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錬金術師の無双劇  作者: ツッチー
8/17

1ー8

「さて、これでどうしようかな」


今さっき出来たばかりの拳銃を腰に巻いたベルトに付けているホルダーにしまう。


そして椅子から立ち上がり背伸びをする。


結局拳銃を作り終わりそのまま寝落ちしてしまい体が完全に固まっていたのだ。


体を伸ばし一通り柔軟体操をして外に出ることにした。


(やっぱり実験する必要はあるよな。まぁ間違いがあっても弾の火薬量の配分間違え位だろうし…何とかなるよな)


拳銃の本体については他の本に書いてあった技術をそのまま流用させてもらった。


回転をかけると弾が安定するというジャイロ効果?という良く分からない効果が書かれていた武器をから構想を貰った。


それでかなり弾が安定したのだ。


(まぁ、それだけじゃないけどね)


他にも物を狙いやすい様にレッドサイトとかよく分からないものを付けた。


だが分からないはずなのに()()()()()様に感じた。


まるで誰かに知識を分け与えられてるような不思議な感覚を得るのだ。


(……まぁ深く考えるのも後にしようか)


そう思い顔を上げると既に冒険者ギルドの目の前まで来ていた。


僕は集中していると周りが見えなくなるタイプらしい。


研究者としてはいいかもしれないがまだ研究者では無いのだ。


逆に冒険者になるには邪魔になるかもしれないな。


中に入ると見るからに柄の悪そうな冒険者が数人屯っていた。


そして僕の方を向き笑った。


どうせ『餓鬼がこんなところに何しに来たんだ』的な事だろう。


絡まれると面倒臭いのでカウンターまで足早に歩いた。


「あ、リンさんじゃ無いですか。お久しぶりです」

「お久しぶりです」


するとエルフの女性で尚且つ受付嬢のシェーラさんが声を掛けてくれた。


やはり目線が下に行ってしまうのは不可抗力なのだ。


男だったら仕方ない。


僕は極力目線を下げないよう気よつける。


「リンさん、何で最近来なかったんですか?」

「本業は戦闘職じゃないからね、そんなに来る理由が無いんだよ」

「そうですか、それでは今日はどんな依頼をやりますか?」


僕はシェーラさんに差し出された依頼書を見ながら悩む。


正直実験をしたいだけなので依頼はしたくないのだが、ゴブリンの討伐依頼を受けることにした。


そうすればゴブリンを倒しながら実験も出来、依頼達成の報酬まで貰える。


一石二鳥ではなく一石三鳥とでも言えるだろう。


「それではお気おつけて下さねー」


ニコニコと笑顔を向けてくるシェーラさんに小さく手を振り冒険者ギルドを出た。


その時に嫉妬の目を向けられたのはスルーする事にした。


僕は城壁の外にある森の中に入った。


この森はここら近辺では一番大きく、そして初心者向けなのだ。


出てくる魔物も最高でオークまで。


オークは初心者が十人集まれば余裕で倒せる程の強さしか持っていない。


勿論個体差はあるが平均するとそんなもんだ。


それでも女の敵であることは変わりない。


他の種族の女を苗床に繁殖しているのだ、どんな種族にも嫌われている。


勿論、ゴブリンもオークと同じくらい嫌われている。


それは言わなくとも分かるだろう。


(……それにしても全然いないな)


先程から歩きながらずっと思っていた。


森に入ってから一時間程が経っているのに魔物一匹見つからないのだ。


これは異変と言っても過言ではない事だ。


本来ならば10分事にエンカウントしてもいい程に魔物は多いはずなのだが…物音もしなければ獣の匂いもしない。


(本当にこれはどうなってんだ?)


既に一時間以上歩き回っている。


その状態で魔物に会わない、世界が覆っても有り得ないだろう。


()()()()()()()()()


自然に起きた事象、火山の噴火などその土地全てに被害が出る様な災害が起きない限り魔物が居なくなる事なんて有り得ない。


魔物とはそのような生き物だ。


(はぁ、ギルドに報告しに帰るか)


どうせこの森にいてもこれ以上収穫は得られないだろうと僕は歩みを止めて先程きた道を引き返そうとした。


「──────ッ───────!」

「……何でこうも面倒事が」


森の奥から大きな声が聞こえた。


僕は大きくため息をついて体を先程の進行方向に向けた。


そして自分の持てる全力で走った。


道は悪いが多少は何とかなっている。


そして一分程だろうか。


肌の色が黒いオークが見えてきた。


そしてその周りには腰を抜かして倒れている老人とオークの攻撃を防いでいる四人の騎士がいた。


遠目から見ても分かる異変。


そしてそのオークが放つ威圧で本能が警鐘を鳴らしていた。


(…これ、勝てないよね?)


