徴兵
投稿したばかりなのに感想までいただきました。
ありがとうございます。
相変わらず短いですがどうぞー
その年も例年どうりせっせと働いたおかげで、ようやく農作業が少なくなる時期が近付いてきたよ。まあその分寒さがきついんだけどね。それでも毎年この時期になるのを楽しみにして待ってたんだよね。
だから俺は農閑期になると農業とは別にある、一農民にはどうすることもできない事態が自分の身に降りかかってくるなんてその時は考えてもいなかったな。
「俺たちの村に徴兵の命令が来たって、どういうことだよ!これまでにも戦争はあったけどこの村は徴兵されたことはなかったのに……」
「それは違うで、かい。この周辺の村は十年以上前の戦争で多くの戦死者が出たんよ。だから領主様がしばらくはこの辺の村からは徴兵しなかったんだとよ。けんども十年も過ぎてそろそろ人が増えたからってことでこの村にも徴兵の命令が来たんだよ」
「そうだったんだ……。それで、この家からも兵を出さなきゃいけないの?」
「それは当然だろうが。ちゃーんと家からも兵を出すように言われとるよ」
いや、知らなかったわ。そんな事情があったんだね~。というわけで家族から誰かが兵として戦場へと向かわないといけないらしいよ。自分なりに誰になるか考えてみると、俺の可能性が結構あるんだよね。
まず、この家には現在九人の家族がいるんだ。父さん母さんに兄貴が二人、妹と弟が一人ずついて長男の嫁さんと娘さんが一人。そして最後の一人が俺っていうわけだ。ちなみに俺はこの家の五男坊らしい。兄貴が二人少ないのは二男が十年前の戦争と時に兵として戦場に出て亡くなったからで、三男は傭兵になろうとどっかに出ていったらしい。まあいつまでもいた所で厄介者にしかならないんだろうよ。
話を戻して、このうち兵になるのは男だから確率は五分の一なんだがまず弟はまだ十歳とかだから年齢的に無理。立場的に長男と父さんもまず難しいだろうな。つまりは俺か四男の兄さんのどっちかってことなんだろうが……正直戦争とか怖すぎるんでできれば愛しのお兄様に行ってほしいなーとお祈りしてます。
「おーい、かい!遅れずにちゃんとついてこいよー」
「分かってるよ、兄貴。ちゃんとすぐ追いつくから心配しないで」
お祈りの結果は無残でしたよ。どっちか一人じゃなくで二人とも兵として向かうことになっちゃいました(涙)。というわけで近隣の村の人たちと集まって集合場所へと向かってるわけです。
いや、確かに農閑期だから労働力はあまりいらないけどさ。飯食らいを減らせるとは言え二人とも行かせるのはちょっとひどすぎないかと思うわけでしてね。とか考えてると前方の集団から離されちゃうから駆け足で追いつくってことを繰り返してたらようやく集合場所についたみたいだな。
というか何度も駆け足で追いついてたから余計に疲れた気がするわ。今度からは遅れないようにしようっと。