第五話 明かされる古き盟約
ルビウスは再び豪華な玉座に腰を落とし、指をパチンと鳴らした。
宗一郎とリースの目の前に豪華な椅子が現れた
「空間転移の魔法だ。グランもよく使っておったであろう?さあ、かけてくれ。お前達とはじっくり話をせねばならん」
「はい…」
「失礼致します。」
腰掛ける二人。
うむ。と微笑むルビウス。
「では、お前達が謁見に来た事について。伝説について…だな。まずはお前達の名から聞こうか」
「赤井 宗一郎と申します」
「リース・ダリアと申します。」
何気に初めてリースのフルネームを知った宗一郎であった。
「ふむ。宗一郎に、リースだな。ふむふむなるほど。実に面白い事もあるものだ…あ、いやこちらの話だ」
疑問の顔を浮かべた二人に対して繕うルビウス。
「さて、では本題だな。二人は四龍伝説とその真実についてはグランから聞いておるな?」
「はい。四頭の龍が、世界を守護している伝説で、でも実は伝説なんかではなく本当の話で、今もなお、俺の世界とこの世界を繋いでしまうドラグーンゲートが開かないようにゲートの守護をしている…ですよね?」
宗一郎の回答が模範解答とも言うべき内容だった事に感心するルビウス。
「うむうむ。よく理解しておるな。ではここから王宮へ連れて来るように盟約を交わしたその真実の話だな」
食い入る様にルビウスを見つめる二人。
「…」
「…」
「…陛下?」
「そんなに見つめられたら照れるであろう?」
あの師にしてこの弟子だった。
余計な所まで師事していた様だ
「陛下、誠に恐縮ですがお戯れはご勘弁願えますでしょうか」
内容はグランへのそれと同様だが言葉遣いだけはきっちり変えてくるあたり、リースはさすがだった。
「つれないな。まあ良い。」
ゴホンと咳払いし、仕切り直すルビウス
「では、古き盟約についてだ。異世界からの旅人は実は宗一郎が初めてではない。その昔、ドラグーンゲートが開きかけた時にも四人の旅人がこちらへ訪れた。その時はその四人の活躍で事なきを得たようだがな。そして、ドラグーンゲートに関連する旅人にはある共通点がある。まず、一度に四人単位で転移される事。そして、こちらの世界からの導きにより訪れる事、そして「起源の四種」を使いこなす勇士たちである事だ。」
呆気にとられてフリーズする二人へ優しくフォローを入れるルビウス。
「すまんすまん。矢継ぎ早に話してもわからぬな。一つ一つ説明しよう」
一国の王でありながらも他者を気にかけるこの優しさはさながら理想の上司のようだった。
「まずは四人で現れる点だが、これは四龍伝説に関連している。そして「起源の四種」にもな。グランからの書状にあったが、宗一郎は三人の友人と共に扉を開いたそうだな?」
「は、はい。そうです」
「四人の勇士はそれぞれ四龍の力を借り受けてドラグーンゲートの解放に備えるのだ。そして、その力というのが「起源の四種」だ。「起源の四種」は、全ての武器の起源だ。そして四種自体は純粋な魔力のみで形取られている」
突然立ち上がるリース。
「そ、そんな!?あり得ません!魔力の集合体でしかも武器なんて…!」
手を突き出しリースを制するルビウス。
「待て待て。リースよ。取り乱すのはわかるが宗一郎にもわかるようにしてやるのだ。彼は魔法とは縁のない世界からの来訪者だ」
「は、はい…」
諭され席に着くリース。
クエスチョンマークが多数浮いている宗一郎に説明を始める。
「えっと…まず、この世界における魔法っていうのは、「魔力を使って物事に対して影響を与える事」を指すのね。物を燃やしたりとか。そして程度の差はあれ、それ自体はそんなに難しい事ではないの。ただ、魔力そのものを扱うとなれば話は別。王国付きの大魔導師クラスでも複数人がかりでやっと小石よりも小さい程度の粒が結晶としてできるくらい。武器のような大きさなんてとても無理。それに小石サイズだって込められた魔力が解放されれば強烈な爆発が起こるわ」
腕を組み解釈する宗一郎。
