1 / 想像による創造
少し先で途切れている丘、黒色の龍の卵。
龍が卵から孵ったら、この狭い世界だとどう動くんだろうか。
困惑するのかな?
咲いている花を別の場所に移して、メニューを開いた。
えーと、この場合は、天地創造でいいのか。
天地創造をタップすると、山やら木やら、海まで出てきた。
「まーじで思い通りに創れるのな」
木をタップすると、設定項目がズラリと並んで現れた。
大きさ……異世界転生者が初めて来る場所だからな、神聖な場所にするか、それとも質素な場所にするか。
尚、近くに超強い龍がいるものとする。
高さ70メートル、横幅250メートルのバカでかい世界樹でも創っておこう。
もちろん広葉樹で、幹、枝の色は白で少し緑色っぽく。
葉は世界樹の葉ってことで、緑に青のグラデーションをかけよう。
なんか、思ったよりも地味だな。
頭の中で思い浮かべて出現させる方法もとれるんだろうが、メニューを通してやった方が項目とかあって細かくやりやすい。
名前を入力してください。
「な、名前までつけられるのか!」
名前つけてどうするんだ?
まあ、とりあえずでつけておこう。
その他設定…。
死者が姿を現すことの出来る不思議な力を放つ、と。
思いつきにしては良い設定じゃないか?
確認をタップした刹那、目の前が真っ暗になった。
「わ、なになに?」
動き回っても暗いままだ。
まさか。
オプションを開いた。
創造神、飛行可能オン。
体が浮き上がる感覚がする。
これは楽しいな。
一直線に飛んでいると、突然目の前が明るくなった。
お、ん?
光がないからか、全く眩しくない。
後ろを振り返ると、さっき出現させた世界樹が威厳あり気にたっていた。
「いやっべぇ…」
デカすぎる。
創造神だから物をすり抜けられるのか。
そう言えば、ドラゴンの卵は?
……生物情報 ドラゴンの卵1
消えてはいないんだな。
もう一度世界樹を見て、ため息をついた。
この中探し回るのか?
腕を組んで、低く唸った。
俺は創造神だからすり抜けるけど、龍の卵はただの卵だから世界樹の中では無いはずだ、とすると?
世界樹の周りを飛び回って、根元あたりを探した。
「あった!」
世界樹の根元部分に寄り添っていた。
「おー愛しのドラゴン。潰させはしないよ」
卵を世界樹の枝の分かれ目にスペースがあったので、そこに置いておいた。
さて、それじゃまずは…。
地形を作るとするか。
イメージをはたらかせて、実際の場所に投影してみた。
すると、地面がボコボコと盛り上がり、石が大量に出現したりで世界樹を囲うように山ができた。
これ、俺がやったのか!
俺ツエー!というか実質チートじゃん。
ふと、世界の端に目をやった。
世界が狭い。
山や谷をイメージした。
なかなか脳を使う作業だな、疲れは全く感じないけど。
安心してくれ、小さい頃から異世界の存在に憧れて生きてきた俺だ、理想の異世界がどんな場所かくらいは頭にあるさ!
イメージが完成して息を吸い込み、叫んで手を広げた。
轟音が波のように押し寄せ、波が帰っていくと世界が全方向に向けて一気に広がり、地形が変動し始めた。
遠くの方で地面に大きな亀裂が入り渓谷ができ、山が生えるように次々と出来上がり、緑で覆われている。
何箇所からか大理石が空にむけて伸び、世界樹を囲む山の周りを幾つもの塔がさらに囲った。
遺跡が現れ、世界樹へと通じる大きなトンネルも通った。
世界の目の前に外へと通じるトンネルが雄大な景色を望んでいる。
自分でやったことに、自分で驚いていた。
「信じられない……これ本当に俺がやったのか」
メニュー画面を開いた。
[メニュー]
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進捗状況 経過時間:31M
1日目
歴史情報 1MP「999件以上のお知らせ」
生物情報 現在この世界に生物は存在しません
天地創造 タップすると詳細を開くことができます
生物創造 タップすると詳細を開くことができます
オプション タップするとオプション画面に移ります
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な、なんか心做しか見やすくなってるし歴史情報の通知量がとんでもない事になってる…!
ふと上を見上げると、想像通りの風景になっていた。
世界樹が上を覆い、山が削れそびえ立ち、飛び出た岩石や露出した遺跡がこの空間を世界そのものと切り離すように塞いでいる。
「上手くつくって幻想的な雰囲気を強くできないかな」
天地創造から、源水の項目を選んだ。
これ破壊する時にはどうやってやればいいんだ。
あくまでも創造神だから俺が自分でやらなきゃならないのかな。
そう言えばシロノさんが、創造神は生み出す存在であって破壊をする存在ではないって言ってたなあ。
オプションを開き、見ているうちにある項目に目が留まった。
”創造神モードから人間モードへの切替”