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ドラグーンゲート  作者: かわせみ
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第四話 王との謁見

 朝。

 宗一郎が目覚めて目にした天井は見慣れた自分の部屋ではなかった。木で組まれた天井。背中には慣れない感触のベッド。そして枕元にはロウソク立て。そして木枠の窓から見えるのは、広場とその中央にある質素な噴水。そして、木製のベンチ。

 のどかな片田舎の村の風景である。


「そっか…そりゃ夢じゃないよな…」


 ポツリと呟き、窓の外ではしゃぎ回る村の子供たちを遠い目で眺めていた。


 昨晩、グランに部屋へ案内された宗一郎は用意された着替えと夜食のパンに手もつけず、ベッドに倒れこんでしまった。


「腹減ったしとりあえず頂こうかな…」


 夜食のパンをかじり始める宗一郎。


 食べ終わるとほぼ同時にドアがノックされる。


「宗一郎ー?私。リースよ。準備できてるー?」


 外からリースの声が聞こえる。


「はいよー」


 ドアを開ける宗一郎。


 そこには昨晩山で担いでいた弓と、旅衣装に身を包んだリースが立っていた


「お、また服が変わってる。手と膝についてるそれは革のプロテクター?」


 呆れてため息が出るリース。


「キミ。まるっきり準備出来てないじゃない。そんな薄布で村の外をうろつくつもり?すぐに魔物胃袋行きよ」


 呆れながらも真面目に言っている。コレはマジだと確信する宗一郎。


「そうは言っても俺コレしか持ってないし」


「箪笥の中見て見なさい」


 開いて中を確認する宗一郎。


 そこには旅衣装の服が入っていた。


「村へきた旅人の装備が破損していた場合の応急装備を備えてあるのよ。自由に持ち出し可だから持って行って大丈夫よ」


 そう言ってドアを閉めるリース。


 感心しながら宗一郎は着替えを始める。


 布自体は硬いのだが、動きを阻害することなく割と動かしやすい。そして通気性も悪くない。不思議な材質だった。


 箪笥の中には他にポーチと簡素な作りの片手剣があった。


「そっか…武器も持たないとだよな…剣か…触った事もねえし近しい事といえば中学の頃剣道やってたくらいだぜ…」


 竹刀の要領で構えようとするが片手剣の為、両手では握れなかった。


「ま、考えてみりゃ、剣道といっても基本一対一だしな。この世界じゃ複数相手にする事もありそうだしあんまり役にも立たないか」


 とは言いつつも鞘を腰に据える宗一郎であった。


 支度を終え部屋を出る宗一郎。


「リースのそれは旅衣装なのか?」


「そうよ。昨日のはあくまで狩猟衣装。戦闘にも対応してるけど基本的には狙い澄まして仕留める事に適してるの。だからこの服に比べて防御は低めだし運動性もこちらの方があるのよ」


