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最後の夜明けは最愛のキミと  作者: れる
第三章 戦骸
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48話 純白の皇神

 目が覚めた。知っているような知らないような天井を目の前に、アリスは横たわっていた。意識が覚醒すると、頭の下には天国のような、心地良い感触が広がっている。そう、膝枕だ。


 目の前に突如入ってきたのは、うとうとと船を漕いでいた銀髪ロングの女の子の可愛らしい寝顔だった。だが、アリスがふと声を上げてしまった所為で、彼女は目を覚ます。


「アリ......シアさん......?」


 朦朧とする意識の中、その少女。リリィはアリスに声をかける。だが、状況を理解出来ない二人は、お互いに暫く見つめ合った。

 もっとも、お互いにさっきまで寝ていたのだからこうして意識がなかなかはっきりしないのも仕方ないだろう。


「......?......ここは......?」


「?」


 先に意識をはっきりとさせたのはどうやらアリスだったようだ。常にメイドとしての心構えを守って、毎日朝早く起きていたアリスにとって、意識の覚醒は目覚めからそう遠くないうちに訪れる。


 しかし、そんな過酷なメイドの生活に、まだ一年と経っていないリリィはその感覚が広い。だから、まだ寝惚けているのかして、彼女は呟いた。


「......ん......」


 妖艶なような、しかし少女らしいような声を漏らし、その恥ずかしさの所為で彼女の意識は目覚める。

 そして、その恥ずかしさ故に、話をすり替えようとし、何か話題を探していた頃合。リリィはアリスを見つめる。


「え?......何が......?」


 何故見つめられているか分からないアリスは、目を開いてリリィを見つめ返す。しかし、そんなことをしていても埒が明かないとばかりに、声を発した。


 すると、意識がハッキリしてきたらしく、目が虚ろではない。彼女は口を開いた。


「白髪、似合ってますよ」


「え?......ほんとだ......」


 言われて気付いたが、ふと見た髪先。確かにその色は白くなっている。銀髪ではなく、白髪。髪先までもが白いのなら、頭頂部でさえも白いのは考える間もない。

 何故髪色が一瞬にして変わったのか、理解出来ないまま、リリィは再び言う。


「目も赤いし」


「それは......分かりませんね」


 流石に目の色までは、鏡を見ないと分からない。生憎、アリスの部屋には鏡がない為、それを確認するにはレストルームに行く必要があった。

 ならば朝の髪のセットなど、身だしなみを整えるのはどうしているのか、と問われることもあるだろう。──レヴィ曰く、アリスは身だしなみなど整えなくても綺麗だ。だそうだ。


「......で......ここは?」


 あまり見慣れぬ天井に、どこの部屋だか想像がつかない。


「大広間ですよ」


 アリスがそう思ったのも無理はない。わざわざ入る度に天井を見上げて、「この部屋は何部屋だな」なんて確認するに人は少ないだろうし、それにそれをしていたとしても屋敷の天井はほぼ全部一緒だ。分かるはずあるまい。


「リリィさん......私......」


 レヴィとの諍いを思い出し、目にじんわりと涙を浮かべるアリス。

 何故、「ただ貴方が欲しいだけ」と言えなかったのだろうか。何故、「自分は間違っている」と認められなかったのか。

 今更、後悔しても彼の心の傷は癒えるはずがない。今頃は、そんな心の傷を抱えながら裁かれているのではないか──そう思えば、アリスの胸も痛んでくる。


「帰りが遅いから見てたんです。レレちゃんとロロちゃんのあの青い光で」


「見て......たんですね」


 見られていたことに特別何の感情も見い出せない。レヴィを傷付けて、彼に「いらない」なんて言ったことも、別に知られたってどうこうない。もう割り切っている。


 そんな様子で、しかし顔色は暗く起き上がったアリスに、同じく暗い顔でリリィが語りかける。


「はい。......大変でしたね......」


「レヴィ君が......」


 同情はいらないから、という風に、まずはレヴィの安否を心配すべきだ。

 これも実際、動機は「好き」という気持ちではなくて「依存」という宿痾なのだろう。アリスは、出来るだけ、その「依存」を「好き」に近づけていけるように努力すると決めた。

