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変化する心

「ここがエルフの森か?」

「うん。そうだよ」

「シャルは来たことあるんだよな?」

「うん。勿論」

「それにしても凄い所だな」


 そこには、巨大な木が(つら)なる森があった。一つ一つの木はまるで生きているかのように光り、風に(なび)いている。しかし、所々魔人に破壊され、原型を留めていなかった。


「これは酷いな......」

「えぇ、可哀想に......」

「この木達が元に戻ることは可能なのか?」

「はい、けれどそれには、多くの人の力が必要です。なので、この件を収めない限り難しいかと」

「そうか、なら早く解決しないとな」


 かくして俺達は、エルフの森にある”エルファナ”に向かった。エルファナはエルフ達が魔人から身を隠すのに丁度よい場所らしい。だが魔人達に見つかるのも時間の問題だ。それにしても結構歩いたよな?なんかラミエルさんの顔が険しいのだけど......これ迷ってるよね?


「あのーラミエルさんまだですか?」

「え!? もうしゅぐですよ」


 あ、図星みたいだな。まぁこんな広い森なら仕方ないかもしれないけど、こんな大事な時なんだから、しっかりして下さいよ。


「みんな! 止まって! 静かに。ほらあそこに魔人が三人いるでしょ」

「えぇ、でも何をしているの?」

「エルファナを探しているのでしょう」

「お母さん。私達に任せて」

「駄目よ、いくらソラ君が強くても四人で魔人族三人は無理があるわ」


 なんだ?この胸騒ぎは......戦いたい。今すぐにあいつらを殺りたい。奴らは、シャルの知り合いを殺したかもしれない。いやその前にシャルの故郷を壊してるんだ。殺さないわけにはいかない。


「俺が殺ります」

「ソラ? 何を言っているの?」

「そうですよ。危険すぎます」

「あ、ちょっと待ってよ! ソラ!」


 絶対に生かしてはいけない!俺がこの手で殺らなければならない!まだこっちには気づいていないか。なら、確実に一匹は殺せる!


「”ダークキルヘブン”」

「な、なんだ!?」

「ぐあぁぁぁぁぁ」


 クッ、魔法を操作するのは難しいな。やっぱり一体しか殺れなかったか。まぁどうあろうと全員殺してやるよ。


「き、貴様何者だ!?」

「完全に消されているぞ!」

「ふっ何者かは知らないが、お前はもう魔法を使えないな。バカめ、蜂の巣にしてやる」


 上級魔法が使えるのか。まぁ当たり前だな。だがラッキーだな。俺は上級魔法が使えてもダークキルヘブンしか使えないし、あれは少し扱いづらいからな。


『燃え尽きろ! ”ファイアフェニックス”』

雷帝(らいてい)鉄槌(てっつい)よ! ”サンダーボルト”』


 巨大な炎の鳥を召喚する魔法か。それとこっちは、ボルトの強化版か。どちらも使いやすそうだな。


 真っ赤な炎の鳥は甲高(かんだか)い声を上げ、激しい稲妻(いなずま)は凄まじい轟音(ごうおん)と衝撃を持ってソラを襲った。だがそんなものは勿論ソラには効かない。いやそれどころかMPを切らしたソラを助けたであろう。


「ふぅー殺ったか」

「あぁ、だがこっちも一人殺られたがな」

「まぁいいさ。アレくらいも対処出来ないとは全く使えないわ」

「そんじゃ作業を進めよ......おい、生きているぞ!」

「なんだと!? き、貴様何故生きている!」

「答える義理は無いな」


 こいつらはどう殺してやろうか。あ、このダガーを試してみるか。残りのMPは1000位か、全て注げば相当な強度になろだろうな。


「さぁ、早く来いよ」

「クッ、舐めやがって。こいつには何故か魔法が効かない。物理攻撃で力の差を見せるぞ!」

「あぁ、たかが人間だ。俺達の相手じゃない」


 右から一人、その後に続いて左に一人か。それと後ろの奴、魔法を使うのがバレバレなんだよ。恐らく奴らは前にいる奴が俺の所に来る直前に後ろから魔法を放ち、その隙を狙って攻撃だな。それじゃ、ぶった斬ってやりますか。


 予想通りだな。だがいちいち吸収している時間は無いな。それじゃあここで、強化版の見せどころか。左手で無効化し、前の奴を斬る!


