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(異)世界は掌の上で  作者: 倫理観
~創造神(仮)の研修期~
22/23

21 / 交錯する”なにか”

 

 真っ暗闇に包まれた森に、火が灯る。

 世界と集落に住む人間たちは、共に小さな火を囲んでいた。

 世界が木の幹に座っているところに、クレイがやって来て隣の石に腰を下ろした。


「先程の事は本当に、なんと礼を言ってよいか……」


「いやいや、良いんだよ。俺だって元々殺すつもりは無かったしな」


「あなたが居なければ、今頃あの3人はどうなっていた事か……このご恩は一生忘れない」


「……」


 周囲を確認して、確信した。


 食料を必要としていない。

 集落の近くには農耕地は見られないし、モンスターは倒してしまえば消えてしまう。

 食事という概念すら存在しないのか。

 俺の知らないところで、色々設定されてるなあ。


 確かに食料に困らないしその心配もしなくてよくなるが……

 なんかこう、それは違うな。


 火の周りで駆け回るイルミとレミを見て、深呼吸した。


「じゃ、俺はこの辺で」


「もう行くのですか」


「ああ、やる事が山積みなんだよ」


 ここに居ると、色々と思い出すものもあるからな。

 母さんは元気にしてんのかな、俺死んじまったけど。

 他に俺が死んだことを悲しんでくれる人っていたか。


 ……気がかりだ。

 あの後のことを知りたい。











 左右に僅かな光源があるだけの暗い廊下を、音を殺して歩く。

 恐怖故?……それは違う。

 光源によって見える床と壁は、汚れ一つ無い。


 全ての世界を管理する為の聖域である。


 しばらく歩いているうちに、大扉が目の前に立ち塞がった。

 それを2回、小さくノックする。


 装飾の入った重そうな大扉が、ゆっくりと開く。

 誰かの声が聞こえるということは、ちょうど報告をしているところだろう。


 ”報告を聞くことを許されるのは対象者のみ”


 その教えを守って、耳栓をした。


 システム更新についての報告か、不具合の報告か。

 3日に一度、または不具合の発覚時にシステム管理者が報告する事になっている。

 と言っても、ボクはその為に来た訳ではない。



 おそらく30分が経った。

 等間隔に音を出す時計が睡魔を呼び寄せる。


 徐々に眠気がしてきたあたりで、ようやく報告を終えたらしい。

 ノヴが光源を持って目の前に立っていた。

「報告が終わった」と言いたいらしい。

 口の動きだけでそれは伝わった。


 コクリと頷き、光源を受け取る。

 すれ違いざまに、テルにだけ聞こえる声で言った。


「F11のE8だ」


「まさか、本当に……!?」


 ハッとして振り返るが、ノヴの姿は既にそこには無かった。

 歩を進める。


「テルです。現状の報告に」


「座って」


 シロノは右手を若干あげて、テルの傍にあった椅子を動かして、座るように促した。

 それに意を介することもなく、話し始める。


「世界の創造から4日程が経ちつつありますが、特に変わった様子はありません。想定外の行動もとっていないと思われます。危険思想の持ち主でもないかと。」


「その根拠は?」


「彼は支配することや優越感を得ることに対して興味が薄いのだと思います。現段階で既に9割の人間のラインを越えています。研究により予めプログラムされた一連の流れから外れることなく、進んでいきそうです。この流れですと……次は各エリアの設定に入ると」


「研究の成果、ということもありそうね。」


「これまでに320人中105人が最低条件をクリアし、次に28人がそこからの12ヶ月をクリアしてきました。この中で5年以上世界を創造し続けられたのは僅か7人。そして彼の最低条件のクリアタイムは群を抜いています。」


 最低条件とは、世界の拡張限界まで創造するというものである。

 世界はこの最低条件を、初日でクリアしていた。

 しかし、これはシステムの補助あってのことだ。

 いくつかタイプがあって、そこからは想像によって大きく変わっていくのだが……。


「地球型を選んだみたいだけれど、海は創らなかったのね。何故かしら?」


「何故でしょうか、全く分かりません。確認してみたところ、世界の99%以上の面積が森となっているようで……」


 資料を片手に頭を掻いた。


 ただ忘れていただけなのか、それとも故意にした事なのか。


 シロノは明かりを消して立ち上がった。

 元々暗かった部屋が、遂に漆黒に支配された。


「彼の記憶を辿ってみたわ。そこで驚くべき事実を知った。今その報告を聞いて確信したわ。……彼はまだ幼い頃に片親と兄弟を亡くしていたの。でも、彼自身がその時何があったか記憶に無いのよ。それに関連しているであろう事件を見つけたの。」


 息を呑んで、椅子に座った。

 聞くべきか?


「……それはなんです?」


唐突すぎる

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