生き残るために
ふぅ、思いっきりぶちまけたら結構すっきりしたよ。口の中に残る不快感はどうしようもないけど、まあ今は仕方ないか。とりあえず周りの状況を確認しなきゃ。
……うん、ちょっと押され気味かな?時間と共に味方の兵が増えて有利にはなってくだろうから、多分今が一番大変な時間帯なのかなって思う。兄貴たちも筋肉を活かして頑張ってるけど、少々疲れが見え始めてるね。こっちが有利になるまで持ちこたえなきゃいけないし……兄貴たちを上手く使ってやろ。
「おーい、兄貴。ちょっと時間とれる?」
「ん、かいか。ちょっと待て、目の前の数人を追い払ったら多少は大丈夫だぞ」
そう返した兄貴は、力任せに武器を振り回して敵を遠ざけるとその後を近くの味方に任せて話を聞きに来てくれた。いや、いろいろ突っ込みたいところはあるけど今はいいや。
「それで、用とはなんだ」
「いや、兄貴が行軍中に仲良くなった(筋肉自慢の)仲間たちがいるでしょ?一つ思いついたんだけどあの人たちと連携してもっと楽に戦えないかと思ってさ」
「おいおい、そんなことをしなくてもさっきの様に暴れ回れば良いだろうがよ」
「……そっか、分かった。この方法なら城壁の近くで戦うことになるから上手くいけば廉頗様の目に留まるかもしれなかったんだけど、兄貴たちが嫌だって言うなら別に大丈……『まあ待て。誰も嫌だなんて言ってないだろう?詳しく話を聞かせてみなさい、愛しの弟よ』……はぁ。分かったよ」
廉頗様を出汁にしたのは申し訳ないけど、うまくそれに乗ってくれてよかった。みなさんちょろいね。それで俺がやりたかったのは、城壁を壁にしてそこから半円形になるように兄貴とその筋肉仲間を並べる。そうやって皆が正面の兵に集中できるようにして戦おうってものだ。時間がこっちの味方である以上、俺たちが最優先すべきことは時間を稼ぎ続けることだしね。
こんな簡単な方法なんて誰かが先にやってるだろうと思ったけど、今回は誰もしてなかったから俺が仕方なくやってる。……脳筋の人が多すぎるんじゃない?まあこの形を作った俺は半円の中に居て敵が来るのを見つけてその都度指示を出してれば良いからかなり楽になった。まだ人を殺したという感触も消えてないし、今日はもう自分の手でっていうのは勘弁したい。もちろん自分の命が危なくならない限りはだけども。
結局その後は俺が手を出す必要はなかった。一つの方向に集中させてた脳筋たちが思ってた以上にしっかり働いたおかげです。そのまま時間と共にこっちが有利に展開し始めると、最後は一方的だった。城門を開けたことで勝敗は決定的となり、外に残ってた軍も流れ込んできて昔陽を陥落させることが達成されたよ。
個人的にもしっかり生き残れて良かった良かった。兄貴たちは城壁から外に向かって筋肉を見せびらかしながら自らの手柄を誇示してる。……廉頗様に自分の手柄を伝えたいんだろうけど、俺からしたら気持ち悪い。本気で止めてくれないかな?
これで今回の戦いも終わるはずだしこの後はゆっくりできるかな~。そういや兄貴たちを使って半円の形を作ってた時、一瞬味方の陣から寒気を感じたんだけど……厄介ごとじゃないよね?