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初めてと言うわけでは無いのですが未だに慣れておりませんので拙い所が多数あると思います。
また誤字、脱字等はご連絡下さい。
とある日のことでした。
1人の男の子は勇者の職業を得ました。
そして賢者、聖女、盗賊王などの職業を持つ者とパーティを組み魔王を倒す旅に出ました。
襲いかかって来るモンスターに周りの冒険者やサポーターが倒れていくのにその者達の無念を晴らそうと全力で魔王と戦い、そして勝利しました。
しかし勇者達が魔王に勝った一瞬を狙い賢者が聖女と勇者の二人を洗脳したのです。
そしてその賢者は新たな魔王として魔族を率いました。
人類最高峰の戦力、勇者と聖女を手駒にして。
この世界は十五歳に成人となり『職業』を貰うことになっている。
僕は平民ではあるが国としての法律のため必ず近くの教会まで足を運ばなければならないのだ。
だけどボクの村から近くの教会までは丸1日かかってしまう。
そのため司祭様が派遣され洗礼を受けることになっているのだ。
これはかなり優遇されており、一部の地域では教会まで二日かかるのに派遣は無いという場合もある。
これは感謝しなければならないな。
そして明日が洗礼を受ける日であり、明日僕達が成人になるのだ!
と言っても小さい村なので僕を含めて五人、幼なじみのフィール達と一緒に洗礼を受けるだけだ。
そんな事もありながらも心は踊っていた。
興奮してベットに潜り込んでも目が覚めていて月が落ちる少し前に夢の世界へと旅立って行った。
「リン、リン起きて!」
「…?ああ、フィーじゃん。どうしたの?」
「そうじゃないよ!今日は洗礼がある日だよ!」
「……忘れてた!」
僕は鈴のように綺麗な声で起こされた。
僕とフィーは仲が良く、昔からずっと一緒に行動していた。
昔は僕がちゃんとしていたのにいつの間にか立場が逆転していた。
そこに月日の流れを感じたりする所もうおじさんなのだろうか?と偶に疑問に思ってしまうが枯れて無いので大丈夫だろう。
僕は急いで服を着てリビングに出る。
するとお母さんが朝食の準備をしていた。
既に父さんは狩りにでも出かけたのだろう、家の中には居なかった。
「あら、フィーちゃんじゃない。いつもごめんね、リンの世話をさせちゃって」
「いえ、私がしたい事なので大丈夫です」
「あらそう、なら早く結婚して欲しいわ。フィーちゃんみたいなしっかりとした子なら私も安心出来るのだけど。あの子、意外と腕っ節は強いから守ってくれるし、優良物件だと思わない?」
「…あの、その事はもう少し後でお願いします」
「ふふ、顔を赤くしちゃって、可愛いわね。大丈夫、ちゃんと貴方の親御さんには許可は取ってるわ」
僕が口にパンを突っ込んでいる時に後ろで何かを話していたが僕には聞こえなかった。
ただ家を出る時に顔を赤いことを指摘したら『リンのせい!』と殴られた。
解せぬ。
そしてこの村に唯一ある広場に既に司祭様はいた。
見た目はかなり歳を取っており長旅でかなり疲れている様子だった。
それでも僕達の為にやってくれるのだから感謝の念しか湧かない。
そして僕とフィーのほかに三人が集まった。
その三人とも男子で同年代で女子はフィーしか居ない。
フィーはこの村だと一番綺麗で王都に行ってもそれは変わらないと思うほど綺麗だ。
だが僕はそんな子に好かれてるなんて自惚れていない。
だからあの三人で取り合ってくれればいい。
まぁ自分が告る勇気が無いだけなのだが。
「よし、それではいいかい?少し痛いと思うが我慢するんじゃぞ。それじゃあ目を瞑って」
そう言われ、言われたままに目を瞑る。
すると右手を何かに掴まれた。
一瞬ビクッとしたがよく触ればこれはフィーの手だというのが分かった。
多分フィーも緊張しているのだろう。
僕もしっかりと握り返した。
女の子の手ってどうして柔らかいんだろうなんて思っていると一瞬、体を通り抜ける様に電流が流れる感覚がした。
そして頭の中に自分の貰った職業が浮かんだ。
(…『錬金術師』?)
