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ドラグーンゲート  作者: かわせみ
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第六話 新たな仲間

「レッサーファングってあのレッサーファングですよね?」


 宗一郎は、往生際悪く、現実を認めようとしていなかった。


「キミがこちらへ来た初日、餌になりかけたあのレッサーファングね」


 親切にもリースが現実へ引き戻してくれた。


「まあまあ宗一郎よ。たしかにレッサーファングが巣食う山へ旅をしてもらうが、私としてもお前達二人だけで行かせるつもりもない。私が推薦する手練れをつけよう」


 そう言ってルビウスは指をパチンと鳴らした。

 程なくして、大扉が再び開き、大柄の筋肉質な男が現れた。腰には大型の剣を差し、鎖帷子を纏っている。


「お呼びでございますか。陛下」


 ルビウスの前で膝まずくその男は整った顔だちをしていたが、生やしたヒゲから武将の貫禄を醸し出していた。


「うむ。ダンよ。お主に命ずる。この二人、宗一郎とリースの旅へ同行するのだ。世界の命運をかけた旅となる。二人を助けてやってくれ」


 二人を横目で見た後再びルビウスに向き直る。


「御意」


「二人共。この男が旅へ同行する。名はダンタリアン・クラウス。我が王国の兵士長を務める男だ。腕は保証する」


 思わず椅子から立ち上がり一礼する二人。


 それに対し会釈で返すダンタリアン。


「これから宜しく。私のことはダンで構わぬ」


「は、はい!こちらこそ」


 どこの世界でも友好の証は握手で示されるようで、ダンと宗一郎は自然と握手をしていた。


「ではゆくがよい!何か困りごとがあればいつでも訪ねてくるといい。城下町で準備を怠らぬ様にな!」


「はっ!」

「行ってきます!」

「行って参ります」


 三者三様に返事をし、玉座を後にする。



 玉座の大扉が閉まったその瞬間


「おう!お前らこれから宜しくな!さてまずは道具屋でものぞいてみるか」


 豪快に二人の頭をくしゃくしゃに撫でた後、ズカズカ歩いていくダン。


「(なんでこの王家に関わる連中はどいつもこいつもキャラ作り激しいんだ?流行ってんのか?)」


 やはり疑問はとりあえず胸にしまう宗一郎だった。



 城下町。


 道具屋を訪れる三人。


「うし!とりあえずこれだけ傷薬と毒消しがあればこの辺の魔物には対応できるだろう」


 購入品を確認するダン。


「すみませんダンさん。買ってもらってしまって…」


「ん?ああ。気にすんな。」


 確認する手を止め宗一郎へ耳打ちする。


「王様から少し出てんだよ。でも、俺らの旅は一応…な?盟約絡んでておおっぴらに出すわけにも行かんから極秘で出てんのよ。極秘故に少しだけ」


「なるほど…」


 宗一郎が感心している間に道具の確認を終わらせたダン。


「うっし。んじゃいよいよだな。二人とも買い物もう平気か?」


「はい。矢も充分ありますし大丈夫です!」


「俺も大丈夫です」


「んじゃ行くぞ!」


 確認を終え、街を後にする三人。


 街道を歩き出す。


「そういやよ?」


 ダンが宗一郎へ問いかける。


「お前ら二人、戦闘経験はどうなんだ?」


「俺からっきしです」


「私は狩猟で鍛えてました」


 なるほど…と腕を組むダン。


「リースは基礎はしっかりできてそうだな。王様の妹弟子でもあるし、弓の扱いも安定してそうだ。宗一郎は実戦経験踏まねえとってとこだな。せっかく専用の伝説クラスの武器持ったって活かせねえんじゃダメだからな…」


