歩みだす一歩 戦い方は一つ・・・・・・じゃなーい
緩めの回です。とはいえ大半が会話・・・・・・
あとがきでお会いしましょう。
俺は光の中から出てきた五人の元勇者達を睥睨する。
代表として喋った男が恐らく元勇者だろうか?伝承通りなら250年前に召喚されたはずだが・・・・・・見た目が二十歳前後にしか見えない。腐っても神を簒奪したから不老にでもなったのか?
茶髪の高身長、好青年・・・・・・まぁすごくイケメンってやつだな。
知った顔が一人いるな。俺達はあの時顔を見たからな。なぁラヴィエルよ。
彼女は金髪ロングストレートのモデル体型の女性だった。
あいつが俺達を、キーラやクレア、父さんに母さん、ポラリスの街の人達・・・・・・全員を狂わせた。
我慢だ。今は耐えろ。
「あ、貴方が勇者達を妨害している新たな邪神という事は分かっています!ここで私達が貴方を倒します!」
「あん?誰だおまえ?」
「―――ッ!!」
いかん。神気の制御ができないまま威圧してしまったようだ。
しかしだれだ?黒髪ショートボブ、ロリ巨乳、垂れ目な感じが世の男性の庇護欲を加速させるだろう見た目の女性が、俺を邪神と呼び倒すとな?
「やめてくれないかな?彼女が何をしたんだ?君が僕達の世界を邪魔しようとするから急遽出向いたんだ。大人しく死んでくれないか?」
「お前は敵。」
「キャハハハ!こわいなぁ!あたしらに逆らう意味が分かってないんだね?」
「ウフフ。あの時の少年が邪神だったなんてね。ちゃんと始末しないとね。」
これだけで会話の余地が皆無だと気が付かされる。
茶髪のイケメンは論外。前髪が目元を覆って表情を窺い知れないが黒髪ちびっ子も、茶髪ポニーテールの元気っこ娘も傲慢で、ラヴィエルは問答無用。
揃いも揃って頭の中がお花畑のやつらか?250年も経っていながら精神的成長を全く感じない。カレン坊の方が遥かに大人だったぞ?
というか、敵視されるのは俺が喧嘩売ったからだとして・・・・・・何故リリエルたちはこんなやつらにやられたんだ?甚だ疑問である。
「はぁ。お前らのことは一度視ておきたかったからな。もう用済みだぞ。それとリリエルへの攻撃、もといエルフィア王国への攻撃を止めさせろ。」
俺は現在の神達を視る為に神気を暴発させ挑発を行った。結果釣り出す事に成功したのだが、視てわかるのは一人一人が最強ではないという事。それでも十分に強者であることに変わりはないんだが、人間の領域の最高峰って意味でしかない。
人外の領域に踏み込んでいない彼らの秘密は、五人で完成された強さだからだと知る。
リリエル曰く、「彼らに与えたチートが強かったの」の意味を知れただけで十分である。
そして一番重要な、エルフィア王国と世界樹攻略を止めさせること。リリエルを助けることもそうだが、何よりエルフの人達は何もしていない。静かに暮らしていただけだ。
「それは聞けないね。まして君は僕達の勇者と聖騎士を討ったんだ。聖騎士のリュウジなんて消滅させられちゃってさ。可愛そうだよね。
それにエルフ達は250年前僕達に歯向かったんだ。邪神リリエルを匿う事と合わせての天罰だよ。」
「そうだよ!折角ハジ・・・・・・創造神様が助けてあげようとしたのに無下にして逆らったなら当然だよ!」
「人間以外ゴミ。」
「キャハっ♪準備に時間掛かったけど当然の報いだよね!」
「私達の恩を無にしたのならどうなるか。カレン、貴方も知っているでしょう?」
口内に血の味が広がる。噛み締めていた奥歯から出血したらしい。
こいつらがいるから、エルフの人達が!カレン坊が!