 その「依存」が決して「好き」になることはないと分かっていながら。


「リリィ、聞きました。アリシアさんが──」


「アリスでいいですよ、もう......そう呼ぶ人はいないんですから」


 レヴィはもういない人として過ごした方が、アリスの気持ち的にはだいぶ楽だ。フレイの言い分によると、レヴィが死ぬ時にアリスも死ぬのだから、まだ彼は死んでいないということなのだろう。


「じゃあアリス、まだレヴィ様は亡くなってはいません。まだ希望はありますよ」


 リリィもそれを理解しているらしく、悲しさの中に嬉しさを垣間見させるようなその表情で、アリスから目を逸らす。

 心の底から嬉しがってはいないのだろう。悲しさが見えるということは。


 そんな微妙な表情をしているリリィとは違い、自分のしてしまったことへの責任が募るアリスの心は曇りそのものだ。


「......希望?......私はあの人を傷付けた。だから......もうあの人も私のことを嫌ってる......」


 あれ程自分は愛されたはず。だからキスもされた。好きだと言ってくれた。なのに、その重要さ、彼の勇気を蔑ろにして自分勝手に喚いていた自分が、今は捻り殺したいくらいに邪魔らしい。

 いっそのこと死んでしまおうか。


「それは違うんじゃないですか?あの人はなかなかねちっこいですよ?......まぁ、もう夜も遅いですし、取り敢えず一旦は寝ましょう?レレちゃんもロロちゃんも、もう眠っちゃってます」


 ねちっこいのは知っている。何せ小さい頃からずっと見てきているのだから。

 勉強でも、一問を解き終えるまでは必ず席を立たない性格だった。そんな彼が、好きだと言い張る少女をそう簡単に諦めるはずがない。

 その希望に、アリスも少し頬を緩める。


 リリィは、起き上がって座り込んでいるアリスを置いて、扉の方へ歩いて行った。

 まだ、アリスには、彼女に聞きたいことが沢山ある。


「あの──」


「はい?」


 アリスが声をかけると、リリィは糸で引っ張られたように足を止める。体を翻し、アリスの方へ向き合う。──これもお嬢様として育ってきた故の可憐さなのだろうか、礼儀なのだろうか。アリスなら上体だけを反らして話を聞くところだが。


「レイラさんは?」


 一つ気がかりだったのは、自分がここに引き戻された理由だ。まぁ、それについてはおおよそ予想はついている。今言ったレイラくらいしか、アリスをここに連れ戻すことなど叶わない。たぶん権能でどうにかしたのだろう。


 そして、その当の本人がいない為、アリスは少々気になって彼女に尋ねたのだ。


「貴女を引き戻した後、眠くてすぐに寝ちゃいました。育ち盛りなので仕方ないですね」


 そう言って、口元に手を当てるリリィはお嬢様そのものだ。

 と、感心などしていられない。ここで気になってくるのは、レイラがアリスを引き戻して、自分が気を失っていた時間だ。


「......?私、何時間寝て......」


「だいたい五時間くらいですかね?」


「......もう寝れませんよ」


 五時間も昼寝をしては、夜も眠れないだろう。そんなにアリスも疲れてはいないし、魔力だってまだまだ大量に蓄えがある。

 しかし一つ引っかかるのは、五時間も経っているのにレヴィの死が訪れないこと。フレイの言い方からすれば、今すぐにでもレヴィを殺し、アリスも道連れにしたいところだろう。

