8 / モンスターマスター①
女神シロノが帰った後、人間を創ってくれていると言うことなので、俺たちは世界樹の上で景色を眺めて計画していた。
「モンスターってもしかして地道に一回一回創造していくのか?」
もしそうであれば今日は徹夜するしかない。
テルはバッグの中から水筒を取り出した。
「いえ、それでも良いのですが、ここはモンスターを自然スポーンするように設定しましょう。オプションで環境設定のところにあったはずです」
なるほど、確かにあるな。
モンスター 自然スポーン。
「出てくるモンスターはみんなレベル1からなのか?」
「はい。種族によってレベルアップ毎のステータスの上がり方や初期ステータスが違ったりするので、結果的には強い種族のレベルが上がりやすいのですが、その地域の環境によって下位種族でもピラミッドの上位層にくいこめると思います」
やけに詳しいがステータスの概念もテルが考えたのか?
子供の遊び心みたいなものか。
「ちなみにですが、下位種族は上位種族に素質は劣りますが、レベルアップまでの経験値必要量が少ないので、そこまでバランス悪いかと聞かれるとそうでもないです」
「ほー、配慮してるんだな」
なら総合評価SSSだったカルヴェリオンがあの短時間で自動でレベル2上がってたのって、世界樹の影響凄すぎないか。
下手すれば世界樹の周りだけレベル100超の下位種族がうじゃうじゃするようになるんじゃないだろうか。
鼻で笑って、パンを口に運んだ。
カルヴェリオンに見逃してもらえても、その辺の強めの下位種族に追われて殺される異世界転生者の姿が目に浮かぶ。
「そのスーツ、なんでそんなに耐久性高いんです?色々作業したと思われるんですけど、穴どころか綻びすら出来てないじゃないですか」
着ているスーツを見てみたが、確かに砂埃や何やらが付着しているだけで、傷んでいるという様子はない。
着ているスーツまで強くなっちまったか。
「俺が異世界で作ったんだ。すげえだろ?」
しょうもない嘘をついて立ち上がった。
「よし、今からモンスター創るぞ」
「この世界の全エリアにランダムでモンスタースポーンですよね」
効果は俺が停止させるまで続く。
自動創造はランダムでモンスターを創造するが、上位種族の創造確率は下げてある。
つまりスライムのようなモンスターの割合が高くなるということだ。
決して、スライムを馬鹿にしている訳ではない。
何か物足りない気がして、小さく唸った。
「どうかしたんですか?」
「いや、何かな…物足りないような気が」
あ、そうか!
杖だ、杖!
シロノさんも持ってたあんな感じの小道具がないと、創造してる気分になれない!
「なあ、分かるだろう?」
「……何がですか?」
「ほら、ロマンってやつ」
察しろと言わんばかりの手振り身振りをしてみた。
「なるほど、お手洗い、行ってらっしゃいです」
「ちげーよ道具だよ道具!お前ほんとに玉ついてんのか!」
「汚いですよ。シロノさんのような小道具が欲しいんですね。ご自分の服のポケットに何か入っていませんか?」
何か入っているかと言ってもなあ…。
内ポケットに黒いペンが入っていた。
「そのペンとかどうです?」
ペ、ペン……。
「そうだな」
この際何でもいいか。
「じゃ、いくぞ」
ペンを勢いよく前に振った。
風を切る音がして、静かになった。
「終わった、のか……?」
「そう……みたいですね」
テルの目の前にスライムが現れた。
「おっ、きましたよ!これですこれ!」
青く透き通った体に、地面が見える。
「水っぽいな」
[生物情報]
――――――――――――――――――
総合評価E
名前 スライム
種族 軟体
系統 無
形態 第一形態
固有スキル 名前がありません
Lv 1/10000
生存時間
ステータス HP:12
STR:4
DEX:3
DEF:1
AGI:2
INT:1
MND:2
LUK:3
CHA:1
後天性スキル: 無し
出身地 世界樹
―――――――――――――――――――
お、おお…。
何も言えない弱さ。
「どうです?やっぱり弱いでしょ?」
「そうだな。でもこれが普通なんだろう?」
「ですです。ボクにはステータスは見えませんが、これが最弱モンスターのスライムです」
ん?
レベルがどんどん上がっている。
[生物情報]
――――――――――――――――――
総合評価E
名前 スライム
種族 軟体
系統 無
形態 第一形態
固有スキル 名前がありません
Lv 5/10000
生存時間
ステータス HP:22
STR:8
DEX:7
DEF:4
AGI:5
INT:2
MND:3
LUK:4
CHA:1
後天性スキル: 無し
出身地 世界樹
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なんかまだレベル上がってるけど、大して強くならないな…。
静かに様子を見ていると、何を思ったのかテルがスライムを蹴り飛ばした。
水風船が敗れ弾けたような音がして、スライムは消えた。
「急にどうした!?」
「いや、この木って多分特別な場所なんですよね、創造凝ってますし。木の上にスポーンするの無しにしておいた方が良いかなと思って」
確かに世界樹の上で大量のスライムが這い回るのは違和感あるな。
「そうだな。遺跡内に湧くのも無しにしておくか」