道端でJKを拾いました
あいつ長谷川だろ、よく学校なんか来れるよな
あんな事件起こしといてよく外出歩けるよね
幼馴染の事レイプしようとしたんでしょ、マジありえない
おいおい、こんな事話してるの聞かれたらお前もヤられるぞ
チョッッ怖い事言わないでよー
五月蠅い声をかき消す為に音楽の音量を上げる
高校からの登下校でこれを毎日繰り返している
異物を見るような視線や暴言、冷やかしから自分を守るために自分の世界を作る
そんな事を一年続けている
校門を潜って下駄箱、教室へ
あとは机に突っ伏して寝るだけ
授業が始まれば自分のやりたい教科を好き勝手やって一日が終わるのを待つ
もちろん先生からの評価はあまり良くないが、テストで点数さえ取っていれば基本的に文句は言われない
そして授業が終われば帰る
こんな学校生活を自分なりに楽しんでいた
「京さん、今日の夕飯のおかずは何が良いですか」
携帯を耳に当てながら、スーパーの入り口に置いてあったチラシに目を通す
「焼きそばとかラーメン食べたい!」
「焼きそばとかラーメンはおかずじゃなくて主食です」
「えーじゃあ何でも良いかなー。適当に安くておいしい感じで」
この何でも良いという言葉程、料理を作る者にとって嫌な言葉はないのではないだろうか
何でも良いといったにも関わらず、飯を出した時に文句を言う
野菜が多いだの肉が多いだの・・・・・
(今日は豆腐と大根が安いのか。)
「じゃあ、昨日の残りのご飯と大根の味噌汁、麻婆豆腐、おつまみは冷奴で良いですか」
「それで大丈夫。あと、焼酎割るためのお茶欲しい」
「分かりました、じゃあ」
「うん、お願いねー」
会計を済ませてスーパーを出る
少し重くなるとは思っていたが、各コーナーを回っているうちに足りなくなりそうな物をついつい買ってしまったせいで結構な重さになっている
具体的には冷凍食品や洗剤
安いとついつい手が出てしまう
現在地であるスーパーから家まで歩いて五分程かかる
五分歩けば着く距離と聞くと短いと感じるかもしれない
しかし、買い物後の重い荷物を手に持った状態となると別だ
ビニール袋の持ち手部分が指に食い込み、かなりの持続ダメージを与えてくる
そのような状態での五分というのは非常に長い
「早く帰るか」
時刻は十七時半をすこし過ぎたころ
家に着いてから、買ったものの整理や着替え等々をして三十分
調理を始めるのが十八時だとすると、食べるころには十九時過ぎになってしまう
少し足を速める
食事が遅くなると、あーだこーだと京さんから文句を言われてしまう
しかし、その足は暫くして止まった
右手にある細い路地で、男四人組が女子高生を脅しているのか襲おうとしているのか
どちらかは分からないが、男四人組が悪さをしている事に間違いが無いその現場を見てしまったからだ
一旦下がって、スーパーの袋を地面に置きポケットから携帯を取り出す
カメラを起動し、四人組に気付かれないように動画をとる
なにか男たちに不利になるような証拠を押さえたいからだ
抵抗している女の体を四人組の男たちが触ろうとしている所でも何でも良い
撮影を開始して三十秒程
四人の中で一番がたいの良い男がペットボトルのコーラを女に頭上から浴びせ始めた
浴びせ終わった所で、動画の撮影を終了し有名動画投稿サイトに公開設定を非公開にしてアップロードする
保険はかけておくに越した事は無い
アップロードが完了した事を確認すると携帯をポケットに仕舞った
覚悟を決めて細い路地に足を踏み入れる
「すいません、それ俺の彼女なんですけど返してもらえませんか」
話しかけられる事で気が覚めてくれれば嬉しいのだが
「おい、何言ってんだ。こいつの彼氏はさっき逃げたぞ」
おい、彼氏なら彼女守れよ
なんか凄い恥ずかしい
「ちょっと何言ってるか分からないです、とにかく返してください」
ふざけてんのかと怒鳴り散らしながら男たちが間合いを詰めてくる
本当にふざけてた言葉だと自分でも思う
相手の様子からみるに、このままでは穏便に済ませる事はできないようだ
「夕食の支度があるんですよ、ふざけてないで早く返してくださいよ」
そう言いながらこちらからも間合いを詰める
「今謝るなら許してやる、こっちは四人なんだ。どうした方が良いか分かるよな」
細い路地で人数はあまり関係ないと思うのだが、それとも何か不良特有の戦い方でもあるのだろうか
よく見たら四人の男たちの中に知っている顔があった
一番背が高い茶髪の男だ
「茶髪君、前回会った時はもうこんな事しないって言ってたよね」
「あぁ、なに言っ」
がたいの良い男が言い終わるのを待たずに次の言葉を繰り出す