 それをしていないということは、まだレヴィを甚振っているか、フレイが嘘をついていたか、レヴィが運良く逃げられた、の三択に絞られる。


「......そうですか、じゃあ話をしましょうか?」


「それがいいです」


 リリィの提案に、うんうんと頷くアリスは、少し心の波が穏やかになっていた。


「何か、話したいことは?」


 リリィは再びアリスの前に正座で座り、

彼女の話を聞く準備が出来たらしい。

 準備が整い次第話し始める性格のアリスは、リリィが床という席に着くや否や、語り始めた。


「......私、レヴィ君のこと、いらないって言っちゃったんです......本当はまだ好きで好きで堪らないのに、あんなこと......」


 フレイと言葉を交えた際には、言葉と内心がごっちゃになってしまっていたが、今はちゃんと言葉に出せる。もし今レヴィのことを嫌いだと思えば、嫌いだとちゃんと言えるはずだし、そうなるつもりもない。まず、彼のことを嫌いになどなれない。


 全部が全部、フレイの言う通りだった。自分の思い通りにいかないこの世界を多少なりとも恨んでいて、しかもそれは自己中心的な考え方。到底、聖人のようなレヴィには叶いっこない。見合いっこない。


 その事実を自分で自分に押し付けると、何故か顔が暗くなってしまう。口角が下がり、大きな目も細くなってしまう。それを見兼ねたリリィは、その理由を問う。


「何か、あったんですか?」


「......貴女も傷付きますよ?」


 リリィも少なからずレヴィのことが好きなのなら、何かしらの感情が湧くのは当たり前だ。怒り、悲しみ、あるいは憎しみ。そのどれにしても、彼女を良くするものはないはずだ。だが、


「いいんです、覚悟はついてます」


 彼女なりに強い意志をアリスに表明し、どんな事実とも向き合う覚悟を決めた様子のリリィ。その強い眼差しから、彼女の意思の固さが見える。


 対してアリスはまだリリィにそれを告げるのを躊躇っていて、口をもごもごと動かすも、なかなか喉が詰まって言葉に出来ない。そんなアリスに、リリィが「......で?」と尋ねると、何かストッパーが外れたように気持ちが軽くなり、言葉を発せるようになった。


「......リイラさんとその......ね?」


「え?」


 リリィが小首を傾げ、アリスはそれに俯く。傍から見れば、リリィが言葉の意味を理解していない。もしくは驚愕のあまり言葉が出ない。といった様子に見えるが、実際は前者である。が、アリスは俯いたままのため、彼女のその仕草に気付かない。


「そりゃあ......誰としようがレヴィ君の勝手だとは思いますけど......私は辛かったです......」


「ち、ちょっと待ってください」


 リリィが、口の緩くなったアリスにストップをかける。それはもう、何を言ってるのかさっぱりな様子で。

 しかし、ストッパーの外れたアリスは言葉を止めることを知らない。


「動揺するのも無理はないですよ。私だって気が動転してあんなこと──」


「い、いえ、何を言っているのか......?あ、キスですか?それならアリスもしたはず......?」


 アリスの言葉を遮り、そう言うリリィ。彼女はレヴィと「根っからの同属性」であり、アリスの言葉の真意を理解するまでには至らなかった。何もかも、全てが先に進んでいるアリスと違って、リリィとレヴィは全てが遅れていた。


「あ......なたもですか?」


「何がです?」


 顔を上げ、リリィの目を見た。

 やはり演技ではないと見抜いたアリス。女の子だから、はしたない真似はしたくないから、という理由でそうしているわけではないらしい。


「はぁ......まぁいいです。とにかく、レヴィ君とリイラさんがイケナイことをしてしまったんです」


「......」


 未だ「イケナイこと」の真相が掴めないでいるリリィは、首を傾げたままアリスを見つめている。純粋を全うしているリリィだが、その純粋を後で穢してやろうと決心するアリス。

