プロローグ
「ねぇ、ねぇー君 大丈夫?」
あれ?おかしいな天使の声が聞こえるのだが......
「えぃっ!」
「うわぁぁぁっ!」
一瞬電気が走ったような痛みがし、暗い意識から目
を覚ます。最初に目に入ったのが、腰まである透き通った銀髪で、青くサファイアのように輝く大きな瞳で身長は俺より約10cm位低い。俺が170cm位だからこの子は160cm位だろう。そして、それは見事なプロモーションな美少女がそこにいた。
「え~と 大丈夫ですか?」
「いえ体に電気が走っているようで全然大丈夫じ
ゃないです」
「ふふふ、ごめんなさい。あまりにも起きないよ
うでしたから。貴方のお名前は?」
「お、俺は神崎 天空」
「シノサキ ソラ? 変わったお名前ね」
少女はクスリと口に手を当てて微笑んだ。あれ?おかしいな。いつもなら起きた時、最初に見る顔はお母さんのはずなのに。お母さんがいない。知らない場所。超絶美少女。この三大要素が揃っている場合は基本夢である。
「君は?」
「私はシャエル=ルシアーネス。シャルでいいよ」
「あのー、ここはシャルの家ですか?」
日本人の名前では無いよな。というかラノベを代表する名前だ。今までシャルと名のつくヒロインは山ほど見てきた。定番ちゃあ定番だが、シャルって呼べるのは夢で”夢”を見れるな。
「ここは私のチームルームだよ」
「チームルーム?」
「簡単に言えば私の家かな」
「どうして俺はここに?」
どうやら俺は超絶美少女の家にいるらしい。......スゥーー。ほのかに香る甘く軟らかい香りが鼻腔をくすぐった。これが女の子の匂い。しかし、匂いまでする夢とは。こんなにも肌一体の夢を見ることは相当ないだろう。だから楽しもう。全力で!
―――むにゅむにゅ。
「はぁぁんっ!」
な、なんということだ!胸の柔らかさが二の腕と同じくらい?全然違うじゃないか!今まで自分の二の腕を触っていたのが恥ずかしくなってきた。せっかくだし、もうちょっと。
―――むにゅむにゅむにゅむにゅ。
「ら、らめえぇぇっ! 恥ずかしぃよぉー」
頬を横切る冷や汗。胸を触ってかいた汗ではなく、何か違うものでかいた汗だった。......希望を持つとそれを裏切られた時のショックが大きい。だから俺はもう”夢”はみない。だから自分の選択肢からあるものを除外していた。しかし、その除外を解く必要が出てきたかもしれない。少し前の記憶を探る。確かさっきまで......友達とカラオケをして、その帰り道の路地裏の方に青く光輝くなにかがあって、それを見にいって......俺は飛びつくようにシャルに訪ねた。
「こ、こ、ここはどこの町だ!?」
「ひぃぃっ!」
シャルはビックリしたのか、目を大きく開いて少し震ている。だが今はそんなことを気にしている場合ではない。
「こ、ここは始まりの町 ” スタラト ”」
「スタラト?」
もしかして本当に?あっ、そうだ。俺は下に俯きながらプルプル震えながら言った。
「さっきの電気みたいのはなに?」
「あれは初級魔法コボルトだけど......知らないの?」
俺は確信した。そして......
「きたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!」
ひぃっとシャルが怯えているがお構い無しだ。そうこれは異世界召喚である。