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第一章 その八 美少年と鳥

俺とミーナは大きな通りを進み、ついに街が見えてきた。

「あそこに見えるのがケーブの街です。もうすぐですね」

ミーナが言った。

街に近付いて行くと何やら人々が慌ただしく走りまわっている。

「何か様子が変ですね」

「何かあったのかな?」

俺は近くの人を捕まえて事情を聞こうをしていたところ、先に街の人に声をかけられた。

「今モンスターの群れが街に襲来しているんだ!君達も早く安全な場所に逃げたほうが良い」

どこまで俺はついていないんだ。初めて訪れた街にモンスターが襲来しているとは。

この辺はモンスターがいないって言ったのに話が違うじゃないか。

「勇人さん!街の中の様子を見に行きましょう!」

俺とミーナは急ぎ足で街の中を走り抜けた。

多くの人は既に避難しているのか、人影は見当たらない。

広場の様な所に出た所で何人かモンスターと戦っている人々が見えた。

交戦中の人々は鎧や剣を装備して戦っている。

ミーナは近くにいた鎧を来た男に話しかけた。

「すみません!今来たばかりなのですが、今どんな状況ですか?」

「突然ゴブリンの群れが街に入り込んで来て人を襲い始めたんだ。今、街の傭兵部隊が対応に当たっている。ここは危ないからあそこの教会に避難した方が良い」

男は遠くに見える教会を指さして言った。

「勇人さん、私は街の人の援護に加わります!勇人さんはひとまず教会に避難してください!」

ファンタジー世界の主人公キャラならばここで一緒に戦うのが当たり前なのだろうが俺は明らかに非戦闘員の為、戦いに加わっても足手まといになるだけだ。

「ミーナちゃんは?」

「私は大丈夫です!後で合流しますから先に行っていてください」

「わかった。先に行って待ってるよ。気を付けて!」

俺はそうミーナに告げると教会へ向けてダッシュした。

教会に近付くと教会の入口では鎧を来た男達が数人見張りをしていた。

これなら避難所としては安心できそうだ。

教会へ駆け込もうとしたその時だ。

俺の正面に一体のゴブリンが立ちはだかった。

よりによって進行方向である。

既にミーナは近くにいない。

俺はひとまず教会とは逆方向にダッシュで逃げた。

しかし、ゴブリンは俺を追ってくる。どうやら俺をターゲットにしたらしい。

幸いにも足の速さは大差ない。なんとか撒くことが出来るかもしれない。

街の細い路地を走り抜け、俺は路地裏へ駈け込んだ。

全力で走った為、息を切らしていた。

背後を見ると追ってきたゴブリンの姿はなかった。

息が落ち着いて来た所で、周りを見渡してみると誰か人が近くにいた。

いつからいたのだろう。

じっとこっちを見つめる銀髪の美少年……とその肩にとまった鳥。

美少年はショートヘアで全身黒い服を着ていた。その服装は忍者が着る黒装束に近い。

鳥は朱色に輝く綺麗な羽。鷹と鳳凰を足して二で割った様な容姿だ。

ただ、鷹や鳳凰と違って肩にとまれるほどの小さな鳥だ。

「あんた珍しい恰好をしているねえ。どこから来たんだい?」

その美少年が俺に話しかけてきた。

「ああ、これジャージっていう服なんだ。知ってるかはわからないけど。うまく説明出来ないけど、俺はこことは違う世界、つまり異世界から来たんだよ」

「は?こことは違う世界?何を言っているんだい?」

おっしゃる事はごもっともである。異世界から来たなんて言ったらこういう反応をされるのが普通だ。

「信じてもらえないだろうけど、昨日召喚士にこっちの世界に召喚されたんだ。俺の世界はスキルも精霊もモンスターもいない平和な世界だったんだけど、いざ来てみたら今もまさに街がモンスターに襲われてて逃げ回ってたってわけなんだ」

「ははははは。あんた面白い冗談を言うね」

美少年は大きなリアクションで腹を抱えて笑った。

クールな美少年を想像していたが、どうやらそうでもないらしい。

「冗談じゃないんだけど……。それで、こっちの世界に転移してくる時に覚醒スキルを習得したんだ。信じてもらえるとしたらこの覚醒スキルぐらしかないな」

「へえ―。しかも覚醒スキルと来たかあ。嘘つくならもうちょっとマシな嘘つきなよ」

美少年は笑いながら言った。

「いや嘘じゃないんだって。試して見るか?」

俺は美少年に言った。

「ふ―ん、いや、いい。生憎あたいはスキル持ちってやつでね。残念だけど既にスキルは覚醒済みなんだ」

あたいって女か。見た目がとてもハンサムだったので男だとばかり思っていたがどうやら女性らしい。

「ところであんた名前はなんて言うんだい?」

風変わりな俺に興味を持ったのだろうか。その少女は俺に名前を聞いて来た。

「勇人だ、よろしく。君は?」

「あたいの名はシャドー。で、こいつが相棒のベガ」

シャドーは名を名乗り、肩にとまった鳥を俺に紹介した。

「それよりも大丈夫なのか?今まさにモンスターが襲来中なんだろ?ここにいたら危なくないか?」

シャドーとの会話に夢中になっていたが、俺は我に返って言った。

「ああ、モンスターか……。それ多分あたいのせいなんだよねえ」

シャドーはさらっとすごい事を言った。

「実はゴブリンの巣に盗みに入ったんだけどヘマこいてさ。相手すんのめんどくさいから逃げてきた。そしたら奴らあたいを追ってきやがってさ」

これお前のせいかよ!

そう、俺は心の中で叫んだ。

「え?何してくれてんだよ。今街は大変な事になってるんだぞ!」

「ごめんごめん。まさか街まで追ってくるとは思わなかったんだ。ちゃんと半分くらいはあたいも処理したから」

全部処理しとけよと突っ込みたくなる。

「シャドー。そろそろ約束の時間です」

野太い声が響く。

言葉の主は鳥である。

シャドーの肩にとまっていた鳥が言葉を発した。鳥がしゃべった事にも驚きだがイメージと全く合わない野太い声にさらに驚かされる。

「そっか。残念だけどそろそろおいとまさせてもらうよ」

「え?その鳥しゃべるの?」

「ああ、ベガは高貴な鳥だからね。そこらの鳥とはわけがちがうよ。あたいこの街の宵闇亭って酒場に良く通ってるからさ。気が向いたら来なよ。また会えたらその異世界ってやつの話を聞かせてくれよ。じゃあな」

酒場ってあの幼い容姿で酒を飲むのだろうか。いや、実は見た目によらず結構歳いっているのかもしれない。

シャドーは別れの言葉を告げ、颯爽とその場を去って行った。

最後までお読み頂きありがとうございました。拙い文章ですが感想など頂けると幸いです。

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