状況整理
他の作品の息抜きとして始めました。
そのため分量も少なく、気楽な感じで進めたいと思っています。
時代考証などにもあまり時間を割いていませんが、そういうものだと割り切ってもらえたらありがたいです。
俺は今日もせっせと田んぼを耕している。朝早く起きたら少ない朝飯を食べて田んぼに行き、一日中田んぼの土を掘り返すだけだ。暗くなってくると家に帰り、少ない晩飯を食べたらすることも無いので寝るしかない。いや、早寝早起きは健康に良いけどね、だとしても限度があると思うんだ!
まず一日二食とかきついですよ。それも満足に食べることもできないというね。まあそんなでもこれまでやって来れてるわけだから人間ってすごいなーとは思うけど。
そんなこんなでこれまで十二年間も暮らしてきたわけなんですがね、いやー最初はびっくりだったね。目が覚めたらぼろぼろの家の中でぼろぼろの布きれ一枚を掛けられた状態で寝ていたんだけど、外に出てみたらそりゃあ驚いた。まるで時代劇でも見てるかのようなのどかな風景が視界いっぱいに広がってるんですからね。
それでそれまでの記憶を頑張って思い出そうとしたけど、知識しか思い出すことができなかったんだよ。平成の日本で生きてたとかどんな発明があったとかどういう小説やらがあるとかはちゃんと思い出せるんだけど、自分の名前やら家族やらについてはさっぱりでした。今ではもう自分のことを思い出すのは諦めちゃってますよ(遠い目)。
ちなみに夕方になったら家族と思われる人が帰ってきて、俺が起きて動いてるのを見て心配してた。どうやらこの体の前の(?)持ち主は病気で寝てたらしい。おそらくはこの体の持ち主に乗り移ったのと同時に病気が治ったんじゃないかと個人的には考えてるけどね。最初のうちは心配されてたけど、元気になったって分かると次の日からは農業に駆り出されましたけどね。病気明けの人を働かすとかどんな環境だよって思わずにはいられないね。ちなみに言葉は普通に通じた。日本語じゃないことは分かったんだけど自分でも違和感なく話せるし、会話に支障はなかったんだよね。この体の前の持ち主の知識?が流れ込んだみたいだとしか言いようがないことだけれども。
そこから先が大変でした。何しろ今までやったことも無いことをやれって言われるんだから、どうして良いか分からないでしょ。この体の持ち主は元々体が弱かったのか農業に関する知識だけはあんまりなかったしね。何とか見よう見まねでやったは良いものの、やり方が悪いだのこうじゃないだの散々文句を言われる始末。本当にどうしようも無いけど何の知識も無いからここで働いてないと生きていけないんですよ。それでこれまでずっと我慢してきたというわけだ。
唯一の癒しと言えば、俺の意識が乗り移ってから一年半くらいして生まれた妹の存在だ。それはもうかわいいのなんのって、まさに目に入れても痛くないっていうのはこういう子のことかと心の底から納得しました!初めて「にいに」とか呼ばれた時は半日は興奮が収まらなかったんじゃないかと思う。まあその妹も今は農業を手伝ってるんだから俺も文句を言わずに頑張っているっていうのもある。
そんなこんなで変わり映えのしない一日がまた過ぎていった。
……そういえばまだ名前を言ってなかったっけ?今の俺は「かい」と言うらしい。なんか一周回って現代的に感じる名前ってのが第一印象だったね。