エルフの森へ
「キャーーーーーーー」
これ、俺の叫び声ね。こうなった経緯を教えよう。
―――俺達はチームルームに帰り、今までの疲れをとるため風呂に向かった。そして体を洗い、湯船に浸かった。ここまではなんの問題はなかったのだが......
時は現在に戻る。
「ど、ど、どちら様ですか!?」
「初めまして、ラミエル=ルシアーネスでーす」
な、なんで俺達の家の風呂に美人なお姉さんが全裸で居るんだ!?そしてなんてわがままボディなんだ!
ちょっと待てよこのお姉さん、ルシアーネスって言ってなかったか?よく見れば顔立ちがシャルそっくりじゃないか。それより早くこの場を離れないと、取り返しのつかない事になりそうだ!
「し、失礼します!」
俺は慌てて風呂を後にしようとした。のだが......
「うわぁ!」
「きゃっ!」
案の定、俺は風呂場で思いっきり滑り、左手はラミエルさんの胸に、右手はラミエルさんを床ドンする形になってしまった。そして......風呂のドアが開いた。
「どうしたの!? ソラ......」
「...........」
「あらら、これはピンチですねー」
「ち、違うんだ! これは不可抗力で! ミ、ミラ? どうして超身体強化をしているんギャーーーーー」
俺は超身体強化をしたミラに思いきり殴られた。普通なら即死レベルだが、俺は魔人とのハーフだから痛い程度で済んだ。......嘘です死にそうです。
「どうしてお母さんがお風呂に居るの!?」
「久しぶりに愛しき娘に会いに行こうと思って、来ちゃいましたー。それでね、ちょっと疲れてお風呂を借りようとしたら、襲われちゃった」
「違いますって、不可抗力ですから......ゲホッ」
「早く着替えなさいよ!いつまで裸でいるのよ」
「おまえらが入ってきたんだろーが!」
なんて理不尽なんだ。俺は何もしていないのに。いや、何もしてないわけではないんだけどさ、不可抗力じゃん?......本当に、本当だからね。
俺達はラミエルさんと話をするために、リビングへ向かった。そういえば、この家の事をあまり説明していなかったな。忘れてたわけではないんだよ。実はこの家、シンプル過ぎて何にもないんだよ。それでも最低限の家具はあるけどね。テーブルとか、キッチンとか、お風呂にトイレ。けどね、全くと言っていいほどインテリアがなく、殺風景なんだよ。だからあまり触れないようにしていたんだ。
「ミラちゃんお久しぶりね。元気してる?」
「はい。お蔭さまで」
「それでソラ君はどっちの男なの?」
「ちょっとお母さん、何を言ってるの!」
「うふふ、ごめんなさい」
「あのーすみませんミラさん。この鎖外してくれませんか?」
「駄目よ、またラミエルさんを襲うから」
ミラの奴め、何本の鎖で俺を拘束してたんだよ。てか、どこからこんな鎖を持ってきたんだ?これからはミラの気に触る事はしない方が身の為だな。
「だから不可抗力なんだってー。ラミエルさんも言ってくださいよー」
「ソラ君のスキンシップ、激しかったなー。うふふ、冗談よ。ミラちゃん外してくれない?」
「ラミエルさんがそう言うなら」
ここで、ラミエルさんの容態を詳しく説明しよう。髪は腰まであり、シャルとは異なる金髪だ。青くサファイアのように輝く瞳はシャルと同じと言って良いだろう。そしてなによりこのわがままボディ!想像しやすく例えるなら、ボン×2、キュ、ボン位はあるだろう。あと忘れてはいけない、エルフの特徴の長い耳!
「本当は何しに来たの?」
「流石私の娘、気づいちゃいましたか」
「お母さんが嘘を言っている時くらい分かるよ」
「それじゃあ説明しますね。実は......」
ラミエルさん曰く、エルフ族が住んでいるエルフの森が魔人族に襲われていて、魔人達はエルフ族のシノアスという少女を探しているらしい。シノアスは生まれながら唯一の特殊能力を持っている。その特殊能力は”定められし者”。
”定められし者”とは、シノアスが定めた者とシノアス自身を一定時間動きを封じるという特殊能力だ。もはやチートレベルでは無い。相手がいくら強くても一人だった場合、シノアス以外が仕留める事が可能だからだ。
魔人族はシノアスの力を恐れている為、処分しようと必死らしい。他のエルフを巻き添えにし、エルフの森と共にシノアスを消そうとしている。だからラミエルさんが、ギルドに助けを求めに来たらしい。その次いでにシャルに会いに来たのだが、早くしないと駄目だろ......
