胸に残る深い傷跡を抉る名前
エタらない様に頑張ります。
………まあ、更新遅いですが。
裏門から城を出た僕たちだったが、江見ちゃんや他の皆は周りをキョロキョロしている。
「道が広いわね」
「緑が多いな」
「コンビニないか?コンビニ」
「何で信也は、異世界でコンビニ探してるのよ………」
「知らないのか?最近の異世界ものはコンビニも異世界に有るんだぜ?」
「電気とかどうするのよ?」
「さあ?」
「コンビニとは何でしょう?」
そんな会話をしながら、僕らは裏から表通りに歩いて行った。
信也………いくらお前がそういう小説…ラノベ?だったかな?が好きでも、それをこの世界に勝手に当てはめないでくれ。
と言うか、そんな物が有るのなら、戦車や戦闘機もある異世界になるじゃないか………勇者要らないよ。
ああ、そう言えばいつも見てた(良い日旅立ち)っていういつも見てるホノボノ番組見損ねた。
………ショックだ。
OPで、何故か小さなワンコ達が大勢現れて戯れる中、優しい音楽が流れるのが大好きなんだよな。
良いじゃないか、可愛い動物が好きな元魔王が居たって、可愛いは正義だよ。
そんな事を考えていたら、信也が話しかけてきた。
「なあ智樹、今更だけどあの王様つーかこの城の人普通だったよな」
何をして普通と言いたいのだろうか信也は?
「だってさ、お前は俺が漫画やラノベとかよく見てるの知ってるだろう?」
「授業中にもたまに見てるよな。先生の目を盗んで…」
「それの話でいくと、王族や城の兵士達に騙されて使われたり、洗脳されたり黒い所が有るんだよ。裏切られて裏繰り返すとかもあったなあ」
………最近の小説は、黒いんだなあ…
「けどよ、困ったって割にはアッサリと俺等を解放………と言うか自由にさせてくれるし、分かんねーのよな」
信也は、頭の後ろに両腕を組んで、僕の横に並んで歩きながら話しかけてくる。
「…信也は洗脳されて、良いように使われて、死んでしまうのが趣味なのか?」
「馬鹿を言え!どっちかつーと、ラッキースケベとかポロリとかチートが大好きな、一般的な明るい隠れオタクだ」
…いやいや、何処の世界だよそれ………
「知らないのか?中には、美女や美少女に痛い目にあうのがご褒美、とかいうディープな世界もあるんだぜ?」
知りたくなかったよ、そんな世界!
「何でも、痛みを喜びに変えて、違う世界へ………」
「良いから!そんな世界は知りたくないから!!もういいから!」
それでなくても、江見ちゃんに普段からボコボコにされてるのに…あれが快感になるなんて冗談じゃない!
「いやでも、江見にあれだけボコボコにされて、それでも幼馴染みやってるお前には、十分に素質あると思うんだが?」
「…信也?ちょっとそこらの建物の裏に2人で行こうか?」
そう言いながら智樹は、笑顔のまま信也の襟首を掴んだ。
笑顔なのに、怖いのは何故なのだろう………
「…分かった。オーケーOK、もうこの話は止めよう、だから裏にも行かないし、落ち着いてくれ智樹」
そう言って信也は真面目な顔をして、両腕を頭の上に上げる。
全く…言う事にも程があるだろう………いやしかし、最近は江見ちゃんの暴りょ………鉄拳………スキンシップにも慣れてきたし…いやいやいや!そんな事はナイ!あってたまるか!
必死に心の中で否定する智樹であった。
ちなみに、その頃少し先では江見達は
「あ、ここ花屋さんかな?異世界にも有るんだ」
「そりゃ有りますよ」
「あっちには服や靴を売ってるみたいよ」
「あれは雑貨屋ですね。」
「何で分けて売らないわけ?」
「手間が掛かるじゃ無いですか、だから大体一つか二つのお店で売るんですよ」
「何で?」
「大量に作れないからですよ。」
キョトンとしてる江見ちゃんにメイドさんが説明する。
「え?え??何で何で?」
ああ、混乱してる混乱してる。
まあ、仕方は無いよね。
機械で大量生産………はこの世界、見た所まだ機械が無いから、それは無理、同じ理由でミシンも無い。
「江見、こっちに機械やミシンなんて物は無いのよ」
皐月が江見ちゃんに説明してくれた。
「ミシンが何かは知りませんが、大体の物はオーダーメイドか、人のお古ですよ」
…何でいまだに体系がそうなのか、何か納得が未だにいかない。
如何にこの世界でも、文明開化や産業革命が起きてもおかしくないはずである。
一体何故だ?