怒りに暴れる神気を[気の獲得者]で無理やり押さえつける。
「そうかい。お前らのことは十分に分かった。たとえ世界を救った元勇者が同じ日本人だとしても、根が腐っているやつは世界が変わろうとクズ野郎ってことが十分に理解した。」
「え?」
「嘘でしょ?」
「夢を見すぎていたのかもしれない。こちらに来た同郷の者達ならば、元々平和な世界をより良く発展させ素晴らしい世界が出来上がるかもしれないと。争いはあるだろうがそれでも小規模で収束していたはずだ。
しかし今回貴様らが行ったのは、自分達が気に食わないから250年前の落とし前を人間国家を使って侵略という戦争を起こしたんだ。分かるか?この意味が。
きっと異種族。専ら魔族辺りは報復するだろうよ。よき隣人が人間によって滅ぼされたんだ。
彼らエルフも魔族も他種族も排他されようとも、その優しさ善意で耐え忍んで来たのを踏み躙った。
人間対全他種族という構図だ。世界の破滅に近づいたな。創造神様達?」
顔を青くさせる者、笑いを浮かべる者、無表情な者。それぞれの内心を語ってくれる。
だがこいつは違った。
「だからなんだというんだい?そのための250年の準備期間さ。彼らは僕らの善意を踏み躙り、あろうことか邪神を崇拝する。だから僕らと同じ勇者召喚が必要だったんだ。
当時最強の魔王と魔族が世界を真の意味で征服しようとしていたのを救ったのは僕達だ。
なら救った僕達が世界を纏め、よりよい世界にしようとしただけなのに彼らは反対し僕達の元を去っていったんだ。この世界の管理者、創造神として間引くことは必要だと思うんだよね。」
「そうかよ。クソ野郎。じゃあ―――消えろ。」
俺は一足のもとラヴィエルに切迫する。最初は貴様だ。能力は〈魅了〉ってことはこの眼で視た。得物もないなら好都合。ここで仇をとってやる。
踏み込んだ先、間合いは十分。右薙ぎ一閃。
ラヴィエルの純白のドレスを引き裂き、刀が左側へと奔り抜けた。
「なんだと?」
「うふふ。残念でした。ありがとうね治癒の神様♪」
確かに斬ったはず・・・・・・治癒でそこまで回復できるのか。しかも聖騎士と同じ無詠唱か。
舌打ちしつつその場を離脱し元の場所に引き返す。
「君は失礼なやつだな。同じ日本人だし一回くらいは許してあげるよ。さて、君に質問だ。
その神気。どうやって手に入れた?そして君の権能は誰の権能だい?
今まで受け答えしてあげたんだからそれくらいは答えてくれてもいいだろう?」
余裕綽々の表情に俺は苛立ちを隠せない。
こいつらはリリエルたちの権能を手に入れられなかった。神の座という椅子だけ、肩書きだけしか奪えなかった。どのようにして奪ったか。
それは終始ニヤ付いているあの元気っこ娘の能力〈簒奪〉だろう。ニヤけているが目の奥は虎視眈々と獲物を狙う捕食者といっていい。
まあ伝えたところで信じてはもらえないだろうが、答えてやろう。
「あ?気が付いたら手に入れていたんだ。誰の権能?そんなものはしらん!この権能は俺の力だ。」
「冗談は止めてくれないかな?言ってくれたら王国への攻撃を神託で止めてあげてもいい。」
「彼、嘘ついていなかった。多分マジで偶々手に入れたと思う。」
チビ貞子―――目元が見えないロングストレートのちびっ子―――がなんかしらの魔法でも使っていたのか?とりあえず本当だし結果オーライだ。
「おい、ちゃんと言ったぞ!早く止めさせろ!」
「キャハハ!信じてたの?ばっかじゃね?」
このやろう・・・・・・俺が権能を使っていないことをいいことに調子に乗りやがって。
戦い方が一つじゃないことを教えてやる。
「うるさいぞ半裸痴女。はそう思わせておいて実は処j―――「まてまてまて!やめろー!」・・・・・・」
っち。この辺にしておいてやる。この眼が〈神化〉したあと便利すぎてな。
基本的には相手の持つ祝福やスキルが脳内に流れ込んできて解るんだが、集中すればその人の個人情報までばっちりだ。
例えば本当の名前とかな。
「さて。嘘はいけないな。嘘ならこれから権能を使って消し飛ばす。たとえここにいるお前らが半実体だとしても、消滅したら本体にも同様にフィードバックされたりとか・・・・・・な?
安心しろよ。俺はお前らと違って嘘はつかない。だけどな、将来お前らを始末するのは決定事項だ。」
視た時から知っていたさ。本来は下界に干渉できないはずなのに、どいういことか干渉してきている。過程は知りえないが結果として半実体であると眼が教えてくれた。
「っち。君は気に食わない。まさに僕達神に反するもの、邪神だ!」
「創造神様!ここで倒しましょうよ!あの邪神、私達の世界を壊すつもりだよ!」
「賛成。ここで倒す。私達ならできる。」
「ウフフ。気に食わないのは大いに賛同できるわぁ。やっちゃいましょうか。」
「ぶっころす――――///」
まーだ赤面してやがる。まぁ250年も・・・・・・その。なぁ?
にしてもだ。
「おい、だまれよ。治癒ビッチお前さっきまでそこの下半身に抱かれていただろうが。ちゃんと避妊はしとけ。チビ貞子!お前はなんつう下着つけていやがる!もっと清楚にいくべきだぞ。お前も避妊しとけ!