「大体の事情は分かりました。それで何人の人が助けてくれるのですか?」
「先程ギルドに伺ったのですが、助けには誰も来てくれなさそうでした......」
「そうですか......それなら俺が、いや俺達が助けに行きます!」
「いえいえ、そんな無理をさせることは出来ません」
「平気ですよ、ラミエルさん。ソラは見た目によらず化物のように強いから」
「おいミラ、化物は無いだろ。結構傷つくわ!」
「それじゃあ、ラミエルさんにステカを見せて上げなさいよ」
俺はラミエルさんにステカを渡した。そしてラミエルさんの第一声はそれは大変失礼であった。
「......化物」
「ラミエルさんまで、酷いですよ」
「ごめんなさい。びっくりしてしまいまして。ソラ君は魔人とのハーフ、なんですね......」
ラミエルさんの俺に向ける目が一気に鋭くなった気がした。それは仕方ないよな。自分の里が破壊され、仲間が殺されているんだから......
「ソラの事情を知らないで、勝手に悪いように思わないで!」
俺はシャルが怒った所を初めて見た。俺なんかの為にありがとな、シャル。シャルは俺が魔人とのハーフになった経緯をラミエルさんに伝えた。
「本当にすみませんでした。何も知らないでソラ君の事を......」
「俺は平気ですから。それで、少しは頼ってくれる気になりましたか?」
「ソラ君にあんな酷い目を向けた私を助けてくれるのですか?」
「勿論ですよ。助けない理由がありませんから」
「......ソラ君!」
「ちょ、ラミエルさん止めて下さい。当たってますからー」
ラミエルさんは俺に思い切り抱きついて来た。ラミエルさんの胸の柔らかさに困惑していると、横から物凄い殺気を感じた。あ、また殺られる。......不可抗力なのに。俺はミラにさっきよりも強力な拳をくらい、鎖に結ばれた。
「それにしても、どうしてラミエルさんがスタラトに来たんだ?」
「私は”次元石”を持っているから、一瞬でここに移動出来るの」
「”次元石”ってなんだ?」
次元石とは、滅多に手に入らないアイテムらしく、一度行ったことのある場所に転送してくれる。それをラミエルさんが偶然拾ったらしい。
「すみませんが、エルフの森に行く前に準備をしたいことがあるのてすが良いですか?」
「勿論です。私はここで待っていますので」
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俺はエルフの森に行く為の準備をすべく、武器屋の前に居た。
「ソラはどんな武器を買うの?」
「うーんと、まだ決まってないけど簡単に装備出来る物が良いかな」
「それなら、ダガーなんてどうかしら?」
「そうだなー、店の中を見てから決めるよ」
うわースゲーな。色んな武器があるよ。大剣、短剣、弓、ダガー、オノ、カマ、杖などがあるがどれにするか迷うな。確かにミラの言う通り、ダガーが一番簡単に装備出来るかな。おっ、これなんか良いじゃん。えーと、マジカルダガーか。
マジカルダガ-
自身のMPを注ぐ事によって、ダガーの攻撃力が変化する。(最大で時空を斬ることが可能)
時空を斬ることが可能って、めっちゃカッコイイな!良し、これに決めた!
「すみませーん。これ下さい」
「えーと坊や、このダガーは人間との相性はすこぶる悪いが良いのかい?」
「平気です!」
なんだって、俺は人間じゃないからな。もうこうなったら割り切って前を向くしかないんだ。だからこの力は存分に使わせてもらう。
「はいよ、じゃあ30万コル頂くよ」
「ちょっと待ってソラ、もっと安いのにしなさい!」
「何でだよ! 別に20万コルは残るんだから良いだろ!」
「そうだよミラ。ソラの武器にするんだから良いでしょ? パーティーの戦力が上がることは大事だよ」
「まぁ、そうね。今回は大目に見るわ」
シャルの援護を持って何とかミラの説得は出来た。それにしても、カッコイイなこれ!ベースは黒で出来ていて、波線の模様の所は赤になっているのか。試しに少しMPを注いでみるか。
「おぉ、凄いな!」
「うん。とっても綺麗だね」
「えぇ、綺麗だわ」
俺がMPを注いだら赤色の波線が光り輝き、ダガーの強度が上がった。でもどれだけのMPを注げば時空を斬れるようになるんだろう。俺は武器屋のおじさんにマジカルダガーについて詳しく聞いた。
マジカルダガーはMP3000を注ぎ込むと一度だけ時空を斬ることが出来て、その中に敵を吸い込み無数の刃で、切り裂く事が可能らしい。一度時空間に入ったら抜け出す事は不可能だという。だからこれは最終奥義として、とっておくのが無難らしい。
「それじゃあ武器も買えたことだし、チームルームに帰ってエルフの森に行きますか」
「うん」
「えぇ、早く行きましょう」
俺達はエルフの森へ行く為、チームルームで待つラミエルさんの元へ向かった。
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「それでは主発しますよ。みんな私に掴まって」
「”エルフの森へ”」
俺達はラミエルさんの合図で、エルフの森へと誘われた。