そう思っていると、同じ様な事を考えたのか皐月が言った。
「何で産業革命が起こってないの?長い時間が有れば、人は住みやすく、自分の生活をしたがるものでしょ?」
「………出来なかったんですよ」
ん?出来なかった(・・・・・・)?
今でも何度も魔族とは敵対していますが、歴史上勝った事が有りません。
は?そんな事は無いだろう?現に元の僕は負けたんだし。
そう言うと、メイドさんは頭を振って言う。
「確かに、貴方は倒されたかも知れません。ですが、魔王は1人では無かったのですよ」
「は?」
「正確に言えば、貴方が倒れた後現れた…と言った方が良いですね」
そんな筈は無い………いや、あの当時の自分は色々まいっていた。
そんな僕に知らせまいと、周りが情報を持ってこなかったかも知れない。
だが、そんな簡単に《魔王》を名乗れる奴等が居たとは………
「その《魔王》を名乗る2人の魔族はその後、人間の大陸の三分の一を支配し、今も尚その範囲を広げています」
…何故だろう?
………何で、《魔王》が2人と聞いて、こんなに心がざわめくんだろう。
「1人は《暴食》にて人を、物を、喰らう者」
ドクン
「1人は《狂気の頭脳》にて、あらゆる物事を自らの興味の為に実験、解体、融合させる者」
そんな筈は無いそんな筈は無い、だけど、そんな自分の思考とは別に、胸の中に何かが這うような、蠢くような、いやな感覚が胸の中を占めていく。
そして言っている。
否定しようとしてもアイツ等だ(・・・・・)ともう1人の自分が、心の中で歯軋りをしながら憤怒しているのを…
苦しくて、悲しくて、気持ち悪くて…胸の辺りを抑えて強く掴む。
「その2人の魔王の名前を………」
「…ガルザン、ドラグル…」
「知っているんですか?」
何か言ってるようだけど、それどころではない。
アイツ等が魔王?ふざけてくれるなよ………魔王はそんな簡単に名乗れる物じゃ無いんだぞ。
知恵と力と統治力、それから最後に儀式を超えなければならない。
人の愛する者を奪い、勝手な事をして。
信也から良く聞く物語の魔王は、比較的簡単になる物語が多いけど、この世界は違う、魔王に成る為に超えなければならない過酷な試練がある。
それを超えないで、勝手に名乗るだって?
頭に来すぎて、今すぐぶち殺したい気分になってくる。
恨み辛み、色々な感情を込めてゆっくりと殺したい………心の中まで真っ黒く塗り潰しそうだ。
落ち着け、ここにはアイツ等は居ない、居ないんだ。
「お、おい智樹大丈夫か?」
「智樹君?」
「何か雰囲気が怖いけど大丈夫?」
「何かあったの?」
殺気でも漏れていたのか、皆が僕の方に集まってきた。
いけない、落ち着け、抑えろ抑えろ………
「…大丈夫、何でも無いよ」
「智樹、何でも無いって雰囲気じゃなかったんだが、メイドさんなんかビビってるし」
よく見ると、メイドさんが涙目で少し離れていた。
他の住人も気配を感じたのか、怯えた目で見ている人も居る。
迷惑を掛けてしまったな、気を付けなくては…
「悪い、本当に何でも無いんだ。悪かったよ」
「…今は何も聞かないわ、だけど、無理しちゃ駄目よ」
「分かった」
これは、僕の問題で有り、僕が解決しなければならないものなのだから。
感想、ご希望、要望、指摘、等々有りましたらお寄せ下さい。




