神の誕生
〜20年前〜
都内某病院
「患者の容態は!?」
「母体、新生児共に心肺停止状態です!」
手術室のライトに照らされて慌ただしく医師達が動き回り、機器類が危険な音をかき鳴らしている。
「脈も止まります!」
「くそっ!このままでは医療事故だぞ!どんな手段でも構わないから食い止めるんだ!」
〜4時間後〜
院長室
「やってくれたね柿崎先生」
やや小太りな老年の男が眼鏡から厳しい眼光を浴びせた。
「申し訳ありません院長。母体の容態が急変いたしまして…新生児を優先した筈でしたが…」
「その新生児も死亡したと」
「はい…」
細身で弱々しい雰囲気の30代の男は肩を落とし、院長の言葉を聞いていた。母親と新生児を殺した。その事実が重くのしかかる。
「柿崎先生。」
「はい」
「新生児を助ける方法がある。賭けだが」
助ける方法がある!?そんな事ありえない…。
担当した自分が誰よりも分かっている。自分で殺したのだから。
でもそのまともでない言葉にすがることしか出来なかった。
「方法とは…何でしょうか」
「共犯者になってもらえるかね?もっとも君にはそうするしかないだろうが」
黙って頷いたのを確認すると院長は電話を取った。
「プランCOGの被験体が見つかりました」
この日私は取り返しのつかない事をした。