 しばし考え込んだ後、愛嬌のあるニカっとした笑いを見せる。


「よし!宗一郎、鍛えてやる。ルーブ王国流剣術を仕込んでやる。なあに、旅しながら実戦も交えるんだ。すぐにウチの新兵どもなんかより強くなるぞ!」


 宗一郎にとって、この旅で一番の不安要素が戦闘だった。


 あまりに経験が無さすぎる。


 そこへ現役の兵士長が手ほどきしてくれるとあってはまさに渡りに船だった。生存確率が飛躍的に高まる。


「宜しくお願いします!」


 師弟関係が新たに結ばれたあたりで日も傾き、夕暮れに差し掛かる頃、再びウッド村へ到着した。


「ここのグラン長老が王様とリースの魔法の師なんだよな?」


「さっきも言おうかと思ったんですが、私、長老様に師事するってほど教わってはいないんですよ。基礎の手ほどきを受けたくらいで。後はほぼ禁止の毎日だったので」


「(その割には弓構えるより速く詠唱できる程度には鍛えられてるじゃんか…)」


 口は災いの元である。思う分にはタダ。そこをフル活用する宗一郎であった。


 グランの家に着き、ノックをするリース。


 その瞬間リースの目が変わった。


「長老様。変な事したら宗一郎が今度は止めるよりも速く切り刻みますよ?なにせ今は魔法、使えるんですから」


「うそじゃろ…」


 なんの前触れもなくリースの背後に現れたグランが固まる。


 突然目の前に現れたグランに驚く宗一郎とダンであったが二人以上にグラン本人が驚いていた。


「リ、リースや。なぜワシの接近が感知できた?」


「え?あ、そういえば…自分でもわかりません…ですが、予想とかそんなのではなく、長老様がいるのがわかりました。本当にただ感知したとしか…」


「ふむ…ルビウス王となにかあったかの。とりあえずお主ら、家に入りなさい」


 グランに連れられ、家へ案内される三人。


 グランの部屋へ案内され、揺り椅子に腰掛けるグラン


「王がワシの元弟子と言うのは聞いたかの。そしてリースにもワシは魔法の手ほどきをした。じゃが、それまでじゃった。正確にはそれ以上、する必要が無かったのじゃ。リースは生まれ持っての魔法への適性が高かった。ワシが教えて方向性を定めるより自分で模索した方がより良い魔導師に慣れると判断したからじゃ」


 パイプを咥え出すグラン


「そう、そこまでは良かったのじゃが…リースの魔法への適性は生半可なものではなかった。それこそ他国へ知れれば軍事的な問題になるほどのレベルじゃった。そこでワシはリースの魔法へ蓋をかけ、大半を封印したのじゃ」


 揺り椅子を止める。


「さて。本題じゃ。城で何があったのかの?リースもじゃが宗ちゃんに関することもじゃ。そして兵士長さんと行動してることについても話してもらえるかの」


 宗一郎が代表してかいつまんで説明する。


「なるほどのう…リースはおそらくルビウス王の魔力に当てられた事で本来の自分の魔力が共鳴され、活性化したのじゃろ。眠れる力が刺激されて目覚めかけておる。強力な魔力探知技術もその為じゃな。そして…起源の四種か…ふむ…とりあえずわからんこともない話せる心当たりはある」


「ほ、本当ですか」


 身を乗り出す宗一郎。


「ああ本当じゃ。まあしかしなんじゃ、今日は日も落ちておる。仮に今話したところで探しにも行けまい。宗ちゃんや今日も泊まって行きなさい。兵士長さんもいかがかの?」


 ペコリと頭を下げるダン。


「恐れ入ります。お言葉に甘えさせて頂きます」


「リースも夕飯くらいは今日はワシの家でどうじゃ?」


「あ、はい…ご馳走になります」


「では一時解散じゃ。じきに夕飯もできるじゃろ。それまで各々自由にしておれ」


 部屋を出る三人。


「おい、宗一郎。夕飯ができるまで少しある。早速稽古つけてみないか?リース、木刀はないか?」


「あ、はい。家にあったはずです。お父さんが剣術やってたので。持ってきますね」


 家へ走るリース。


「さて、じゃあ早速メニュー考えるか」


「宜しくお願いします!」


 一礼する宗一郎


「とりあえず組手やってみるかな…俺との組手で五分立ってられればノルマ達成」


「五分か…長いけどなんとか粘るぞ…」


「ほっほ。剣術の稽古かの?」


 家から様子見にグランが出てきた。


「ええ。ダンさんが鍛えてくれるそうです。五分組手して立ってられればノルマ達成だそうで」


「五分か…宗ちゃん大変じゃの…」


「頑張りますよ!」


「いや…そうではない。兵士長さんは素手でも魔物と渡り合えるそうじゃ。そんな奴がぶん回す木刀もらって五分後、むしろ生きておればええがの…」


「…」


 白くなる宗一郎。


「宗一郎ーっ!ダンさーん!木刀持ってきましたよーってアレ?」


「おーい宗一郎?」


「…」


 木刀を抱える少女と戦う前から燃え尽きている少年。それを小突く男。そしてそれを影から爆笑しながら見て守る老人。


 奇妙な四人が集う夕暮れどきのウッド村であった。

ご覧頂きありがとうございます。

かわせみです。

今回からようやく旅が始まりました。そして新キャラダンさん登場です。彼に師事した事で宗一郎君もきっと強くなれる…?かもしれない!

という様な内容で再びウッド村まで戻ってきました!次回、山登り予定です!


次回もまたご覧いただけましたら幸いです。

それでは!

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