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ドラグーンゲート  作者: かわせみ
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第三話 語られる伝説

「ここが私の家。そこでちょっと待ってて」


 そう言ってリースが入っていった家はログハウス風の家だった。吊り下げられたランタンが優しい雰囲気を出している。宗一郎が老後の余生にこういう家への憧れがあったのはまた別のお話。


 しばらく経つとリースが出てきた。


「おまたせ。行きましょうか」


 出てきたリースは先ほどの服装とは打って変わり、白いロングのワンピース姿だった。


「おっ。イメージ変わるね」


「キミどういう意味よそれ。あの服は狩猟用。機能性とある程度の防御力もあるの。これは普段着!」


 女性のイメージチェンジにも素直に褒められない。そんな純情な宗一郎であった。


 二人は長老の家へと向かう。あちこちに篝火やランタンがあるとはいえ電灯などは無く、薄暗い道を歩いた。


 そこで宗一郎にある疑問が浮かんだ。


「なあなあ。山の中でもそうだけど、街道もやけに明るかったのは何で?」


「…もしかしたら本当に長老様の言い伝え通り別の世界から来たのかもね…宗一郎って…」


 驚き呆れながらもリースは説明してくれた。


「あのね。外が明るいのは月の光が強いから。月の光は魔物の力を強くする作用を持ってるの。で、村や町には魔物よけの結界が張ってあるから魔物を強化する月の光も弱まるの。まあ、月の光も魔物を強くするまるっきりの悪ってわけでもないんだけどね」


 魔物。結界。


 恐ろしくファンタジーな単語を聞いた。普段の宗一郎なら、「コイツおかしいのかも…」とか、「お?ここは一つネタに乗っかる?」などと考えるところだが、リースがまるで小学生に日本史を教えるかのように当たり前の事実を述べているような様子に考えを改めた。


「(ちょっと信じられないが、ふざけてる様子もないしなにより自分の置かれた状況が立派な判断材料だ。もし本当に俺の世界なら山降りた時点でもううちの近所だし)」


 一つ考えがまとまる頃には長老の家の前に着いていた。


 先ほどのリースの家よりも倍ほどあるお屋敷である。


 ドアの前に立ち、ノックをするリース。


 中からいかにも老人らしいしゃがれ声が聞こえてきた。


「入りなさい…」


 はあっ。となぜか不機嫌そうにため息をつくリース。

 扉を開け、中へ入る。入ってすぐ廊下に赤い絨毯が敷かれていた。


「あれ?声聞こえたのに誰もいない」


「魔法よ。長老様、魔法も扱うの」


 廊下の奥にある扉を開ける。そこには暖炉と机と黒いローブを身にまとった長い白髪と白ひげの痩せた老人が立っていた。いかにも長老。魔法も使えます。といった出で立ちである。


「リースよ。よくぞ戻った。要件はわかっておる。そちらのお方の件であろう。ようこそおいで下さいました。旅のお方…とお呼びしてよろしいですかな?」


 ニコッと笑いかけ、頭を軽く下げる長老。


 それを見て慌ててお辞儀をする宗一郎。


「あ、はい!俺…あ、いや私は赤井 宗一郎と申します!」


 あたふたする宗一郎。それを見て顔を伏せプルプル震える長老。どうやら笑いを必死にこらえているようだ。


 再び不機嫌になるリース。


「長老様。そういうのいいですから。客人が来るたびにキャラ作るのいい加減もうやめましょうよ」


 それを皮切りに吹き出す長老。そしてポカンとする宗一郎。完全に置いてかれている。


「わーはっはっは!ええじゃろう?今回は穏やかな老紳士といった具合じゃ!まだまだコレは辞めんぞ!?」


「ごめんね宗一郎。ウチの長老様いつもこうなの。田舎村すぎて楽しみもろくにないもんだからたまに来る旅人をからかうのが趣味なのよ。」


 ひとしきり笑い終えた長老は一転真顔に戻る。


「うむ。まあしかしなんじゃ、よくぞ参られたの。我がウッド村へ。山から光が見えたでの。なんとなく察しておる。リースや。言い伝えの件、じゃな?」


 頷くリース。


「宗一郎君といったかの?気さくに宗ちゃんと呼ばせてもらうぞい。孫みたいな年じゃしの。わしの名はグランじゃ。呼び方は任せる。昔はリースもじっちゃん!じっちゃん!なんて後ろついてきて回っておったのに今では「長老様」などと他人行儀な…うっうっ…」


「弓。やっぱり持ってくればよかったかしら」


 半ギレのリースはレッサーファングに負けずとも劣らずの迫力があった。


「さてさて宗ちゃんや。キミがやってきたこの世界じゃが?」


 白々しくも話題をすり替えるグラン。余程怒らせたリースは恐ろしいのだろう、と宗一郎は心のデータベースに新たな知識を刻み込んだ。


「リースも聞いて行きなさい。お前も知らない話をこれからする。そしてお前も聞いておかねばならない話じゃ。」


 そういって暖炉の前にある揺り椅子に腰掛けるグラン。


 自然と二人も暖炉の前に座り込む。


「さて…では話すとするかの…まずは、宗ちゃんに説明じゃな。この世界は君のいた世界とは違う世界じゃ。もう薄々感づいてるとは思うがの。この世界は宗ちゃんの世界の裏側。まぁ実際表も裏もないのじゃがな。こちらの世界では主に魔法文明が発達している。宗ちゃんの世界では機械文明が発達していのではないか?」