ラヴィエルは・・・・・・え。お前もs―――「「「やめろおおおお」」」・・・・・・おまえら歪みすぎだ。」
「え!ラブちゃんまじぃ!仲間ー!」
気が抜けるかもしれないが油断は出来ない。エルフィアは今も危険のままだ。
しかし仲間がいるだけでこうも喜ぶとは・・・・・・よかったな。
「おいどうなんだ。権能について教えてやろうか?そうすれば、半裸痴女、失礼。秋山友紀さんが〈簒奪〉でもするのか?それともラヴィエル、春風愛さんが魅了でもしてくるかい?
はたまたチビ貞子、冬木美琴さんが治癒ビッチ、夏川めぐみさんに魔力譲渡のバフをして封印結界で閉じ込めるかい?
なぁ教えてくれよ。下半身勇者、結城一さん?」
「「「「「!?!?」」」」」
一対五。半実体で余裕な元勇者達。神化しても限界は未だある。制御も出来ていない。長期戦は不可。
ならばこそ戦い方を情報戦にした。こいつらを始末できないのは心苦しい。リリエルやカレン坊、エルフ達の仇なんだ。だけど、俺はまだ弱い。
だから今は我慢してくれ。
「っくそ。情報が分からない以上僕達が幾分不利か。わかった。神託を下すから見てろ。どうせ嘘は見破られるんだろうから真に下すさ。」
「最低です!あの男最低です!」
「女の敵。鑑定しても視えない。最低。」
「ウガー!あいつぜってぇゆるさねぇ!だけどユキが仲間だったなんてなぁ!てかお前ら三人盛り過ぎてきもい!」
「キャハハ!アイちゃん仲間かー!ハジメ君のロリコンは今でもきもいわ。」
こんなやつらが神の座についていると思うだけで哀しくなる。
だが俺の殺意は十分。俺を救ってくれたこの世界の歪みが目の前にあるなら・・・・・・十分だ。お前らは要らない。
この世界の真実がこんな子供染みた茶番だったとはな、まさに「現実は小説より奇なり」ってところか。落とし前は付けさせてやる。
「我ら創造神の神託である。聞くがよい人の子らよ。ただいまをもってエルフィア王国並びに世界樹攻略を中止し国に戻るが良い。新たな邪神が生まれた。人類の危機である。邪神討滅の神託は追って伝える。よいな?これより―――」
くそが!やりやがった。新たな邪神の出現―――より一層動きにくくなる。
だが、ちゃんと神託を下したようだ。この眼便利だな。
さてあとは―――
「神託ごくろう。俺の権能について教えてやる―――ただし身をもってな。」
「な!?ふざけるな!嘘はつかないといっただろう!」
「あ?何勘違いしてやがる?俺は嘘は付かない。けどお前らを消し飛ばさないなんて一言も言っちゃいない。」
「最低です!やっぱり最低です!ミコトちゃんいきますよ!」
「了解」
俺は彼らの高まる戦意を無視し、制御を手放した膨大な神気が爆発する。
溢れた神気が彼らに当たったことを確認した俺は―――
「これでさよならだ。元勇者達、覚えておけ。俺を救ってくれたこの世界の敵であるお前らは絶対に許さない。椅子に踏ん反りかえっていろ。次、相対したときは必ず・・・・・・殺してやる。」
「ひっ!」
「大丈夫だメグ。ミコトも。」
「ん。」
「ウフフ、おもしれぇ!お前こそ必ず殺してやるからなぁ!」
「・・・・・・」
彼らの肉体が崩壊していく。聖騎士リュウジの時と同様に灰になりながら崩れ、彼らは姿を消した。
一息つく。が嘔吐感が走る。
「ガハァッ―――ゼェ・・・・・・・ゼェ・・・・・・」
脳が直接焼かれているかのような熱さと痛み、止まらない血液交じりの嘔吐、身体は震え、気を集めることさえ出来ず目の前が白と黒にフラッシュする。
耳も聞こえず、匂いもわからない。口から絶えず何かを吐き出していることだけ認知できる。
次第に寒さが襲う。意識を保とうにも全てが分からなくなり・・・・・・俺の意識は消えていった。
ここまでお読みくださりありがとうございます。黄色い翁です。
ちょっと長かったですが、元勇者、現神様(偽)の紹介を軽くしたくこの回を作りました。
あくまで軽くなので掘り下げることはしませんでした。
なのにこの文字数というね。反省。
ちょっと短いあとがきですが、この辺で失礼します。
それではまた会いましょう。黄色い翁でした。