ?言ってなかったかな?七夕の短冊の願い事ってね神様へのお願いなんだよ?私神様だし、当時の神様に掛け合って夫婦になる事を許して貰ったんだよ!もう、大変だったんだからね?それに言ったじゃん!『カー君のお嫁さんになる!カー君は私の旦那さんね!』って!」
マジかよ!「うん。本気」ベガさんアルタイルさん何やってんですかねぇ!これでわかった事がある!
みんな・・・・・・七夕は・・・ガチだ。
「ってことは・・・・・・俺の記憶が消えなかったのはその願い事が原因ではなかろうか?まぁ今となってはいいんだけど。」
「あっ・・・」
リリエルさん、今、貴方、察したね?
「うん。ごめんね?テヘペロ」
NOォォォォォォォォ!でもまぁ全て繋がったわ。そういうことか。
状況整理が進むね!落ち着いてきた。
さて、俺がすべきことは祝福を貰うこと。と改めて挨拶か。
「えっとだな。リリエル、これから夫婦でもよろしく?」
「フフ。末永くよろしくね私の旦那様!それに一夫多妻の世界だし何人も囲っても大丈夫だよ!」
あーもう。元々震える程の美人が笑うとこんなにも可愛いものなのか。たとえ数ヶ月の付き合いだったとしても嬉しさしかないね。うーん俺ってチョロい。
それにこれからの人生何があるか分からないけれどハーレムなんて考えてないしな。
「まぁ、ハーレム云々は置いておこう。疑問は尽きないが祝福の話を頼む。」
「そうだね。どうする?モリモリが嫌ならカー君が選んでみてよ。大体は適応できると思うよ。」
有難いね。持つべきは女神ってか。そしたら~
「こんな感じで頼む。」
「え?これだけ?他の転生者より、ううん。ファタルに住んでいる人達の中でも弱い部類になっちゃうよ?」
確かにそうなのかもしれないけれど、別に人を相手に切った張ったを常道にしていくわけではないし、少なくとも自分自身の安全さえ確保できればそれでいい。守るべき相手は見極めるつもりだ。手の届く範囲だとか誰も彼もを救ってみせるなんて望んでいない。リリエルさえ守れればいい。
だけどそれは下界の俺には無理があった。なぜならば神界と下界は特定の条件を満たさない限りお互いに干渉できないからである。
それにリリエルの夫であるというのは『あの日』から神界では周知の事実らしく手を出してくる輩はいないという事。ならば高望みはせず自分を鍛えればいいことなのだ。
「リリエルが言うならそうなんだろうね。だけど考えてみてくれ。最初から強かったら何も意味がないんじゃないか?前世の俺が腐っていたのは『何もしなかった』からだろ?やり直しではないけれどその為の機会を与えてくれたなら、ちゃんと正面から受け止めてみたいんだ。だからこれでいいんだよ。」
「カー君がそこまでいうなら何も言えないかな。最後の確認だけど本当に『転生先の魂と共存し転生先の宿主が死亡した場合その肉体を引き継ぐ事』と『気の獲得者』だけで大丈夫?」
「あぁ。それで頼む。祝福やスキルだけが全てじゃないし、祝福は『気の獲得者』リリエルとその・・・なんだ。伴侶ってので十分だ。話しを聞く限りスキルなんて後からでも手に入るんだろ?ならばスキルは必要ないかな。」
そう答えた俺にリリエルは頷いてくれた。
祝福とは神からの贈り物であり、魂に定着されるものらしい。
それが例えば『剣聖』であれば剣術スキルの成長度合いや獲得難易度、威力が通常の剣術スキル持ちより遥かに強いとの事。
つまり『祝福』がどれだけ強力であり人権であるかってことである。弱肉強食の色が濃いファタルならではであろう。
殊更、説明を受けたにも関わらず選んだ内容というか条件がどれだけ貧弱か分かる。
しかし転生するという事は本来の持ち主の魂を押し出して俺が入るようなものだと思っている。いくらリリエルとの縁があるとはいえファタルにおいて地球産の俺は異物でしかないのだ。ならば、転生先の人間が死亡した場合に俺が其処から引き継げばいい。勿論何事もなく大往生してくれればそれに越したことはないが。
故にすぐに転生するのではなく、彼の魂と俺が共存する形で転生させてほしいと頼んだわけだ。転生先の主人が死なぬようなんとかすればいい。兄となり父となり見守ろうと思ったんだ。
そして『祝福』気の獲得についてだ。