「つまり、この世界の常識じゃ魔力はあくまで動力源でそれ自体を結晶として扱うにはとんでもなく危ないし、そもそも技術的にも厳しい…と」
「ほう!なかなか賢い。縁遠い世界の理などそう簡単には理解できるものでもあるまい」
照れる宗一郎。
元の世界で遊び倒したゲーム知識が応用された。
「魔法と魔力の関係については今リースが話した通りだ。そういうわけで起源の四種はとてつもなく強力な武器なのだ。そしてそれだけの力でないとドラグーンゲートに対抗できんというわけだ。起源の四種は武器の祖たる存在だ。剣、槌、杖、槍の四種からなる。そしてどの武器になるかは龍が見定めると言われている」
突飛な話に置いていかれる宗一郎とリース。
しばし沈黙しているとルビウスの口が開いた。
「驚いているところ悪いが、続けるぞ。四人の勇士についてとこの世界から導かれた者についてだ。私が先ほどお前達に魔力を当てたのもここにある。先ほど流した魔力。アレは常人ならば卒倒している。半日は目が覚めぬな」
「(この王様はなんつーもんぶち当ててくれたんだよ)」
打ち首になりそうなので無礼な言動は心にしまう宗一郎であった。
「しかしお前達は倒れぬどころか私を見据えてきた。魔力にそれだけの耐性があれば起源の四種をも扱いこなせよう。そしてリース。お前は起源の四種を扱う勇士では無いが、その従者として充分な資質を持っている」
お互いに顔を見合わせる二人。
「四人の勇士としての資質はそれで十分確認できた。あとは導きのあった者か確認したかったのだが、私の魔力に呼応してその手帳が光ったことで確認できた。それは宗一郎の世界にあったものだろう?」
「は、はい。全てはこれを俺の友達が家から見つけてきたことから始まったんです。」
手帳を差し出す宗一郎。ルビウスはそれを手に取り、もう片方の手をかざした。
「魔力の残滓を感じる。どこか懐かしい…」
手帳をパラパラとめくる。
「うむ。合点がいった。正真正銘お前達はこの世界に選ばれ、導かれた。暗号化されているが、この手記は我が王家の人間が書いたものだ。間違いない」
断言するルビウス。
だが宗一郎は心中穏やかではなかった。
かつて憧れた異世界での冒険。だが、現実味を帯びて目の当たりにすると二の足を踏んでしまう。
怖かったのだ。
「王様…ですが…俺…」
「そう…だな…宗一郎にとっては突然よくわからぬ世界に連れてこられ、世界を救う勇士だなどと言われ、戸惑うだろう。そして旅への恐れもあるやもしれぬ。だが、これは私からの頼みだ。起源の四種を扱えるのは今お前を含めこの世界にたった4人しかおらん!ドラグーンゲートが解放されれば双方の世界が無事ではすまぬ。無理矢理に世界同士が引かれあい、最悪どちらも滅びる。頼む」
「宗一郎…私からもお願い。長老様が私に魔法の許可を与えたのってこういう事だったんだわ。私に宗一郎の力になれと。共に世界を救えと。やりましょう?キミだけでなく仲間の為にも!」
仲間…
宗一郎は離れ離れになった彼らの顔を思い出した。
泰三…仁香…そして四葉
彼らと力を合わせねば彼らに会えない。
世界を救う為にも彼らを探さねばならない。
宗一郎の目に光が灯った様だった。
「わかりました。二人とも。俺、やります!やらせてください!」
安堵の笑みを浮かべるルビウスとリース。
「そうと決まればまずは起源の四種探しね!宗一郎のを探さなきゃ。陛下は何かご存知ですか?」
「うむ、起源の四種、その一つは…」
食い入る宗一郎とリース
「その一つは…?」
「ウッド村の付近にある山に眠っている。ちょうどレッサーファングがうろついてる山だな」
「」
瞬間、宗一郎の眼から灯った光が失われた。
トラウマとは恐ろしいものである。
ご覧頂きありがとうございます!
かわせみです。
今回…実は…旅立ちまで書こうと思ってたんですが何だかんだ王様の長話で終わってしまいました(^^;;
次回からは起源の四種探し編始まります!
よければまた読みにきてください!
それでは!