歩みだす一歩 あ・・・・・・ありのまま、今、起こったことを話してくれ
15話です。会話パートでございます。
ではあとがきでお会いしましょう。
「ね、ねぇカレン君。あの人・・・・・・」
俺の隣にいるクレアも信じられないと声を震わせている。
クレアとの付き合いが長い為、俺がアークとセレンの実子ではないことを知っているし、部屋にある写真に写る両親の顔も、彼らが居ないことも知っている。
故に、目の前にいる女性に驚いていた。
うまく言葉が出てこない。転生したとはいえ、もし目の前にいる女性が実の母なら、彼女の実子カレンは死んでしまった。
自責、後悔、懺悔、複雑に絡まり言葉が発せない。
「その話は後にしましょうか。ここは未だ集落の外です。安全なところでお話ししましょう。」
そう言い残し彼女は進んでいく。
俺とクレアに選択肢はなく、エルフ達に案内され付いていくのが精一杯だった。
モンスターが跋扈し危険なポラリスの大森林。そこは祝福等の力があろうと無かろうと常に生死が付きまとう森である。故にポラリスは城壁とも言えるほどの外壁を築き民を、そして国を守っていた。
しかし案内されたエルフの集落、否。町には外壁も何も存在しなかった。
俺達は心の整理をしながらも案内に従って森を進むと、鬱蒼としていた木々が無くなり、拓けた土地に差し込む陽の光。柵が施されただけの田畑があり、その先には町と呼んでいい程に整備された居住地が建ち並んでいた。
理想と現実の違いに瞠目する。
エルフといったら高い木々の上に住んでいたり、ログハウス的な木造の自然溢れる生活をしていると思うじゃん?
俺の目には地面は砂地ながら綺麗にならされ、立ち並ぶ家屋はログハウスもあるが、石造りやレンガといったものもあるわけ。
近くを流れる川から引いたのだろう。小さな水路も整備されている。町だよこれ・・・・・・
「す、すごいねカレン君・・・・・・」
「あ、ああ。想像と全然違っていたし、なにより合理的な生活環境じゃないか。」
俺達の言葉が耳に届いたのだろうか。案内している男性のエルフの一人が声を掛けてきた。
「はは。驚いたか?魔除けの結界で安全を確保して、出戻り組や魔族たちの話を聞きながら集落を発展させたんだ。ちょっと前、といっても50年くらいだったかな。それくらいから開発したんだ。それまでは想像している通り、ログハウスや木の上で生活してたんだぜ?」
自然を愛するエルフというイメージが崩れていく。
「今は町の下に穴を掘っていてな。使用した水だけをそこに通して、清浄化の魔法で綺麗にしてから森に返す計画を進めているんだ。」
返してほしい。俺のイメージ。というか夢。
俺達は出歩くエルフの人達からの好奇の視線を浴びながら、大きなログハウスへと案内され客間に通された。
「さて。お二人ともエルフィア王国にようこそ。ここはエルフィア王国の外れの名前の無い町になります。私はこの町の相談役のアカリ・エルフィリアと申します。以後お見知りおきを。」
俺とクレアは二人並んでソファに腰掛け、対面でご丁寧に挨拶するのは、亡き実母に瓜二つな女性アカリ・エルフィリアだった。
「初めまして。私はカレンと申します。」
「は、初めまして。私はクレアといいますっ!」
「ふふ。そんなに緊張しないでください。おおまかな理由はリリエル様からの神託で存じております。改めてここに来た理由を簡単でいいからお願いしていただけるかしら?」
緊張するなというのが無理がある。エルフィア王国にエルフィリアという姓。十中八九やんごとなきお方である。
それにリリエルからの神託という一言に反応してしまう。
しかしそれは後だと棚上げを決め込む。
「かしこまりました。私達が大森林を進んだ訳ですが―――」
俺とクレアはポラリスで起きたこと、ラヴィエルのことと勇者に追われ撃退したこと、リリエルに教えてもらったことを簡潔に説明することにした。
そのさい俺が転生者というのは伏せてだ。
「アークさんとセレンさんがそんな事を。リリエル様の言うとおりでしたね。
かしこまりました。私、アカリ・エルフィリアが責任を持ってあなた達を保護したいと思いますが異存はございますか?」
「ふぇい!?」
急な保護発言にクレアが変な声を上げている。鵜呑み、諸手を挙げて感謝したいところだが―――
「フフフ。かしこまりました。あなた達少し席を外しなさい。この方達は大丈夫です。」
意味ありげな微笑みと共に、御付の人達を下がらせる。
「これでいいかしら?聞きたいことがあるんでしょカレン。私もちょっと堅苦しい話し方は得意でないからちょうどよかったわ。」
この人も俺の心を読んでくるだと?
「あなたは顔に出すぎよ?ね?クレアさん?」
新事実だ。ポーカーフェイスのつもりだったんだが・・・・・・それよりクレアが緊張しっぱなしである。
そんなに高速で頷いていたら首が取れるんじゃないか?