こんな職業は聞いたこともなかった。
確に『錬成術師』は居るが『錬金術師』は一切知らない。
一応生産職の職業を取ったので生きることは出来る。
そこに内心安堵して目を開く。
するとフィーが物凄く嬉しそうな顔で俺を見ていた。
「ねぇ!リン!私『勇者』の職業取ったよ!」
「……えっ?」
一瞬聞いたことが信じられず口から息が漏れるような声が出た。
思えば周りの奴も『賢者』や『剣闘士』、更に珍しい物で『魔法拳闘士』を取ったと言っている奴もいた。
それを微笑ましそうに見ている司祭様だが僕はなんにも言えずに「あぁ…そう、凄いじゃん」と生返事をしてしまった。
だがそれに気づいた様子も無くフィーは自分が世界を救うということに興奮していた。
僕はさり気なくその場から離れ司祭様に職業を告げて自室に戻った。
そしてベットに倒れ込みそのままふて寝した。
泣きまでは行かないが流石に悔しかった。
子供は全員勇者を目指すものだ。
その為僕も全力で頑張ってきた。
親から剣術を習い、そして魔法の理論を片っ端から覚えた。
これで勇者になれると思っていた。
(八つ当たりなのは分かってるんだ。それでも…悔しいよな)
そう思いながら瞼が閉じて行った。
そして夜まで寝てしまった僕はまたフィーに起こされた。
だが今回は様子が違い少し顔が赤くいつもより女の子らしかった。
そんな姿にノックダウンされそうになりながらも僕はフィーに着いて行った。
しばらく何も話さずに歩き続けつける。
既に人通りのないむらの中を歩き回るのは何か新鮮で窓から漏れる明かりが綺麗に見えた。
この村で唯一ある丘に生えている一本の木が月の光により影を地面に落としていた。
そして木の根元辺りまで行くとフィーが止まり僕の目を見て来た。
胸が少しときめくが顔を引き締める。
「ねぇ、リン」
「…なに?」
少し間が空いたがしっかりと言葉を返せた気がする。
「私、これから暫くリン達に会えないの」
「やっぱり『勇者』の職業の影響?」
「うん、勇者に賢者、聖女と共に世界を回って成長しろだって」
「…そう」
「だから─────」
風が頬を撫でフィーの髪を揺らす。
真っ赤な髪が揺れるのは月明かりしかない中でも良く見える。
その髪の奥に見える紅色の目が僕を射抜く。
「だから、それが終わったら私を迎えに来て」
「…えっ?それはどういう───」
「だからこういう事よ」
頬を両手で優しく挟まれ唇に柔らかく湿った物が触れる。
十秒程だろうか、頭の中が真っ白になり気が付いたら目の前には顔を紅く染めたフィーがいた。
それでも感触は覚えている。
そこに気づき自分でも顔が紅くなっているのを感じる。
「えっ」
「…これ以上は私に言わせないでね、恥ずかしいから」
自分の思った事より全く違う展開に素っ頓狂な声しか出なかった。
それでも現実だということを確認していきそういう事なのだと認識が追いついた。
「分かった、必ずフィーの事を迎えに行くよ」
「───うん」
何時もの貼り付けた様な笑みではなく、純粋で女の子ぽい笑顔を向けられ胸が今までの中で一番高鳴る。
僕はフィーの細い体を抱き締めた。
そして先程一つになった二つの影が再び一つになった。
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太陽がジリジリと照りつける中、白塗りの馬車が街道を走っていた。
その馬車は一つの村へ成人の儀を執り行い、そこから教会へ戻るためのものだ。
そしてお世辞にも広いと言えない馬車で白い髭を生やした司祭様と呼ばれていた老人が独り言の様に口を開いた。
「錬金術師か…これまた数奇な運命だな。あの村からまた出るとは…まぁあの少年には頑張ってもらう他ないのだがね」
「司祭様、何か御用で?」
「いいや、今のはただの独り言だ。気にするな」
そう言うと向かい側にいた男性はすぐに窓から外を眺めた。
それにつられて、という訳ではないが外に目を移す。
豊かな緑に包まれた森が広がり、それがただ永遠と続いていた。
題名の変更はこれからのストーリーによって変更があります。