「まだ、相手にして欲しいって言うなら手加減なしでやらせてもらいますよ、あと他の方々も早く帰らないと社会的に死ぬことになりますよ。あなた方の行動を録画させてもらいました」
だんだんと男たちの顔から血が引いていく、特に茶髪
なんとか暴力沙汰にはならなくて済みそうだ
また暴力事件でも起こしたら流石に退学になるかもしれない
男たちはその場で小声で話し合った後、去って行った
しかし、女子高生は右の壁に寄りかかったまま茫然としている
「おい、大丈夫か?」
返事は無い
「立てるか?」
やはり返事は無い
仕方がないので、女の腕をつかんで立たせようとするとその手を払って自分で立ちあがった
「自分で立てる」
「なら、最初から立て。ん、どうした?」
女は自分の上半身を腕で隠すようにしながら少し腰を曲げている
「コーラ、かけられたからその・・・」
「あーそうだったな、俺のブレザーでよければ貸すぞ」
「ありがとう」
「自分で帰れるか?」
「帰れない・・・知ってる人に見られたら笑われるしそれに・・」
それに何がったのかと聞かれたくないんだろう
男四人に襲われて彼氏に逃げられ・・・
帰り道に何があったかと聞かれて答えた次の日には酷い噂話になってそうだ
「俺の家の風呂だったら貸すぞ」
「ありがとう、ございます」
細い路地を出て家に向かう
たまに後ろを見て、女がいるかどうか確認しつつ歩く速さを調節した
真冬の寒さと濡れた服が女の体温を奪っていっているようで、体の震えがどんどんと激しくなっている
道端にあった自販機に百二十円を入れてホットレ○ンを買う
「これで少しはましになるだろ」
そう言って手渡した
「本当にありがとうございます」
「あの、私笹原綾瀬といいます。名前を教えてもらっても良いですか?」
道中お礼以外の言葉を口にしなかった女がマンションに入ろうとしたとき口を開いた
「長谷川です」
「長谷川さんはここに住んでるんですか?」
「住んでるけど、何かまずいことある?」
「すいません、このマンション結構高いからビックリしました。お金持ちなんですね」
「かもな」
実際に住んでいる部屋を所有しているのは俺でも俺の両親でもないので、少し変な返事になってしまった
マンションに入りエントランスの受付のスタッフから荷物を受け取ってエレベーターに乗った
「笹原さん、一番上押してもらえる?」
「え、最上階ですか。わかりました」
扉が閉まりエレベーターが動き始める
会話がない、とても静かだ
こんな時何か話した方が良いのかもしれないが、残念ながら人と話すことが少ない為コミュニケーション能力は絶望的なまでに低い
何か話そうとは思ったが結局何も話せないままドアが開いた
エレベーターを出てから右に少し歩き、二つ目のドアの前で立ち止まる
「笹原さん、このダンボールもって」
「分かりました」
空いた右手でスーパーの袋の中に入れておいた財布から鍵を取り出しドアを開ける
「どうぞ」
「お邪魔します、あのこのダンボールはどうすれば?」
「下に適当に置いといて、風呂場はそこだから何でも自由に使って。風呂も沸いてるから入
っちゃって良いよ」
「ありがとうございます、では早速入らせて貰います」
そう言って俺が指差した右壁にある手前から二番目のドアに小走りで入って行った
「お帰りー長谷君、誰か連れて来たの?」
だらしない格好をした京さんがリビングから出てきた
体のサイズに合わないダボダボのシャツがふともも辺りまでを覆っていて、隠れて見えないが恐らく下半身は下着のみ
二十歳(自称永遠の十八歳)の女性とは思えない
きれいな長い黒髪、スタイル抜群の体、そして顔
だれも美人と言っても過言ではないレベルのものだが、それがよけいにだらしなさを強調しているような気もする
「ただいま、帰る途中で襲われてたJKを拾ってきただけ。びしょ濡れだったから風呂かしたけど大丈夫だった?」
「え、いや大丈夫だけど」
「それなら良かった、じゃあ夕飯つくるね」
少し帰るのが遅くなってしまったので、夕食の準備を急ぐ
普段なら、制服から着替えて調理を開始するが今日は制服の上にエプロンをつける事にした
「京さん、着替えとかタオルとか準備してあげてくれる?あと制服だけ洗面所の上置いといて」
買ってきた冷凍食品を冷凍室に詰め込みながら聞く
「え、泊める気なの?」
「本人が望めば、どっちにしろ服とかは洗った後に乾かさないとだから一時的な着替えは必要」
「そうか、そうだね。準備してくる」
それから四十分程で料理は完成した
「京さん、料理できたから運んで。ちょっと着替えてくる」
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