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心折れた俺の異世界浪漫譚  作者: 黄色い翁
プロローグ
11/43

幕間ー私達ずっと近くにいたからー

幕間2話目です。

幕間とはいえ二人分。

 私、キーラは何を見ているんだろう。

 





 私は祝福の儀でラヴィエル様から聖女の祝福を授かった。ラヴィエル様のお姿はとても美しく、女の身である私でも愛し愛されたいと心から思うほど美しかった。


 だけどクレアちゃんとの約束が頭を過る。

 そうだ。兄さんに告白するんだ。それでお嫁さんにして貰うんだ!

 私にラヴィエル様から魔力が流れてくる。感じたことが無いほどの快楽が心を支配し、想いを塗りつぶしていく。

 

 だめ!それだけは消さないで!私は・・・・・・私はっ!!!



 気がついたら祝福の儀は終わっていた。これから兄さんの祝福の儀が始まる。

 ()()()()()()()()な。私の想いは消えていなかった。今も心の中に確かにある淡い想い。同時にラヴィエル様を愛しいと思う強烈な熱があった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――

――――――――――――



 

 『祖は白銀の調 謳うは破滅 されど不変 廻るは万象 滅せし因果 逆転は漆黒 


      奏は尚も止まらず 夢幻へと到らん―――――』


 最愛の人が血に塗れ倒れながらも、私達の名前を呼ぶその姿は心が引き裂かれる程に痛く、何も出来ない自分が許せなくて涙が止まらなかった。

 しかし声が聞こえる。それは確かに愛しい人の声だ。声も出せない程にボロボロになっていたはずなのに、優しく、決意の篭った声音が鮮明に聞こえる。

 今すぐに駆け寄り回復してあげたい。例えそれが手遅れだったとしても。しかし頭の中に響くラヴィエル様の声が許してはくれない。


 ふざけないでよ・・・・・・私の兄さんを助けてよ!邪教徒なんかじゃない!神様なら・・・・・・なんでよ!

 理不尽だと思った。不条理だと嘆くしか出来なかった。

 

 だけど。私の想いを踏みにじる様に思考を、心を蹂躙するラヴィエル様が何よりも邪魔で許せない。

 私が、聖女の私が兄さんを助けるんだよ!

 たった14年かもしれない。それでも私の全てだった。ずっと一緒にいた。ずっと一緒に生きてきた。

 パパとママ。そして兄さん。

 負けちゃ駄目だよね。私、聖女だもの。キーラは大好きな兄さんを助けたい!

 頭の中のラヴィエル様が小さくなる。

 今ならいける!―――――

 

 顔を上げてみれば様子がおかしい。兄さんの身体が光っていた。まだ太陽は沈んでおらず辺りは明るいはずなのに眩しく光っている。まるで何かを燃やしているかのように。

 目を奪われる。その光の温かさに。優しさに。

 そして直感した。この光は生命の輝きだと。ならば―――兄さん!駄目!


 『――――奏上せよ 歓喜せよ 全てを否定するは 我が福音』


 尚も強く輝き続ける兄さんが発する詠唱に私の頬を何かが流れていく。

 そして―――聞こえた。


  ―――バイバイ。




 『――――セイクリッド・エノク』


 兄さんの周囲を白銀のカーテンが覆う。

 光が止めば、あれだけ蹂躙し尽くされた身体が嘘であるかのように兄さんが佇んでいた。

 たけど変わっていた。

 兄さんの目が・・・・・・金色に輝いていた。


 現実を受け止め切れていない私の目の前で勇者と話し込む愛しい人。

 本当に彼は兄さんなのか。

 聞かないと駄目な気がする。これも直感だった。兄さんであるのは間違いない。だけど、あの魔法が発動する直前に聞いた―――バイバイ。の声。それも兄さんだった。教えてほしい。なにがあったのか。


 

 子供の頃からずっと大切にしてくれていた。背信者と認定され囲まれていた時だって、私達の事を考えてくれていた。そして泣いていた。

 逃げ込んだポラリスの大森林でだって、勇者に不意打ちされて致命傷なのに私達を守らんと、たった一人で戦ってくれていた。

 祝福は結界術師。本来戦う力はなく守る力だというのに。複数の魔法を使い、身体能力を強化し、見たことも聞いた事もない魔法を使って見せた。


 そして勇者達を一刀の元に切り伏せ、魔法で仕留めていく兄に、最愛の人に恐怖を感じてしまった・・・・・・彼が駆け寄り心配してくれる。

 キーラちゃんか。確信した。情報はそれだけあれば十分だ。聞かねば・・・・・・

 

 「それよりも。兄さん・・・・・・教えて。―――あなたは誰ですか?」








―――――――――――――――――――――

――――――――――――――

 私は一体何を見ているのかしら。


 彼、カレン君が逃げたこの大森林。

 私は勇者(ゴミ)に打診して追跡に加わった。カレン君を救出し逃避行する為に。

 勇者(ゴミ)が不意打ちよろしく、私のカレン君の顔を焼き払いやがった。こいつは許さない。絶対に殺さなきゃ。・・・・・・いけない。いけない。少し興奮していたみたいね。落ち着かなきゃ。


 途端にあの女神の声が大きくなる。

 私の中のカレン君への想いが、ラヴィリス様へと書き換わって・・・・・・

 

 ―――邪魔をしないで。お前、私のカレンきゅんを消すな!踏み躙るな!

 ああぁぁああやめて!カレン君を消さないで!やめてぇ!