そう思えるほどの力を持っている。


確実に()()()()()()()()だと勝てない、いや、下手すると中堅のパーティーでも勝てないだろう。


それでも、自分の作った魔道具でどこまでいくか試したい。


そんな欲求が心の奥底から出てくる。


僕はこんな状況であっても高揚する自分に嫌気が差したがそんなのはすぐに吹き飛んだ。


先程まで均衡に渡り合っていた騎士の内一人がオークに吹き飛ばされたからだ。


吹き飛ばされた騎士はろくな受け身も取れずに地面に落ち、数回回転をして止まった。


死んではいないだろうがかなり危ないのは素人から見ても分かるほどだ。


僕はホルダーから銃を抜き空に向かって一発だけ放った。


バァン、と乾いた音が森に鳴り響く。


それと同時に両耳の感覚が無くなり、腕の骨が折れるかと思う程の衝撃が襲った。


「ッ!…ここまで反動強いのか。これは想定してなかったな」


でも目論見は成功した。


今の音により騎士とオークは完全に動きを止め音の鳴った場所、つまり僕の方を見ていた。


騎士はそれを見て『帰れ!』とジェスチャーしているがそんなのは関係ない。


そのまま走り騎士に端的に作戦とも言えない作戦を伝えた。


「今から三人でオークの動きを止めてください、五秒だけお願いします」

「何か倒せる方法でもあるのかい?」


僕は騎士の口がどう動いたかで判断したが否定的な意見ではないようだ。


取り敢えず首を縦に振る。


すると三人の騎士がオークを取り囲むような陣形をとり薄皮を切るような攻撃を繰り返した。


ヒットアンドアウェイで繰り出される攻撃にオークは完全に激昂しており暴れている。


そして三人の内一人の方に向いて走る。


すると先程まで倒れていた騎士が魔法を発動した。


「盗神よ、一夜限りの命に応えよ『拘束(バインド)』」


既に瀕死の状態だというのに魔法をだす技能、そしてそれをアイコンタクトで伝える四人の連携に舌を巻くが自分のやることはやならければならない。


銃口をオーク頭に向ける。


そしてしっかりとスコープを合わせ反動に耐えられる様な姿勢を取る。


そして一発、大きな音を鳴らしながらオークの脳漿を飛び散らせ

弾丸は貫通した。


「やった、か」


口からそんな言葉が漏れた。


その声には自分で制作した武器への驚きと、気を張っていてそれが無くなり安堵の気持ちが現れたものだった。


そうして数秒ほど、体感時間だと一分ほどではあるが気が抜け歩こうとした瞬間足から力が抜けた。


「………へっ?」


自分でも気の抜けた声だと理解出来るほどには現状を理解してるが何が起きたか分からない。


そして顔が地面に近づいているという事で現状を把握した。


そうして一瞬痛みが体を走ったと思うと僕の意識はそこで黒く塗り潰された。


▶◀▶◀▶◀▶◀▶◀▶◀▶◀▶◀▶◀▶◀


空が白い。


周りを見渡しても何も無い。


見えるのは永遠と続く空間のみ。


足が地面に着いているのかすら分からない。


上下左右すらあやふやな世界で僕は立っていた。


いや、浮かんでいると言う表現の方がただしいだろう。


そう思っていると何処からか声が聞こえてきた。


『…再び会えましたね』


誰だお前は。


『貴方の恩人ですよ、忘れているのですか?』


恩人?なんの恩人だ。


『勿論、命の恩人ですよ』


生憎、短い生涯の中で命の危機に晒された事なんてないんだ。


『今の世界ではありません、貴方の前世のお話ですよ』


……前世?だからお前は何を─────


『残念ながらお時間の様です。またいつか会いましょう、いつまでも貴方を慕っておりますから』




























目を覚ますと体が揺られているのに気づいた。


横になっている場所は馬車の中のようだ。


商人が持つような、幌だけが日差しを遮る安っぽい馬車では無く、貴族が乗るかの様な高級な馬車。


多分ではあるが騎士の人達が乗せてくれたのだろう。


未だに痛い頭で今の夢のような世界を振り返る。


(……これ僕の記憶、か?)


すると確実に経験していない()()が浮かんできた。


『赤羽翔真、高校生、通り魔事件に巻き込まれ死亡』


全く意味のわからない文字の羅列。


過去の言葉でも何でもないという事だけは確実だ。


(……これはやっぱりさっきの事が切っ掛けでこうなったのか)


上半身を起こし思考に耽る。


「おや、もうお目覚めかい?」


すると目の前の老人が声を掛けてくれた。


「はい、ご迷惑をお掛けしました」

「いやいいよ、救ってもらったのはこっちだ。恩人ならこれぐらいは普通だ」

「そ、そうですか」


そう言って会話が途切れた。


そしてそれに気を使ってか、老人の方から自己紹介をする事になった。


「さて、貴方も起きたばかりだから私の方から自己紹介等をさせて頂こう。私はアルガス、しがない魔法講師だよ」

「アルガスさんですか……しがないとは些か謙遜し過ぎては無いでしょうか。『全属性使い(マジックマスター)』と呼ばれているのに」

「おや、名前は知られていたのか」


そう言って目の前の老人、アルガスはクツクツと笑った。


僕はアルガスさんが笑い終わるのを待って


「それでは僕の方からも、僕はリンと言います」

「ほぉ、リンと言うのかね。それではリンくん、病みあがりで悪いんだか一つ頼まれてくれないかい?」

「は、はい」


出来る範囲であれば、と心の中で付け足して。


「君の錬成の腕は半端では無い。それを見越して非常勤講師として雇われてくれないか?」

「……はい?」

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