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最後の夜明けは最愛のキミと  作者: れる
第四章 異世界の星
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83話 アカメノモモガミ

 顔面蒼白と呼ぶに相応しいその面を、沢山の人間が覗き込んでいる。

 当の本人は、意識が奥底に眠っているらしく、蒼白ではあるものの美しい顔で眠っている。


「……何があった?」


 何もかも、説明の「せ」の字も聞かなかったトオルたちは、状況が全く飲み込めない。

 ララに魂を吹き込んだ瞬間、急にリリィが叫んだかと思えば、レヴィが白目を剥いて倒れているし、リリィは半泣きになって狼狽えているし――先の奇襲からというもの、トオルには安息というものが足りていない。

 そろそろ休憩する時間も必要なのではないかと、自ら不安になるほど。


 レヴィを抱き抱え、なんとか家の奥のベッドに寝かせたが、彼の表情から汲み取るに、一度経験したことのある感覚だ。

 恐らく心的外傷。何がきっかけなのかは分からないが、これを元に戻すには時間がかかりそうだ。


「えっと……話をしてたら突然……」


「そっか……まぁ、ここで解決出来ねぇ話はしてもしゃーない。さっさと全員生き返らせて帰るぞ」


 それが得策だと、この場の皆が頷く。

 気付けば、トオルの袖をつまむララの姿もあった。

 さっきはリリィの叫び声に、ララが生き返る瞬間に立ち会えなかったのだ。


「ごめんなララ。帰ったら事情説明して、ゆっくり遊ぼう? ちょっとの間だけだから、我慢してろよな?」


「ら、ララはそんなの……我慢出来るもん……」


 以前は勝気で男勝りのサバサバした性格だったのに、今はどうだ。塩らしくなって、まるで思春期前の女の子だ。


「よし、偉いぞ。……さっさと終わらせようぜ。屋敷が心配だ」


「あとはリイラさんとレイラさん……あとはミーナさんですか。彼女らの魂も持って?」


 「もちろんよ」と、またまた檻から魂をつまみ取るリルム。蠢く魂は、レヴィの時に比べると幾分か控えめな動き方だ。

 もしかしたら、魂そのものの忙しなさは、彼らの本質そのものを表しているのかもしれない。


「さっさと入れて終わらせなさい。私の誤解も解きたいし、それをするには安全な場所じゃないとね」


 そう言うリルムの表情は、あの奇襲の時と比べると別人のようだ。

 そういえば、あの時彼女に従いていたリーフェンスという少女の姿が見えない。だが、それは今聞くことではない。


 彼女の言う通り、さっさと役目を終わらせるべきだ。


「そこのあなた、お願い」


「――わかりまひは…………!?」


 レヴィのことを考えていたリリィは、反応が少し遅れた。というよりか、噛んだ。

 またか、という面倒臭い悪のリリィと、全てを任せてもらえるんだという善のリリィ。二人がごっちゃになって、変な笑顔でリリィは言ったのだった。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


 突如、ドンッという衝撃がハークの家を揺るがした。爆風が窓を爆ぜ、振動が床を割り、衝撃波が壁と天井を突き破った。

 不完全に崩壊した家の中で、桃色の髪の少女が、再び魔法を放った。彼女を取り囲む者達各々が障壁を張り、自分の身を守る。


 ただ、魔法が使えないトオルとカオルはリリィの障壁内にいた。三人分の障壁を張る際、桃髪の少女の魔法に追いつけずに四散した木片と、魔法の一部を体に食らったトオル。血が滲む程の軽傷だったが、痛みはかなりある。向かってリリィ側にいたカオルは、辛うじて無傷だ。