 こうやって、人をある意味穢していくのは気持ちがくすぐったくなるのが堪らない。


「それが許せなくって......いっつも私は二番目かそれ以降、毎回選ばれない......」


「レヴィ様が一番好きなのはアリスですよ?」


 すぐさま、即座にフォローに入るリリィの顔は、アリス同様「選ばれない辛さ」に歪んでいる。彼女もまた、一番にのし上がりたい欲望に押し潰されかけているのだろうか。

 彼女なら、自分の気持ちを少しは理解してくれるのではないか。そんな想像をしていた。


「そんなわけないじゃないですか。あの人は天然タラシですよ?」


 それはもう、この世の女を全て喰らい尽くすんじゃないかという程に。なんて冗談はよしても、屋敷のメイド、衛兵含め、彼のことが嫌いな人は皆無だ。だからこそ、皆が皆彼に仕えられていることに誇りを持っている。

 中には、レヴィのことを好きだと思っているメイドもいるかもしれない。ただ言わないだけで。


「そうかも...ですね、ふふっ。......でも、リリィは聞いたことがあるんです。アリスが一番好きだから、君は選べないって」


「......あの人......何を考えて?......一夫多妻制を導入するんじゃなかったんですか?」


 リリィの思いがけない言葉に、流石のアリスもボッと赤面する。白い肌が赤く染まると、互いの色が強調され、彼女の魅力が最大限まで引き出される。


 アリスはそんなことを言ったが、別にレヴィは一言もそんなことをするとは言っていないのだ。ただのアリスの勘違い、思い込みだ。


「ふふっ、男の子としてはそんな欲望もないではないでしょうけど、あの方はそんなに常識外れじゃないですよ」


「レヴィ君は......誠実ですもんね」


 そりゃあもう、アリスが自分の最高の教育という教育を施しただけあって、真っ直ぐに素直な男の子に育った。正直過ぎるのも玉に瑕なところだ。そんなところが愛らしいと思えるアリスは親バカと言える。


「でも、リリィやアリス、レイラさんが押しかけてそれをしてって言ったら、揺らぐかも知れませんけどね」


「それ程、優しいんです」


 さっきから、ずっと笑顔なリリィは美、そのものだ。こんな人をレヴィが放っておくわけがないのも分かる気がする。

 そして話題に上がったレヴィは、大事な人が頼み込むだけで心が揺れてしまう程の優柔不断者。──後々で思えば、リリィが彼の正妻に相応しいとまで思えてくる。


「そこまで分かってるなら、あの人の前で嫌いなんて言う必要、なかったんじゃないですか?何をリイラさんとして怒っているのかは分かりませんけど、あの方もあの方なりにリイラさんを突き放せなかったんじゃないですか?」


「そう......ですね」


 リリィの言葉に、返す言葉もないアリス。詳細を皆まで言わなくても、ここまで理解しているリリィに、彼女は感服する。


 誰も傷付けることが出来ず、そんな弱い人間でありながら、誰かを守る為に必死に動くレヴィの姿。それが頭に浮かび、アリスはポロっと涙を流す。

 心の波がいい意味で荒れてきた頃、リリィは続ける。


「そんな優しくて、優柔不断で、でも誠実なレヴィ様。そんな素晴らしいお方のことが好きなら、彼の弱いところ、悪いところも纏めて好きにならないと、彼とは付き合っていけないと思いますよ」


 悪いところも纏めて好きになる。それは生半可な覚悟では、一筋縄の気持ちでは出来ない超難関だ。アリスはその難関を、一度はリタイアした。だが、リリィは一度もそれに屈したことがなかった。ついでに言えば負けたことすらない。いつも、変わりに変わるレヴィの気持ちに振り回されながらも、しっかり彼を認めて付いていったリリィ。

