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最後の夜明けは最愛のキミと  作者: れる
第一章 帝覚
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5話 悪夢の始まり

 翌日、目が覚めた理由は悪夢だった。


「朝、か」


 いつも通り伸びをして、朝日を沢山浴びた空気を吸い込む。

 こうして深呼吸すると、肺の中が浄化されたような気分になるのだ。それはレヴィに限ったことではなかろう。


 朝の支度はいつも通り。唯一違うのは、いつもの正装に剣が付くことだ。

 商売が上手そうな商人に渡されたこの“クロウ”と呼ばれる剣は、鞘から抜くと、任せとけと言わんばかりに輝きを増す。

 実際、その輝きは忌々しさを孕んだもので、気持ちのよろしいものではなかったが。


 二階の自室を出る。勿論、忘れ物の無いように二周は部屋を回る。

 階段を下り、大扉が静かに軋んでゆっくりと開く。

 扉を開け、目に映ったのは。


「アリス」


 黒髪の美しい少女だ。

 これでも、対“unknown”用人間兵器、通称魔女と呼ばれる恐ろしい魔法使いなのだ。


「誰ですか?」


 ボケの激しい魔女。またそこも愛らしい。


「朝からからかうな。もうこんなに竜車が来てるのか」


 そう言って見渡すと、庭中に紫龍が集い、その後ろには人が座るための荷車が用意されている。


「第一次ですからね。過去に例があったのならこんなに用意しないでしょう」


 言われた通りだ。確かに、“unknown”の脅威が計り知れたものならばここまで大掛かりな準備をする必要はないはずなのだ。


「...」


 顎に手を当て、レヴィは考えた。

 これだけ準備万端にしても、死者が出るものだろうか。

 もっと準備、用意するべきなのではないか。

 朝で冴えきったレヴィという秀才の脳は、フル回転もいいところだった。


「レヴィ君?」


「アリス、僕が守るから」


「な、何を言ってるんですか!そ、そんなの...」


 アリスが言い終わる前に、レヴィの腕は伸びていた。

 アリスの肩を抱き、こちらへ引き寄せる。そして背中に手を回し、彼女が一番安心できる体勢をとる。

 つまりただのハグ。ただそれだけのことが、アリスにとってどれ程の意味を成すのかはレヴィが一番知っていた。


「............安心、します」


「アリスが人目につかない所にいて助かった」


 さもなければまた黄色い声でメイド達に騒がれ、今度こそイヴァンに報告しに行くだろう。

 たまたまアリスがいたのは扉の前にある何本かのコンクリートの支柱の後ろだった。


「......もういいですよ」


 朝、目を合わせた時とはかけ離れた態度に、流石のレヴィも驚きを隠せない。


「.........」


 レヴィは思った。この戦いが終わったら。否、皆が無事で帰って来れたら、告白しようと。

 今のこのハグの心地良さに心を落ち着かせて。


「僕が強烈なフラグクラッシャーならいいんだけどな」


「何がです?」


「いや、なんでもない」


 そう言うと、レヴィはアリスから体を翻して、屋敷の中へ入っていった。


「レヴィ君...」


 それを見つめるアリスの目は、まだ心配に満ち溢れていた。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


 レヴィがもう一度部屋に戻り、傭兵達が集まるはずの大広間に行き着く頃には、もう既に傭兵や魔法使い達は招集後であった。


「遅いぞレヴィ」


「ごめん、父さん」


 いつもの優しい父親はそこにはいない。

 いつも、公務の時は厳格になり、レヴィにも冷たく当たる。


 レヴィがイヴァンの隣に立つと、彼の士気を高めるための演説が始まる。

 長ったらしくないのが彼の演説のいいところだ。


「...我々は今日、イアル街の救世主となる。今日、長い間彼の地で“unknown”に脅かされた人々を救う。彼らの惨状を思い出せ...これ以上は言わんが、相当な報いを受けさせる義務が、我らにはある。」


 イヴァンがその言葉を発した瞬間に、目の前の勇者達の顔つきが豹変する。狂気に満ちた、憎悪の塊のような表情。

 そんなものに意も返さずにイヴァンは続ける。


「こんな惨いことをするのは、いくら能無しの死神:“unknown”とて許されない。よってここに『第一次“unknown”征伐隊』を発足し、第一次征伐戦を開始する。」


 その一言で始まる、

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