「......ッ、魔法が消えただと!? や、止めろ!頼む助けてくれ!」

「貴様らは今まで人の命乞いに耳を貸したか?答えは否だ。だから俺はお前を殺す」

「ギャーーーーーー」

「綺麗に斬れたな」


 マジカルダガーを一振りで魔人を半分に出来るとはな。元々のステータスが高いお陰でもあるがな。残りは一人だけか。すぐに終わらせてやる。


「......ッ、何をするんだミラ」

「それはこっちのセリフだわ! なんで一人で行くのよ! 」

「...........ご、ごめん」

「まぁいいわ、次は気をつけなさいよ」

「ソラは大丈夫なの?」

「あ、あぁ、平気だよ。シャルも心配掛けたな」

「ううん、ソラが無事ならいいよ」

「貴様ら、俺の事を忘れているだろ! すぐに死ねると思うなよ。苦痛を与えて殺してやる」


 だからこの世界の魔人さん達はみんなベタなんだよ。それにしても、さっきのは何だったんだ?魔人達を殺すことしか考えることが出来なかった。......恐らく魔人の血と関係があるのだろう。


「それじゃあ二人とも、パターンAで行くぞ!」

「えぇ、分かったわ」

「うん!」


 それぞれ位置につき、戦闘の準備をした。


『雷帝の鉄槌よ! ”サンダーボルト”』

「こんなもん効くか!」

「な、何故だ!?」


 ちょっと試したい事があるんだよな。それは俺の超再生だ。普通より再生するのは分かるけど、どれくらいか気になるじゃん?だから一発受けてみよう!あ、魔法を受けるのは怖いから、物理攻撃ね。


「俺に魔法は効かない。そしてお前が俺の範囲内に入れば半分になる。それだと理不尽だよな?だから俺は一分間動かない。好きに物理で攻撃しろ。物理でな!」

「ば、バカめ! 俺が最強の筋力を持っているのか知らないか!?」


 いや、知ってるわけないだろ(笑) チャンスを与えてるんだから黙って来いよな。一応物理とには二回言ったからそこは安心だろう。


「ほらよ、ダガーはここに置く。だから来いよ」

「ふん、死んでも泣くなよ!」


 亡者がどうやって泣くんだよ(笑) それにしてもこの魔人。ギャグセン高いな。


「ちょっとソラ、何をやっているのよ!」

「少し耳を貸せ。ごにょごにょ」

「分かったわ。けどあまり無茶はしないように」

「まぁ、なんかあっても後ろにシャルが居るから安心だよ」


 お、やっと来たか。流石は魔人って所か。すげぇ筋力してんな。けどこれで最強って(笑)いかんいかん、戦闘中に、しかもやられているんだしな。相手に失礼過ぎるよな。けどハーフの俺の防御力の方が上みたいだな。......これならミラの方が絶対良いよな。


「はぁはぁ、どうやら効いているようだな。血だらけじゃねーか」

「えーとこの血、貴方のですよ?」

「はぁ? って本当だぁーーっ!」


 おいおいおい、ちょっとこれは我慢出来ないかも。自分で攻撃して怪我して、あのセリフだよ。それと気づいた時の顔ときたら......


「ギャーはっはっはっ。ヤバイ、お腹が痛い」


 は!もしかしてこの魔人の狙いは俺を笑わして、その隙に攻撃しようとしてたのか。さ、流石に気づかなかったなー(笑)


「クッ、我を愚弄(ぐろう)するなど万死(ばんし)に値する! お前の死は確実なものになったぞ!」

「え、まじ!? 俺、死んじゃうの?」

「─封印(ふういん)を解きし時来たれり。我の命を天に召す。全ての存在を抹消したれり」

「な、なんだ!? 光だしたぞ!」

「そ、ソラ! あれは自爆魔法よ!」

「なに!? 自爆だと!?」


 自爆といっても、魔法は魔法だ。けど吸収は厳しいだろうな。自分の命を削って放つ魔法なんて、相当なMPを消費するだろう。


「シャル! ミラ! ラミエルさん! 全員俺の後ろに来てください!」

「うん。分かった!」

「えぇ、承知したわ」

「は、はい!」


 そして、魔法は解き放たれた。辺りは真っ白な世界になり、静かな時が流れた。その刹那、大爆発が起こった。


「い、生きているのか?」

「えぇ、そうみたいね」

「......けど、森が」


 魔人が放った自爆魔法は強力且つ、広範囲の魔法だった。そのおかげで、辺りのエルフの森は焼け焦げていた。俺より後ろはなんの被害もないか......けどこれは酷すぎる.....クソ!全部俺のせいだ!


「ごめん。俺が早くあの魔人を仕留めていればこんな事にはならなかったのに」

「いいえ、ソラ君のせいではありません。そもそもソラ君が居なければ私達は魔人にやられていたでしょう。謝るのは私の方です。なんの力にもなれず、ただ唖然と見ている事しか出来ませんでした。ごめんなさい。そして本当にありがとうごさいました」


 そして俺達はエルファナを目指して......5時間歩いた。


「もう、疲れたよーーーー!」


 俺の叫び声が森に響き、いや森と一人の少女にも響いた。


「し、シノアスちゃん!?」

「ラミエルさん......来ちゃったなの!」

次回投稿日は27日の16時とさせていただきます。


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