「はい。まさにその通りです」


 うむうむ。と頷き、語りを再開するグラン


「そしてここからが本題じゃ。この世界にはこのワシの様に各地の王と古い盟約を交わしている者達が各国に点在しておる。おっと。そこも説明せねばならんな。この世界には大きく分けて四大陸が存在しておる。東西南北に散るその大陸ごとに王が治めておるんじゃ。ここは東の大陸なのでワシはルーブ王国の王と盟約を交わしておる事になるな」


 一息ついたグランが指をパチンと鳴らすと年季の入った琥珀色のパイプが現れた。煙をくゆらすグラン。


「そして、ワシ達が王と交わしている盟約こそが、宗ちゃんの様な異世界からの旅人を王宮へ遣わすことなのじゃ。そしてこれは村に伝わる言い伝えにもある、扉に備えるという意味もある」


 リースが尋ねる


「長老様。子供の頃から聞いていたその言い伝えにある扉とは一体…?」


 ゆっくりと煙をくゆらすグランが問いに答える。


「うむ。ここからリースにも聞いてもらいたい内容なのじゃ。四龍伝説は知っておるな?」


「ヨ、ヨンリュー伝説?」


「四龍伝説っていうのはかつてこの世界を守護していたと言われる四体の龍の伝説よ。東西南北の各大陸にそれぞれ龍が居て、各地を守護していた。姿なき今も守護してくれているから感謝を忘れないように。ってお伽話みたいなものよ」


「うむ。じゃがリース先生。60点じゃ」


「ええっ!?」


 グラン校長の思わぬ辛口採点に変な声が出るリース。


「概ね合っておる。合っておるが惜しいの。この伝説はお伽話なんかではない。事実じゃ。今も龍はこの地を守っておる」


 宗一郎とリースはいつのまにか身を乗り出して聞き入っていた。


「先ほどの王との盟約にも関わるのがこの四龍伝説じゃ。四龍が現在姿を見せておらんのはその必要がないからじゃ。そして、姿を見せるのはこの世界に異変が起こる時じゃ。そしてその異変が扉じゃ。その扉はこの世界と宗ちゃんの世界をつないでおる。龍はその扉が開かれることのない様守っておる。扉が開かれる時、両世界は滅亡の危機に瀕する。なのでその扉を守っておるので、四龍は世界を守護する存在。というわけじゃな」


「ですが長老様。俺が来たってことはその扉が開いたって事ですよね?でも、この世界には特にこれといった危機が起こってるようには…」


「龍が守るのは宗ちゃんがくぐった程度の規模の扉など比較にならんほどの大きな扉じゃ。そうじゃな。言うなら大陸まるごと飲み込むほどの大きさかの。その扉はこう呼ばれておる。「ドラグーンゲート」と」


 宗一郎もリースも言葉を失った。

 だが宗一郎にはまだ聞きたいことが山ほどあった。


「では長老様。俺は王宮へ行って何をすれば?」


「盟約は世界の異変に備え、旅人を王宮へ遣わせることじゃ。なんとなくの見当はつくがハッキリしたことは言えん。ワシの名で書状を出す。見せれば王に謁見できよう。そしてリースや」


「はい?」


「お前も同行しなさい。言い伝えには村に伝えておらぬ部分もあっての。旅人を支えよ。これがこの村の民が狩猟民族であるが所以じゃ。その辺の村娘よりよっぽど強いじゃろ。王宮まで案内してやりなさい」


「あ…はい。わかりました」


「以上がワシからの話じゃ!」


 締めようとするグランに最後の質問をぶつける宗一郎。


「あ、すみません。あと一つ!この世界に来た可能性がある連中がいるんです。こちらに来る時、一緒にいた友達がいるんです。3人!扉が開いたとき巻き込まれてるって事は…」


「ほう。3人か。なんの因果かなるほどのう…宗ちゃんや。お主も合わせたら何人じゃ?」



「え…四人…あっ!」


 ハッとする宗一郎。


「そう。四人じゃ。伝説の龍も四体。ワシはハッキリした事以外は言いたくない主義じゃが、ここは言ってみようかの。なんらかの意思を感じるのう。恐らくこちらへお友達は来ておる。そしてきっとお主と同じく王宮を目指すじゃろう。どの大陸の王かまではわからんがの」


 ニカッと笑うグラン


「じゃが、きっと無事でおる。それを信じてお主も無事でおることが友への救いとなるじゃろう」


 吊られて笑みが溢れる宗一郎


「そ、そうですね!あいつらの情報集めの為にも王宮目指します!リース!よろしく頼むよ!」


「いじけたり元気になったり忙しい男ね。きっちり案内したげるわよ」


 二人の姿を見て目を細めるグラン。

 そして手をパン!と打ち鳴らす。


「よし、話は今度こそこれで終わりじゃな。宗ちゃんはワシの屋敷の部屋を用意する。今夜は泊まって行きなさい。リースは明日の朝、宗ちゃんを迎えに来てやりなさい」


 グランに促され、帰路につくリースと、部屋へ案内される宗一郎。


 今夜はもう遅いという流れながら少し期待したのは彼だけの秘密である。

ご覧いただき、ありがとうございます。

かわせみです。


今回のお話で異世界の謎とタイトルコールらしきものが出来ました…よね?^^;


次回からのあとがきでは本編で語りそびれたキャラたちのプロフィールなんか紹介できればと考えています!

次回投稿ですが火曜を予定しています。少し空いてしまって申し訳ありません。


次回もよろしくお願い致します!


それでは!

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