「以後注意します。そうですね。アカリ様はやはりこの国の?」
「ええ。そうよ。兄の王位継承も終わったし今は地方の自治を助ける仕事をしているわ。言ったでしょ?相談役って。
貴方が聞きたいことってそんなことなのかしら?」
御見通しってわけね。まあ最初に会ったときのことがあるから当然であるか。
「いえ。あくまで確認の意味を含めておりました。母は・・・・・・―――」
「ええ。そうね。カレンの思っていることは正解。私は貴方の母、ヒカリ姉様の双子の妹よ。つまり・・・・・・」
「カレン君が王族!!!キャー!凄い!カレン君が本当に王子様だった!」
「ク、クレア落ち着いて!あとでいっぱいトリップしていいから!」
クレアを宥めつつ話を続ける。
「そう・・・・・・ですか。叔母様、やはりお母さんとお父さんは・・・・・・」
「ええ。そうね。二人はもういないの。ごめんなさいね。瓜二つだったから驚かせてしまったものね。
でも安心して。ここには敵はいないわ。
貴方。いえ、カレンは姉様の子供だけど、つまりは私の子供ってことでもあるのよ?」
ん?
「大好きなヒカリ姉様!亡くなってしまったけれど、姉様は私の胸の中で今も生きている!姉様がカレンを産んだ。姉様と私そっくりな黒髪!瞳は違うけれど顔の作りは姉様そっくり!つまり瓜二つの私達、遺伝子上ほぼ同列の姉様が産んだってことは私がカレンを産んだってこと!わかるかしら!?
カレンは私の子!だからママって呼んでいいのよ?姉様と違うって?違いなんて見た目上どこにも無いわ!あるとすれば私はまだ処じ―――」
「わかりました!大丈夫です!本当に心から想っていただけて恐悦至極でございます!!!!!」
あっぶねー!この叔母は何を言い出すかと思いきや、いきなりトップスピードで置き去りに。しかも乙女とな?いやいや!違う!
お母さんがヒカリって名前で、目の前にいるクレイジーサイコ―――ヒィッ!
・・・・・・俺のお母さんがとても大好きな綺麗なアカリ叔母様がいる。オーケー?
「なにやら不穏な空気を感じましたが、まぁいいでしょう。
なにはともあれ、カレン私の事をママって呼んでいいのよ?」
「えっと、叔母様―――「ママ」叔母「ママ!」・・・・・・」
「はやくぅ私のことはヒカリママってよんでぇ?ほら!」
「・・・・・・リ・・・て・・・・・・やる」
「え?なぁに?大きな声で。せーの」
「アカリってよんでやるぁ!ママ?冗談!母さんはセレン母さんだけだ!ヒカリお母さんはいないが大切な存在なんだ。それを叔母が?気持ちは分かるが、貴方は俺を愛していない!!!
アーク父さんとセレン母さんは強制的な信託に苦しみながらも抵抗して、「愛している」と泣いて送り出してくれた!
ヒカリお母さんの記憶はなくとも!お腹にいる俺のことを愛してくれたはずだ!
アカリ叔母様が見ているのは俺じゃない!ヒカリを俺に重ねても、俺はヒカリじゃない!カレンだ!」
俺は何故だか分からない。だけど感情が爆発した。
アカリが俺を見ているならともかく、ヒカリを視ていた。父の話は出てこない、急に保護を謳いだすと思いきやママと呼べ。
善意であることは間違いない。
はたしてそこに俺はいるのだろうか?クレアはいるのだろうか?そして、カレン坊はいるのだろうか。
「きっと実の妹のアカリ叔母様が言うのなら、俺は男だけど誰が見てもお母さんにそっくりなんだろうな。保護するってのも間違いないのは分かる。お母さんと同じくらいに心から愛してくれているのも分かるけど・・・・・・きっとそれは僕達を見ていない。クレアもだ。
俺達はやるべきことがある。その為にここにきたんだ。だから貴方を母親と同列には考えられないし、考えたくない。アカリ・エルフィリア個人として見たいし、付き合ってもらいたいんだ。
すいません・・・・・・口が過ぎました。」
クレアは目がハート。うん・・・・・・いつもどおりだね。
対するアカリ叔母様は顔を真っ赤にし俯き震えている。
そりゃそうだろ。甥とはいえこんなに不敬なことを言われたんだ。処刑もんだ。
謝罪したが意味を成さないだろうな・・・・・・部屋の外から殺気が流れてくる始末だし。この先どうしようかね。とりあえずクレアを抱えて逃げる準備でも―――
「カレンきゅん///やっぱりその覚悟は濡れちゃうよ」
クレアさん聞こえていますし、それは駄目でしょ。
「・・・か・・・・・・が・・・・・・た。」
ほら言わんこっちゃない。
「クレア。一旦ここから逃げよう。ちゃんと俺につか―――」
「やっと私の王子様が見つかったわ!甥とか知らないし問題ないわ!それにカレンは姉様そっくりなら私は姉様と結婚できる!
カレン私と結婚してください!そして私と一緒に子作りしましょう!」
もうわけわかんねぇよ。どうしてそうなった・・・・・・
助けてくれカレン坊。
ここまで読んでくださりありがとうございます。黄色い翁でございます。
連日熱をだし苦しんでおり遅筆でございますが書いております。
それは置いておいて。
さて、母親そっくりかと思えば叔母でしたね。
しかもクレイジーサイコシスコン。かと思いきやのぶっこみキャラ。
黒髪スレートロングのないすばでーな残念キャラのアカリさん。
会話パート多くなりますが上手く時間を進めていきたいと思う所存。
ちょっと短いですがここまで読んでいただきありがとうございます。
続きが気になる!面白かったと思っていただけましたら、ページ下部の評価とブックマークをよろしくおねがいします。
みなさん連日猛暑だったりコロナ等で大変かと思いますが、体調管理しっかりやっていきましょう。
それではまた次話でお会いしましょう。黄色い翁でした。