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(異)世界は掌の上で  作者: 倫理観
~創造神(仮)の研修期~
20/23

19 / 集落への訪問

 

 ―異世界創造記3日目 8h24M―


 創造神の状態だと風も温度も何も感じない。

 揺れの無いドローンのようで、まだ違和感がある。

 うーん、なんだろうな……。


 静止して、辺りを見渡した。


 特に真新しいわけでもない景色、永遠と広がる緑。

 見ているうちに凹凸がなく、ただの緑のカーペットのように見えてくる。

 だが、この違和感はそれではない……。


 そうだ、思い出した。

 創造したものと違うんだ。

 初期地点からそう離れていなかったからかすかに覚えていた。

 ここには、本来谷が出来ているはずだった。


 では何故、想像通りにいかなかったのか?


 そもそも場所違い。

 俺のイメージが足りていなかったために創造物として認識されなかった。

 一度に創造するものには限度がある。


 場所違いなんて言うのは除外するとしても、イメージが足りていなかったからと言っても太陽は創造された……なんとなくのイメージで良かったはず。

 限度があるにしても谷は創造されずにその先の世界は広がっている……ここが一箇所だけ創造されなかった理由にはならない。


「んー……あっ」


 理由が分かったわけではなかったが、ふと思い出した。


 テルってシステムを作った何人かのうちの一人なんだよな。

 初日の時とメニューの表示も少し違うし、もしかして……システムはそいつからが少しずつアップデートしていっているのか?

 そうなら不具合も考えられるな。


 でもなんだか……


 管理されてるようで癪に障るな。

 どこかで監視でもされてるかのような……。


 空を見上げて拳を強く握った。

 果てしなく広く、自由なようで何処かから見られている世界。


「俺はひねくれ者だから、思い通りにはなってやらないからな」



 俺が創ってた家とかどうなったんだ?

 すっかり忘れてしまってたな。


「行ってみるか」






「イルミお姉ちゃん、これ、お花で作ったの!」


 レミの汚れた手のには、花で作られた髪飾りが乗っている。

 多少形は崩れているが、一生懸命作ったとよく分かるものだ。


「ありがとうレミちゃん。大切にするね」


 イルミはそれを受け取って、髪につけてニコッと微笑んだ。

 レミは満足そうに足踏みした。


 木造の家が十数軒あるだけの小さな集落である。

 男たちは足りなくなった石材を伐採してくるということで、今集落に居るのは女性のみだ。

 それもイルミとレミの2人の少女以外は、みな木材の加工中である。


「クレイさんたち、いつになったら帰ってくるの?」


「うーん、日暮れまでには帰ってくるのかな。クレイさんから戦い方を教わらないとね!」


 クレイとは、この集落で一番の戦闘員だ。

 夜になると来るモンスターによる襲撃を一人で二度も対処した、彼女らからすれば英雄のようなものである。

 石材の採集地にはモンスターが多いので、護衛に行ったのだ。


「あ、マーさんだ、どうしたの?」


 走ってきたマーは、2人を抱えてそのまま建物の裏へと回った。

 静かにするようにジェスチャーを送って、建物の影からじっと様子を見る。


「何かあるの?」


 レミがそう尋ねて顔を出すと、汗をかきながら答えた。


「ペアードウルフよ、これまで昼間は来なかったのに、男たちが居ないと分かったらこうよ!群れで襲撃にきたの!」


 ペアードウルフは匂いを嗅ぎながら、少しずつ近づいてきていた。


「マーさん、あれ見て……」


 イルミが服を引っ張るが、近づいてきているペアードウルフから一切目を逸らすことはない。


「あれ、あれ……」


「ごめんね、目が離せないの……!」


 後ろの方で声が聞こえる。


 振り返ると、妙な服を着た人間にペアードウルフが唸って威嚇していた。


「え、何あの人。大丈夫かしら……」




「うるさい。何か用あんなら言語で頼むわ、ノイズなんだよ」


 それでも威嚇することを止めない。


 なんだコイツ……みんながみんな言語を使える訳じゃないのか?

 今”人間モード”だけど、噛みつかれんのかな。


 世界はおもむろにポケットに手を突っ込んだ。


[生物情報 簡易版]

 ――――――――――――――――――

 総合評価B

 名前 ペアードウルフ

 種族 群狼

 形態 第一形態

 Lv 13/10000

 ――――――――――――――――――


 ペアードウルフって言うのか……群狼って言うくらいだから狼の類で間違いないんだろうけど、まあ犬っぽいしボール投げれば喜ぶだろ。


 ぐしゃぐしゃに丸めたティッシュを掌に乗せた。


 ん、これって鼻かんだやつだっけ?


「……こんなのしかないけど、遊ぶか?」


 ペット飼ったことないから扱い分かんないわ。


 体勢を低くして構えているペアードウルフに、ティッシュを放る。

 その瞬間、口を大きく開けて飛びかかってきた。


「え」


 世界の顔面にぶつかって、キャンと悲鳴をあげて横に弾き飛んだ。


「え?」


 イルミ、レミ、マーはその光景を見て互いに顔を見合わせた。

 ペアードウルフは起き上がると、上を向いた。


「ウウォーーーーーーン」


 ?

 え、俺悪くなくね!?

 いや汚いティッシュ放ったのは悪かったが。


 あたふたしているうちに、呼び声に反応した他のペアードウルフたちに囲まれた。


 め、めんどくせえ……。


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