 リース先生の講義は為になるなぁ…と素直に感心する宗一郎。


「さ、そんな事より早速王宮へ向かうわよ。長老様にご挨拶しなきゃ。待たせたら悪いわ。急ぎましょ」


「そうじゃそうじゃ。はよせんと長老様の寿命が尽きてしまうぞい」


 突然リースの背後へ現れたグランに声を上げる間も無く硬直する宗一郎。


 が、宗一郎が硬直するより早くリースは腰を落とし弓を引きしぼり、矢じりをグランのアゴ先に突きつけていた。


「ちょっ。ちょちょちょタンマじゃ!タンマじゃってリースや!」


 慌てふためくグラン。そのアゴ先には矢じりが少し刺さっていた。


「なあんだ。長老様ですか。脅かさないでくださいよ。急にくるから条件反射で構えちゃったじゃないですか」


「リースや。いや、リースさん?なら弓を絞るのをやめてくれんかの?ワシが悪かった!あっ。ちょっ痛っ。あっ血出た」


 笑顔で弓をキリキリ引くリース。

 宗一郎は戦慄したが、本気でアゴから射抜かれそうだったので助ける事にした。


「リース、それくらいで…長老様もイタズラ心だったんだろうし、反省してるよ。それに、村娘が長老様をアゴから脳天ぶち抜いたってシャレにならんよ」


 ふんっとむくれながら弓を収めるリース。

 笑顔の中にあった冷たい狂気を宗一郎は心に刻んだ。


「全く…シャレのきかんやつじゃのう…あ、すみません」


 吹雪をも思わせるリースの冷たい睨みに思わず謝るグラン。


「今日はまだいいです。その勢いでお尻触ったりするじゃないですか。いつも言ってるはずです。私のお尻の代金は風穴だと」


 どうやら常習犯だった様だ。

 フォローした事を後悔した宗一郎だった。


 仕切り直すグラン。


「ゴ、ゴホン!で、では昨日話をしたようにお主らには王宮へ旅立ってもらう!そして、城へ着いたらコレを見せなさい。ワシからの書状じゃ。伝説の件に関しては基本的には秘密じゃからの。謁見は適当な理由をつけておる。が、王にはこの書状でわかる。伝説の件で訪れたということがの」


 書状の入った封筒を宗一郎へ手渡すグラン。


「では、続いてリースや。お前さん、魔法使ってええぞい」


「わかりました」


 宗一郎に疑問が浮かぶ


「魔法使えたのか?ていうか許可制なのか?」


「村のルールじゃ」


「うちの村は基本的に長老様以外は魔法の使用は禁止してるの。便利な反面強力なものだから武器にもなれば惨劇も…ね。もちろん狩りで窮地に陥ったり命の危機があれば例外だけど」


「ま、おかげでワシ命拾いしたんじゃがの。リースは弓の名手でもあるが風系魔法も得意としておる。弓を引くより早く小さな真空波を出せるのじゃ。禁止しておらんなら今頃細切れかの」


 カッカッカと豪快に笑う長老だがブラックなジョークに引き笑いするしかない宗一郎であった。


「よし!ではそろそろ出発かの?」


 グランからの問いかけに頷く二人。


「はい!行ってきます!」


 そう言って村を後にしていく二人の背中を見つめ、グランが目を細める。


「ワシの代で遂に異世界の旅人が来おったか…そしてそれを見つけたのがあのリースとは…縁とは誠に奇妙じゃ…じゃが、奇妙故に実に感心できるとも言える。宗ちゃん、リースや、頑張るんじゃぞ。そしてまだ見ぬ若人達よ。お主らもじゃ……さて、ワシにはワシにしかできんこともあるはずじゃ。ワシも備えるとするかの…」


 そう呟き、家の中へと入っていった。




 平原の街道を歩く宗一郎とリース。


「なあなあ。リースの魔法って風系なんだよな?やっぱブワアアアって竜巻みたいの起こすのか?」


「いいえ。私のはせいぜい真空波まで。竜巻クラスを起こせるのは大魔導士クラスよ。私のメイン武器はあくまで弓。弓が壊れたり明らかに弓を構える余裕が無いような超至近距離で戦う時に使うわね。それでも威力は魔法としては大したことないから主に撤退用ね」


