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ドラグーンゲート  作者: かわせみ
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第一話 開かれる扉

目を丸くして驚きとある種の喜びで興奮した様子で問いかける宗一郎。


そしてそれに対し、再び語り出した泰三の顔には不敵な笑みが浮かんでいた。


「まあ、二本脚で立っていて、この太い尾だ。まず西洋のもの、いわゆるドラゴンと言って差し支えないだろう。見てわかる通りこの絵は少なくとも俺達が産まれるもっとずっと前。街の様子からして戦時中の様な意匠が見て取れることから約5〜70年前と言ったところか。一次大戦の頃なら100年近く前という事になるな」


「まてよ。そんな最近の歴史ならなんでそんな話まるで知らないんだよ。学校どころか世間の常識になったっていいはずだぜ」


割って入る宗一郎を制す泰三。


「待て。最後まで聞けと言ったろう。それは俺も真っ先に疑問視した。もし本当に記録として残すなら絵より写真の方がいいはずだしな。だが、これを描いた人物はなぜか絵を選択した。という事は空想の産物である可能性が現状極めて高いと言える」


「そうだよねえ…なんかドラゴン描かれても王道過ぎというかなんというか」


問いかける四葉とうなずきあう仁香。


「だが、だ。もしこれを事実と仮定した場合だ。絵にしか残せない事情があった可能性もまた捨てきれない」


暴走の気配を見せ始めた泰三に宗一郎始め仁香と四葉が後ずさる。


「お、おい泰三。確かに大昔の俺らの町とドラゴンの構図に驚きはしたけど飛躍しすぎだろ」


呆れ気味に諭す宗一郎に対し、更に呆れた様子で返す泰三。


「お前は人の話を聞かん奴だな。最後まで聞けと言ってるだろう。確かにこの話をただしてるだけでは妄想全開のただ痛い厨二と言えるだろう。」


「(あっ。自覚はあんのか…)」

「(あっ。自覚はあったんだ…)」

「(あっ。自覚はあったのね…)」


奇跡のシンクロを果たす3人の思考。


だが、知る由もない泰三は熱弁を続ける。


「だが、お前達にこの話をする以上、ある程度根拠というものを用意している。いや、根拠というよりは実験価値とでもいうべきか」


そう言いながらまた手帳をパラパラとめくりあるページで手を止めた。


「次はここを見てくれ。また変わらず謎の言語で書かれているが、この挿絵のところだ。」


指差された絵の所には当時から今も残り続ける、街のシンボルとも言える小高い山があった。

そしてそこには五つの点がえがかれていた。


「よし。三人とも絵は見たな。次に見せるものをよく見てくれ。これが俺の言う試す価値だ」


そう言って今度は手帳の後ろ表紙を向けた。

後ろ表紙の上部分が開いていた。中から小さな紙切れを取り出す泰三。


「ご丁寧に隠しスペースを作ってその中に入っていた」


広げてみると、そこには慣れ親しんだ文字が記されていた。


「ねえ…コレ…!日本語で書かれてるわよ!」


身を乗り出す四葉。


「ふん。ようやく四葉も話についてきたか。居眠りしかけた時には宗一郎がやった5倍は脅かしてやろうと思ったところだ。まあ仁香がうるさいからやらんがな」


むくれる四葉と諌める仁香。この図式も最早様式美の様なものだ。


「まあいい。読み上げるぞ。「この手記を読みし人間に後を託す。恐らくここに書かれている文字は読むことが出来ないはずだ。それも当然である。異国ではなく異世界の文字である。私はそこから来た。私は迷い込んだこの世界でとても優しい人々に出会えた。皆、言葉も通じない私へ読み書きを教えてくれた。だが、長くは続かなかった。ゲートが開いたのだ。同時に帰れる最後の機会であったが、龍が出てきてしまった。私ができるのは力を使い送り返す事だった。だがその戦いにより消耗しきった私は再びゲートを通過する力が残っていなかった。私に残された時間も力もう少ない。私はこの手記を私の生涯の友、青山剛三へと託す事にした。そして…」」


そこまで読み上げ、言葉を止める泰三。


その先の文章は短いが再び謎の言語で記されていた。


「と、ここまでが俺の言う試す価値だ。ちなみに青山剛三は俺の曽祖父だ」


フフッと笑う宗一郎。


「なるほどな。実際に謎の言語を使用していたとして、もしそれが事実なら異世界への信憑性も多少高まるってわけか。んで、さっきの写真。お前の言葉を借りるならこれは仮説だがあの絵の山にゲートとやらがあるんじゃないか。点はその位置を示すんじゃないかってとこか」