気を獲得するには気の存在や概念を知らねば到達は難しく、共存共生を願った以上獲得する為の修行に何年も掛けなければ習得は出来ない。平和に過ごしてもらえれば無用なんだが、何か起きたときの時間稼ぎ等に繋がればという保険である。
宿主が普通に剣でも魔法でも練習を積み重ねてくれれば気がつくことはないだろうし大丈夫だろう。
「やっぱりカー君は変わってないね。優しすぎるよ。だから大好きだし、伴侶になる事も許してもらえたんだけどね。でもそこが良い所でもあるし悪いところだよ?もっと自由に、身勝手に生きていいのに。」
どうやら縁を結ぶにあたって色々あったらしい。そこは機会があったら聞いてみたい。
しかしながら言うほど俺は優しくない。本当に優しいなら宿主と共存共生せずに消滅を選ぶし、消滅しないなら『祝福』や『スキル』をモリモリのチートにしたであろう。
それを選ばなかった。きっと俺はは我侭なんだと思うぞ。
「フフ。そうかもね!ずっとここでお話ししていたいけどそろそろ転生の儀を始めないとね。私もお仕事サボっていたら怒られちゃうしごめんね?」
「こちらこそ長く引きとめてごめんな。嬉しくて楽しくてな。それじゃあリリエル。頼むよ。」
「わかったよ。それでは南條華蓮。貴方はこれより、世界ファタルに転生します。場所はザイル帝国―――」
どうやら転生が始まったらしい。少しずつリリエルの姿が見えなくなっていく。
今世では前世のような辛くて苦しい思いなんてしないよう精一杯に生きてみよう。俺一人の人生ではないけれど無念に沈まないように・・・・・・
「―――彼の者に祝福在れ。・・・・・・がんばってねカー君」
もう何も見えなかったけれど、最後の言葉聞こえていたよ。いってくるよリーちゃん。そしてありがとう。
白より白く、そして何も聞こえなくなり意識は暗転していった。
「行っちゃったなぁ。まぁ伴侶の祝福でいつでも覗けるし。さてお仕事がんばらないとね!」
「どうやら旅立ったようだな。して転生神リリエルよ。何故お主は真実を告げなかった?」
「創造神様・・・・・・視ていたのですね。いいのです。きっとカー君に伝えなくても彼は知り得てしまう。それがファタルの常識になっていますからね。」
「ふむ。たしかにな。我等は見守るしか出来ぬ故な。彼の者には期待させてもらおうかの。」
「ええ。仰る通りですね。」
「して転生神リリエルよ。お主いいのか?彼が他の異性と関係を持つのはの」
「ん?別にいいですよ?彼は強い。気付いていないけれど魂の根底が強い。そしてなによりも美しいのです。だから私の伴侶となりえました。だから他の雌が近づいてもそれは仕方のないこと。しかし、私に届きえないのなら排除いたします。」
「ホッホッホ。怖い怖い。これだから邪神なんて呼ばれるのだぞ?」
「私だけではありませんでしょう?起源の神は皆邪神と呼ばれてしまっていますからね。」
「そうであるな。我等家族の祝福も直に馴染むであろう。」
「え?」
「ん?」
「創造神様?いえ、お父様?今何と?」
「我等家族の祝福も直に馴染むであろう?」
「あーそういうことですか。皆視ていたのね!もう・・・カー君ごめん。チートになっちゃったかも」
「ほっほっほ。よいではないか、よいではないか。婿殿に幸在れ。」
「カー君・・・がんばってね」
あとがきタイム!ここまで読んでくださりありがとうございます。あとがきに全力を出している気がしなくもない黄色い翁です。
さてさて。カレンは転生してしまいましたね。
次話から現地入りしますが・・・驚愕の事実を教えましょう。
次話もプロローグ!0は終わり1となり物語は動きだす?
TRPGが好きすぎて導入がっつりやってしまうのですよ。
「人の気持ち、心の大切さ」をカレンで表現していく上で、リリエルとの会話だけでは動機が弱いかなと思った所存。故にリリエル以外の外部的要因で、前世にて「何も出来ず」「何もしなかった」カレンが今後どのように意思を固めていくのかを次話より楽しんでいただければなと思います。
最後にもし続きが気になる!面白かった!と思っていただけましたら、評価とブックマークをよろしくお願いします。
それではまた会いましょう。