7 / 創造神に助手とか要ります?②
「失礼ですね。正真正銘男ですよ」
テルは帽子を脱いで、腰に下げていたバッグにつめこんだ。
「……まあ、正直言うとな、男か女かなんてどうでもいいんだが、肝心なのは俺が子供のお守りをしなくちゃいけなくなることだ」
世界のその言葉を聞いた途端、女神シロノは声を出して笑った。
「そうね、確かにテルはまだまだ子供な所が多いわね」
「呼んでおいてその言い方はないんじゃないですか!」
世界はズレていたネクタイの角度を直して、回れ右をした。
「よし、それじゃあ俺は作業に戻るから」
「待ちなさい」
予期しない鋭い声に、背筋が伸びる。
「テルを助手として迎え入れなければ、創造神としての権限を剥奪します」
創造神としての権限の剥奪……?
前へ前へと進めていた歩が止まった。
女神って、そんなこと出来るのか!?
冷静になれ、俺を丸め込めるために言っているだけで、ホントはそんなこと出来ないかもしれない。
振り返って、女神シロノの顔を見た。
片目を細くして、余裕あり気な表情を見せつけている。
ま、マジかー……。
「そういう事なら、先に言ってくれるといいんですが……」
ここは下手に出て、なんとかやり過ごそう。
「何を言っているんです?」
え。
「いや、ですからその」
「なら、今言いました」
シラは切るし強行突破かよ!
テルが二人の間に入る。
「いいですよ。異世界創造とはスケールの大きなものですから、少し興味はありましたが、当の本人が嫌がってるじゃないですか」
9歳の子供に助けられて情けないけど、いやー助かるな。
「今さら無かったことにしてもテルの部屋は空いてないけど、良いかしら?」
「ぼ、ボクの部屋に誰が入ったんですか!聞いてません!」
なんだ、何の話だ。
「代わりにマークが入ったわ。どうしてもって言うなら、一緒の部屋にしてあげるわよ」
「うぇえ……マークはお漏らしばかりするから嫌だよ!そんなの御免だ!」
「なら、決まりね」
女神シロノがそう言うと、テルは世界の元へ走ってきた。
イマイチ話が見えないが嫌な予感がするな。
テルは切羽詰った様子で、胸を叩きながら言った。
「助手にしてもらえませんか!ボク、一応シロノさんと交信とれますし、ある程度のことは自分で出来ますよ!」
ある程度のこと、ねえ……。
[生物情報]
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総合評価A
名前 テル
種族 人類
系統 戦闘系
形態 子供
固有スキル 名前がありません
Lv 74/10000
生存時間
ステータス HP:9400
STR:2600
DEX:3000
DEF:1600
AGI:3200
INT:2900
MND:2500
LUK:2200
CHA:1700
後天性スキル:無し
出身地 出身地が存在しません
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……なんか、わりと強くないか?
レベル74って今まで何して生きてきたんだよ。
出身地は、この世界出身でないとするなら当たり前なのか。
流石に弱すぎたらどうしようかと思ったが、これならそう問題は無さそうだな。
何かあったら俺がフォローしてやればいい。
手を差し伸べた。
「わかった、よろしくな」
テルは差し伸ばされた手に一瞬驚いたが、すぐ両手で握手してきた。
「どうも、よろしくです。あ、そうだ」
「どうかしたのか?」
テルは帽子を浅く被って言った。
「システム、作ったのボクですよ」
システム?
「ほら、あなたが見てるステータス画面とか」
「ああ」
「イメージで創造する…の原案とか!」
「……ああ!」
「それでは、私は人間を創っておきます。こればっかりは創造に手間がかかるから、先に色々しておきました」
女神シロノはそう言ってまた杖を振った。
光が現れ、そこへ消えてゆく。
テルは上空へ昇っていく光に手を振っていた。
人間創ってくれるのか。
それなら、俺たちはモンスターの創造といくか。
「テルには創造神の権利…はあるのか?」
「無いですよ。なのでお手伝いする形になります」
「そうか」
よし、徹底的にこき使ってやろう。