「(あのスピードで弓を構えられるんだからほとんど使う事も無さそうなもんだが)」


 グランへの威嚇対応を思い出し再び恐怖を噛み締め旅路を行く宗一郎。


 朝に村を出発し、昼を迎える頃、大きな城門が見えてきた。


「この門を抜けるとルーブ城下町。そしてその先に城があるわ」


 ウッド村の木造門より遥かに大きく、石造りのそれは見た目以上におおきくみえた。


「なんだよこのごっつい門は。トロルでも攻めてくるのか此処は」


 冗談混じりに宗一郎が軽口を叩くとリースから涼しく返事が返ってきた。


「ああ。今じゃめっきり見ないけど長老様が若かった頃に迷いトロルが城下町にやってきたらしいわよ。それ以来城門を強化したとかなんとか。」


「ま、マジスか…」


 思わぬ治安に狼狽する宗一郎。


「まあこの東の大陸の王都を守る門だもの。これくらい無いと。ね?」


 二人は門をくぐって城下町に入ると王都へとまっすぐ向かった。


 若干横柄な門番にグランの書状を見せると立ち所に直立してフリーパスとなった。


 そしてすぐに玉座への案内係がやってきた。


「なあなあ。もしかしなくても長老様ってすごい?」


「さ、さあ…?私も王宮への遣いなんて初めてだもの…でも、さすがに王様とつながってるだけあるわね…」


 まるで高級レストランのボーイの様に、優雅に道案内をする案内役の後に続く二人であった。


「こちらが、ルーブ王の玉座の間にございます。それでは失礼致します」


 去り際のお辞儀まで美しかった。


 そして二人の前には豪華な大扉がそびえていた。


 扉の兵士に尋ねる。


「失礼致します。私ども、ウッド村が長老、グランの命により、参りました。国王陛下への謁見を願えますでしょうか」


 よそ行き全開で、なれない言葉遣いを辿々しく使いながら書状を見せる。


 兵士は書状を確認すると、


「しばし待たれよ」


 そういって玉座の間へと入っていった。


 五分ばかり経った頃、兵士が出てきた。


「ようこそ。おいでくださいました。陛下がお待ちです。どうぞ中へ」


 開かれる大扉。


 奥へと赤と金の長い絨毯が続き、その先には豪華な玉座に座った壮年の男性がいた。


 その頭にはまさしく王冠が鎮座している。


 ルーブ王国国王 ルビウスである。


 ルビウスは二人を見据えると片手を払うように振った。周囲にいた兵士や使用人がざわめくが、部屋の外へ出ていく。どうやら人払いの合図だった様だ。


 人払いが済むと、背後の大扉が閉まった。


 そして…


 凄まじい突風がルビウスから噴き出した。


 ゴウ!と、凄まじい轟音を立て二人を襲う突風。



「う、うわっ!」


「きゃっ!」


 二人は思わず態勢を崩す。


 リースはなんとか顔を上げルビウスを見据えた。


 こちらへ手をかざしている。そして、その手がぼんやり光っている。妖しく光るルビウスの瞳。


「い、いけない。王様のあの手の光、魔力を集中してる。どんなものが来るかわからないけどとんでもない魔法よ!」


「おおお!?マジかよ!?ってかなんで王様が俺らを!?」


「知らないわよ!でもホントにヤバイわよこれは!」


 ルビウスの手から魔力が解放されようとしたその瞬間、宗一郎のポーチが光りだした。


 いや、正確にはポーチの中の、例の手記が光り輝いている。


「そ、宗一郎!?それは?」

 

「わ、わからん!」


 その光を見たルビウスは自らの手を下げた。

 次第に収まる暴風。そして同時に手記からも光が失われていく。


「いや、すまなかった」


 ルビウスの眼からは先程の恐ろしいまでの眼光は失せていた。反対に深い慈愛すら感じる暖かな眼だった。


「グランからの遣いと聞いてな。試してみたかったのだ。魔力を当てさせてもらった。」


 玉座から立ち上がるルビウス。


「無礼を詫びる。申し遅れた。私がこのルーブ王国国王、ルビウスだ」


 マントを翻し高らかに自己紹介をするルビウスの姿はまさに一国の王としての貫禄があった。見たことのないオーラに圧倒される二人。


「と、まあ固いのはこの辺で。よく来たな!お前たち!」


 ニカッと笑うルビウスからは先程の荘厳な雰囲気が消え去っていた。


 目がまさしく点になる二人


「おや?そこの娘はウッド村の出だろう?こんな対応、珍しくもあるまい」


 リースには心当たりがあった。

 それは宗一郎も同様だった。


「お前たちのよく知る長老グラン。彼は我が王家と古き盟約を交わしていると同時に私の魔法の師だ」


 点の眼をしたまま二人の口があんぐり開いた。

ご覧いただきありがとうございます。

かわせみです。

今回は王様との謁見まででしたがいかがでしたでしょうか。次回は盟約についても触れていきますのでお楽しみに!


ではでは前回のあとがきで触れたキャラ紹介ですが

第一回は我らが主人公、宗一郎くんです!では!


名前 赤井 宗一郎

体格 身長やや低め 16X.Xcm

髪型 黒髪の単発 少しツンツン

趣味 ゲーム(RPG)

好きな食べ物 焼き鳥

嫌いな食べ物 生野菜全般


こんな感じでしょうか!また不定期ですがキャラ紹介していきたいと思います。第一回試運転って事で至らない点は宗一郎君に全て背負ってもらおう…


それではまた!

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