 ・・・・・・助けて・・・・・・カレン君

 

 隣のキーラちゃんも苦しみ泣き叫んでいて・・・・・・私達の為に助けてほしいと頭を下げるカレン君。

 激昂し()()()を殴り倒すカレン君。

 


 ふと脳裏をカレン君は何故?と過る。全ては私達の為・・・・・・そうよ。カレン君が戦ってくれているのは何故!?私達が苦しんでいるからでしょ。

 神殿で彼は泣いていたの!全てを押し殺して私達に「幸せになって。」なんて泣きながら伝えてくれていたのに!助けたかったんじゃないのクレア!だったら負けちゃ駄目よ。カレン君を助けなきゃ!

 

 貴方、女神とか言っていたけど・・・・・・許さないから。基を正せば貴方が神託なんかするから・・・・・・

 私のカレン君を傷付けて、泣かせて。私達の想いを踏み躙って。

 許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない!!!!!!!


 私の心が燃えていく。黒く、熱く、冷たく。思考がクリアになる。

 同時に女神からの干渉が止んでいく。遠くなる女神の声。その声は驚きを隠せてはいなかった。

 

 思考がクリアになる。もう邪魔者は消え去った。

 だけど・・・・・・手遅れだった。


 いや、嫌よ!やめて!カレンくんがっ!

 ゴミ(勇者)に斬られ、私達の名前を呼びながら斃れ付していくカレン君を見てしまった。


 私は真っ白になった。本当は助けに行かないと!と思考は叫ぶが、心が目の前の現実を受け止められなかった。

 

 思い出す。今までを。短く、けれど長い14年の思い出が涙となって溢れ出す。

 なんで・・・・・・私をお嫁さんにしてくれるんじゃないの?

 物心つく前からずっと一緒だったよね?

 小さい頃に私から告白して結婚しようっていったけど、カレン君は大きくなったら僕からするから!って真っ赤になってはにかんでくれたよね。

 キーラちゃんがずっと羨ましかったな。一緒にお風呂とかベッドで寝てるとか羨ましくて私辛かったな。

 だけどあの日カレン君が約束を覚えてくれていて嬉しかった。約束を守ってくれたよね。

 本当に嬉しかった。今まで何度も同じベッドで添い寝したけど、その日だけは特別だったなぁ。

 だからさこれからも一緒に生きたいよ。私を一人にしないでよ!貴方じゃないと幸せになんかなれないの!キーラちゃんと、私と、カレン君!

 みんな一緒じゃないと駄目なの!だからお願い。行かないでよ!

 ねえ立ってよ。嘘だよね。カレン君!嘘だって言って!

 また優しい笑顔を見せてよぉ!


 もう私は駄目だった。顔を両手で覆い涙が止まらない。諦めてしまっていた。


 彼の声が聞こえた気がした。


 温かい。


 また彼の声がした。今度は気のせいなんかじゃない。

 顔を上げる。斃れた彼を見る。


 優しい声が、決意の篭った声が響き渡った。


 『――――セイクリッド・エノク』


 彼は立っていた。傷は何事もなかったかように。裂かれ、焼かれ、穿たれた彼の身体は綺麗に修復されていた。

 両目を金色に輝かせ、強さと気高さ、神聖さを纏い立っていた。

 嬉しさがこみ上げる!


 無力に嘆き諦めていた。私の冷え切った心が、彼がそこにいるだけで私の胸はときめき、熱くなるの。

 敵わないなぁ。貴方がいるだけで力を貰えるの。貴方がいるから私は生きていられる。

 依存だって分かっている。それでも彼は。カレン君は受け止めてくれるだろう。


 それに解ってる。きっとキーラちゃんも。彼はカレン君ではない。ずっと一緒に過ごしてきた。だから解ってしまう。私達の知っているカレン君は・・・・・・もう・・・・・・。

 だから今のカレン君に聞かないといけないけど、もうだめ。嬉しくてカッコよくてそんな彼が私は大好きだ。


 想いが爆発する。カレン君から案ずる声を掛けてくれたけどちゃんと答えられなかった。


 気がついたら勇者(ゴミ)がゴミになり、カレン君をボロボロにした女神の犬達が退治されていた。

 

 あ~ん!もうカッコいいなぁ。その油断しない感じ最高ね!

 邪魔な声も消えたみたいだし。また今度邪魔しに来るようなら―――絶対に殺す。

 

 私の心はオーバーロード。カレン君への想いをぶつけていた。びっくりする顔も可愛いなぁ♪


 そして、キーラちゃんが口火を切ってくれた。


はい。どうも黄色い翁です。

ここまでお読みくださりありがとうございます。


次話が本当の明日へのプロローグ最終話になり、旅立つ感じになります。


そしてキーラの想いとクレアの想いの対比に違和感があったと思いますが概ね予定通りです。

当初と違うのは、二人の立ち位置の違いくらいですかね。


そして想いの重さを実感していただければ幸いです。

今回はクレアのカレンに対する想いや愛ががどれだけ純粋なのかってことを言いたかった!

同様にまだ明確になっていませんがリリエルもそうですね。

逆にキーラちゃんは?さてどうなるでしょうねぇ!


クレアがどれだけやばいか。談義ー!

一言でいうと、魅了を愛で無効化!

すばらしいね。皆こんな感じならNTRなんてこともなく平和だったね!


正直クズ勇者NTRルートもあったんですよ?

でもそれを踏み台にやり返すってのもおかしいなぁと思ってやめました。

もしカレンが寝取られたとして、具体的な華蓮の年齢は明記していませんが、転生後も含めればいい大人です。

きっと彼なら諭すような気がしたからですね。

リリエルなら?

それは言わないお約束おk?


ということであとがきもこの辺でお暇させていただきます。

ここまで読んでくださりありがとうございます。

続きが気になる!面白かった!と思っていただけましたら、ページ下部の評価ボタンとブックマークのほどよろしくお願いします!

それではまた会いましょう。黄色い翁でした。

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