 彼女は、女性の。恋する乙女の鑑だ。


「............貴女はいつも、正しいことを言っていますね。正しい行動はしてませんが」


「ファーストキスを奪ったのは申し訳なかったです。リリィ的にも欲望が抑えられなかったので......でも、リリィはもう二番目でも三番目でも構わないです」


 もう、アリスは諦めモードに入っていた。決して、このリリィという天使には勝てないと知ったから。もう、アリス自身も二番目くらいに落ちぶれているのではないだろうか。それ程までに、自分勝手なことをしたのだ。──自分はレヴィに相応しくない。フレイの言ったことが、ずっと頭の中を回っている。


「何でそこまで......自分の欲を抑えられるんですか?」


 まさに天使。天使そのものだが、彼女は欲というものがないのか。言ってみれば僧とまで言える。


「さぁ......?リリィがよっぽど大人だからじゃないですか?」


「そう、ですね......私が子供っぽいだけですよね......」


 駄々をこねる子供。

 欲を抑えられない動物。

 自分を振り返ることの出来ない馬鹿。

 ──言い出せばキリがない程、今のアリスは自分を振り返っている。振り返り過ぎたからかもしれないが、彼女は今相当病み状態だ。


「いつもなら噛み付いてくるのに、こういうところで塩らしくなるの、男の子からすれば可愛いと思いますよ」


「男の子じゃなくてレヴィ君一択です。......どうすれば、レヴィ君に謝れますか?」


 モテたいのは、気を引きたいのは、男の子じゃなくてレヴィだ。

 謝りたい、酷いことを言ってしまったことを。詫びたい、いらないなんて言ってしまったことを。抱き着きたい、愛してるっていいながら。

 結局、愛の表明をしているのはレヴィだけ。アリスは一度も愛してるなんて言ったことがない。今度こそ、それを言わなければ。


「それよりもまず、レヴィ様を取り戻す必要があるんじゃないですか?」


「......そうですね。それじゃあ、どうやって助け出せばいいですか?」


 いつもより聡明なリリィの言葉に、為す術もないアリスは、彼女の意見を取り込む。もう、リリィはアリスの師となりつつある。


「簡単じゃないですか。今から向かえばいいんです。今から竜車を用意しますので」


 そんな風に淡々と、部屋の隅に置いてあった剣やらなんちゃらを扉の前に移動させるリリィ。対してアリスはまだちょこんと座っているだけ。

 リリィが行動を起こしたことに疑問を抱き、アリスは質問する。


「......私が寝てたらどうするつもりだったんですか?」


「一人で行くつもりでした」


 なんと馬鹿で無謀で無鉄砲な作戦だろうか。レレとロロの青い光でアリス達の言い合いや、フレイの物言いから察せば、彼こそ一筋縄ではいかない相手だと踏めるはず。

 そんなことすら出来なかったリリィは、アリスやリイラと同じく「察せない人間」なのか。


「それは......無謀ですね。貴女まともに戦えないでしょう?」


「魔法の一、二発は撃てますよ」


「一、二発で相手が倒せると思ってるんですか......偏差値いくつですか......」


 まともに魔法が撃てるだけ、レヴィよりは生存率は高まるだろうが、それでもフレイに殺られる可能性は九割と多い。隙を見て逃げ出すことが出来るか、フレイがリリィを見逃すかでしか、彼女の命は助からないだろう。


「よ、四十......」


「ひっく!」


 リリィのまさかの偏差値に驚きながらも、アリスは立ち上がり、彼女の仕事を手伝う。

 思ったよりも剣などは軽々と動かせ、その他の荷物達も素早く移動させることが出来た。


「い、いいから竜車用意しますんで!」


「青竜の方がいいでしょう?」


「じゃあ青竜で」


 思わぬ場面でリリィの馬鹿さが表れたところで、アリスは屋敷を出る。

 青竜に乗り込み、彼に荷物を引かせる轡を繋ぎ、リリィと合図を合わせて出発。青竜は思っていた以上に速く、あの洞窟に着くまでにそう時間はかからないであろう。


「レヴィ君......」


 好きだと偽っていた彼の名を呼び、アリスは風に髪を靡かせた。

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