「ほう。宗一郎にしては読みがいい。俺の仮説と概ね一致だ。ではここから仮説ではなく提案だ。山へ行こう。今からだ」


「はいっ?!」

「今からっ!?」


同時に驚く女性陣。


宗一郎は出かけの準備を始めている。


「ちょっと、宗までそんなノリノリで…」


「いやいや四葉よ。なんか面白そうじゃんかよこんなの。もしゲートなんか無くてもなんか見つかるかもしんねえじゃん」


言いくるめられそうになる四葉への加勢に行こうとする仁香へ泰三が耳打ちする。


「仁香よ、吊り橋効果ってやつだ。こんな時間の山だぞ。肝試しも兼ねたようなもんだ。煮え切らん幼馴染どもの背中を押してやるのもまた友情だぞ」


先生の様な風格を醸し出す仁香だが、そこは年頃の女子高生。恋バナの誘惑に陥落するまで5秒といらなかった。


「四葉四葉!こういうの、案外楽しいかもよ!ほら民間伝説の調査みたいな!夏休みの研究テーマになるかも!」


まくし立てる仁香に渋々承諾する四葉。


「わかったわよ…行くわよ…ただし夜道なんだし野郎どもは私と仁香をしっかり守んなさいよ!」


一行は宗一郎宅を出て山へ向かう。小一時間ほどかけ、絵に記されたあたりの場所へ、たどり着いた。


そこは山の中腹程にあり、ひらけた小さな原っぱだった。


「この辺りだ。」


絵と比較し、場所を確認する泰三。


だが泰三含め全員が驚いていた。


「なあ…俺らガキの頃からここよく遊んでたよな」


「うん…絵で見てて何となく近いかなとは思ったけど…」


「うむ…だが…ここは…」


「今までこんなモノ無かったよね…?」


彼らが幼い頃から遊び場にしていた原っぱには彼らの記憶には無いものがあった。五つの石柱の様なもの。

それらがサイコロの5の目の様に配置されていた。


よく見ると、それぞれ石柱の形が異なっている様だが、苔むして朽ちかけているため何を形どっているかはよくわからない。


各々石柱を調べる。


「泰三、これお前のじいさんは知ってたのか?ここの石柱の事とか」


「いや今まで聞いた事すらない…だが確かに俺たちはよくここに訪れて遊び場にしていた。ほんの10年くらい前までの話だ。その時はこんな石柱は絶対になかった。だが妙だ。もし俺たちがここで遊ばなくなった後置かれたものにしては朽ちすぎている。しかも新たに動かした様な形跡すらない。まるで元々そこにあったかの様だ…」


石柱を撫でながら思案する泰三。


その時泰三の持つ手記が突然淡く光り出した。


「むっ!?」


「た、泰三くん!?それっ!光ってない!?」


「何が何だかわからん!突然光り出したんだ。」


取り乱す泰三。それに合わせて光りが強まったり弱まったりしている。


そして…共鳴するように四隅の石柱も光りを帯び始めた。


「ええっ!?今度はこっちも光ったわよ!?」


困惑する3人を前に不思議なほどに宗一郎は冷静だった。いや、正確には冷静ではない。溢れ出る彼の好奇心が混乱より状況の分析を優先させていた。


「おい、泰三!その手記ちょっと貸してくれ!」


「わ、わかった!」


泰三から手記を受け取ると、唯一光っていない真ん中の石柱へとまっすぐ向かった。

近づく毎に手記の光が強くなって行く。


「やっぱりか。さっき泰三が振り回した時、真ん中の石柱に向いた時だけ光りが強くなったんだ」


そして中心の石柱の前に立つ宗一郎。手記からはまばゆい光が溢れている。しだいに石柱にも光が灯り始める。


「ならいっそ…これでどうだ!」


そう言って勢いよく石柱の上に手記を叩き乗せた。


その瞬間、強烈な光は消え、同時に全ての石柱から光が消えた。


「お…?消えちまった…」


その次の瞬間、同時に五つの石柱が先ほどとは比較にならないほどのまばゆい、青い光を放った。


光と共に地面も揺れている。


「うおおっ!?何だこれ!?みんな大丈夫か!?」


振り向くと三人ともパニック状態に陥っていた。


そしてまばゆい光が次第に収束され、光の渦を形成しだした。


浮かぶ身体。宗一郎は人生で初めての体験に言葉がでなかった。

そして光に身体が引き込まれて行く。


救おうと、手を伸ばす四葉。

巻き込まれるのを阻止しようとよを引き止める泰三と仁香。


身体が完全に光へ呑まれる寸前に宗一郎が見た光景は、3人の身体もまた引き込まれようとしていた場面であった。


光に呑まれるにつれ、遠のいていく意識の中、声が頭に届いた。


「マダ ハヤイ ガ イイダロウ」



ご覧頂きありがとうございます!

かわせみです。

今回は泰三君活躍多めで女性陣控えめに宗一郎君が主人公色出しつつ…といった感じでしたがいかがでしたでしょうか。

今のところ、思いついた内容をほとんどノーカットで書いていっておりますが、テンポにちょっと悩むところもあります。

ノーカットで行くよりテンポも鑑みてバランスよくいけたらなあとか考えております。


そんなところで今回のあとがきはここまでとなります!

次回もよろしくお願い致します!

それでは!

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