 ベッドに横たわっていたレヴィは、目覚めてすぐに障壁を張る対応が出来たリイラとレイラの合体魔法によって守られていた。


「――行儀のなってねぇ野郎だな。まさかお前があいつだったとはな」


「ふふーん、そこのお姉さんなら気付いたんじゃない? 一戦交えてるから〜」


 そう言った桃髪の少女。

 魂を吹き込む直前に起き上がった彼女は、笑顔で彼らを油断させたあと、強烈な斬裂魔法を放ったのだ。


 リルムが彼女の違和感に気付いたのは、彼女の狂気に満ちた笑顔を見た瞬間だった。

 あまり人の顔を覚えない性格のリルムは、殺気で彼女本人だと気付いたのだ。


「さぁ、どうかしら。おチビちゃん、あなたのいる場所はここじゃないわ。失せなさい」


「そんな脅し、効くわけないじゃ〜ん! ミーナ、やっちゃうよ〜?」


 自ら「ミーナ」と名乗り、その本性を顕にしていく彼女。

 死んだはずの少女がどうして――それに、彼女の体を生成する前から彼女は何故いたのか。レヴィと共に戦った少女が、これほどまでに異常な行動を起こすのだろうか。謎は深まるばかりだが、その疑問もまた、彼女が手を一振りしただけで掻き消された。


「――っ!」


「あはははははっ! たァのしぃっ!」


 大量の砂埃が、リリィたちを飲み込んでいく。若干休憩のようにも思えたその行いも、次の瞬間に無駄な行動ではないと理解出来た。


「――!? 避けて!」


「ぐへぁっ!」


 砂埃で目をくらますのが目的だったのだろう。砂埃に掻き消された視界に、突然ナイフが飛び込んでくる。

 各々が障壁を張り、避け、剣で受け止めるが、ひとりだけ犠牲者が出た。何を隠すこともあるまいトオルだ。


「トオル! あなたはほんとに世話が焼けるんだから!」


「ヴるせぇ! いってぇ……おお?」


 腹から零れ落ちる大量の血液。傷口が段々と塞がっていき、最後には綺麗な肌が覗いた。

 ミーナの追撃が来ないうちに傷口を回復魔法で塞いだリルムは、砂埃に手をかざし、その手を一振り。――そこだけ。いや、そこからまるで、津波のように砂埃が失せていき、奪われていた視界が綺麗に拓ける。


「……起きて早々これってのは、ちと苦しいが、出来るか、レイラ」


「当たり前だよ。やるよ、お姉ちゃん。話はその後」


 やっぱり根に持っていたのかと、残念そうな表情を浮かべるリイラ。が、その顔に不安の色はない。

 単純に考えれば、相手が仰望師団であろうとなんだろうと、多人数対単体だ。負ける気がしないのも当たり前。


 が、ひとりだけ交戦不能な人物がいるようで――。


「? ハーク、お前も手伝え。魔術師なんだから、どデカいのお見舞いしてやれよ。まぁ、俺はなんも出来ねぇんだが」


「む、無理……アタシ、戦ったことないし……」


「……そうかい。じゃあ頼むぜ皆ァ! 正義の力を見せてやれぇッ!」


 大きな掛け声と共に、一斉に魔法を放ち、剣を振るうリリィたち。


 レイラとリイラの権能を使えば、簡単に押し潰すことも出来たのだろうが、今の彼女らには権能が使えない。――リセットだ。人は蘇る時、記憶と性格、成長度合いを除いて全てがリセットされる。いくら大きな傷口があったとしても、それが生死を分ける傷口でなければ、それは消える。

 それに、彼女は殺してはいけない存在だ。仮にもレヴィと共に戦った「はず」の少女。


 レヴィの命令なしには殺せない。


 沢山の魔法が飛散し、直撃し、ミーナを焼き、凍えさせ、切り刻むが、彼女はそれらを全て“それ”で防いでいた。


「……“unknown”!? 一体いつ……?」


「あはっ! 教えてあ〜げないッ! さぁ、いっけ〜ドラゴンさん!」


 先の奇襲の際よりも一回り大きくなり、まるで神話に出てくるような大きさのドラゴンが、威風堂々と咆哮を上げた。

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